見出し画像

直近の最注目はNFT音楽市場!日欧CEO対談〜『音楽マーケティングの教科書』(全文公開)

 音楽マーケティングの教科書では、マーケティング視線でWEB3の可能性についても語っています。その中で、フランス発で存在感を示し始めたNFT音楽マーケットPianityのCEOと、リニューアルローンチで注目を集める.muraのCEOの対談を掲載しています。本稿は対談部分の全文公開です。
 本文にもありますが、欧米ではサブスクサービスの成長率が鈍化して、NFT市場の拡大が直近の課題になっています。始まりつつある近未来について考える機会になれば嬉しいです。

NFTと音楽の近未来〜Pianity×.mura:日欧NFT音楽マーケットCEO対談

山口: 日本とフランスでNFT音楽マーケットを行なっている2人の起業家であるケヴィン・プリミセリオさん、伴幸祐さんに話を伺い、音楽マーケティングにおけるNFT活用の現状と可能性を知りたいと思います。これまでの経歴やバック グラウンドについて教えてください。
ケヴィン:エコールサントラルパリで数学の博士号を取り、スクール42でコン ピュータサイエンスを学びました。その後、Hookというベンチャーファンドを 設立し、スタートアップがプロトタイプから資金調達して成長できるよう支援 しました。その経験を生かして、2021年にPianityを共同設立。ブロックチェー ン技術には2016年ごろから興味を持っていました。Pianityの音楽部分は音楽 プロデューサーで共同創設者のシモンのアイデアです。私たちは2021年2月に Pianityのアイデアを一緒に考え出しました。
伴: コンピュータサイエンスを学んだのは同じです。私は福井高専を卒業して福井大学に編入し、15歳から7年間コンピュータサイエンスを学びました。また13歳から音楽活動を始めていて、10年ほどはプロのミュージシャンを目指してバンド活動に打ち込んでいました。2016年からは、東京のスタートアップで ソフトウェアエンジニアをやる傍ら、メディアアート作品の制作や、音楽アー ティストのステージ演出、映像制作なども行なっていました。ブロックチェー ンやNFTとのかかわりで言うと、2018年に音楽アーティストがデジタルアイテムを販売できるWebサービスを起業したのが始まりですね。NFTは当時まだ規格ができたばかりで苦労も多かったですが、早い段階で音楽ファンからの需要を実感できたことは今の事業にとても生かされています。
山口:Pianityも構想から2年なんですね。.muraは2021年11月にStudioENTREの事業として始まりましたが、法人設立は2022年夏でしたね?
伴:はい、2022年夏に法人を設立し、現状の体制になりました。10月に資金 調達を実施し、新曲発表時の数量・期間限定のプレミアム版を販売できるリ ニューアルを終えたところです。.muraはオークションによる一品もののNFTの販売から始まりましたが、新曲発表をイベント化して盛り上げて、より多くのコアファンや音楽コレクターに楽曲のことを知ってもらい、新しい関係を構築する機会を提供する場所として進化しつつあります。Pianityも含め、同じ時期に世界で同時多発的に音楽NFTが盛り上がってきているのは、ストリーミングが主流になったデジタル時代においてNFTを相互補完的に活用するのがトレンドになってきているということだと考えています。それで言うと、Pianityのローンチ時のことも聞きたいです。
ケヴィン:最初は1人のアーティストと始めて、週に1人のアーティストをリリースしていました。毎週火曜日にNFTをリリースし、48時間のオークションが木曜日に終わるというスケジュールでした。
伴: Pianityでのリリースはどのような形が多いですか? 個数限定、他にはない特別バージョンなど幾つか選択肢があるかと思います。
ケヴィン:最初はPianityだけの特別版を販売していましたが、当初から個数限定リリースの構想は持っていました。例えば10個、100個、または1000個と いった個数限定です。限定版を初めてリリースするまでに数週間から数ヶ月か かりましたが、2021年7月には、「A Guide to the Birdsong」というプロジェクトを行なっているレーベルとのコラボレーションで数百の個数限定シリーズを リリースしたので、欧州でもかなり早かったと思います。
伴:今はどのようにしてアーティストを獲得していますか?
ケヴィン:アーティストの依頼から始めるケースが多いです。1日に3〜5人の 新しいアーティストが加わり、1週間に3〜5つの新しいレコードレーベルと契約しています。もちろん、共同設立者などの人脈を通じて、エスタブリッシュされたアーティストとのパートナーシップ契約も行なっています。
伴:Pianityが利用しているブロックチェーン技術の選定基準は?
ケヴィン:私たちはArweaveというプロトコルを使用しています。Arweaveは スマートコントラクトとデータの両方で使用されています。Sound.xyz(アメリ カのNFTサービス)とは異なり、彼らはEthereumでデータ層をArweaveに移行 しましたが、私たちはすべてのデータをArweaveに保存しています。
伴:われわれはPolygonを使っていますが、データ層はまさにArweaveの利用を 検討しているところでした。

ストリーミングサービスの成長率が鈍化

山口:Pianityでの販売曲の平均単価を教えていただけますか?
ケヴィン:私たちは平均ではなく中央値を発表しています。ユーザー購入時に一番多 い中央値は40〜50ユーロ(約5750円〜7200円)です。

山口:売上状況はどうですか?
ケヴィン:設立以来、私たちは約250万〜300万ユーロ(約3.6億円〜4.3億円) を売り上げています。
山口:資料によると1500人以上のアーティストが15000曲以上をリリースし、 35000人以上のユーザーが購入しているそうです。これはサービス開始当初としては大きな成果だと思いますが、Pianityを運営していて、アーティストやユーザーから必要とされている実感はありますか? またその理由はなんだと思いますか?
ケヴィン:欧米ではストリーミングサービスの成長率が鈍化して、新たな収益方法が求められています。また、ユーザーにもデジタルファイルの所有を通じた喜びとアーティスト支援という感覚が広まってきています。
伴:ケヴィンさんが感じる音楽NFT業界の課題はなんですか?
ケヴィン:音楽NFTはこれから音楽ファンとアーティストにとって一般的な存 在になっていくと思います。そのためにユーザー体験、アーティスト貢献の両面でサービスを磨いていくつもりです。
伴:Pianityのアーティスト、ユーザーは欧米が中心のようですが、アジア市場、 特に日本市場や日本文化に興味はありますか?
ケヴィン:とても興味があります。実は6年ほど前に東京に行ったことがあるん です。東大に数学の研究者として招待されたからです。また行きたいですね。
伴:ぜひいらしてください。Pianityと.muraで連携して、音楽NFTをきっかけに アーティストの海外進出や交流を促進できるようになるとうれしいです。
山口:タイムリーな情報と貴重な視点をありがとうございました。NFTは音楽市場 を成長させる次のドライブになりそうですね。今後も情報共有させてください。

Kevin Primicerio(ケヴィン・プリミセリオ)

Ecole Centrale Parisで応用数学の博士号を、School 42でコン ピュータサイエンスの学位を取得。ベンチャーキャピタルファ ンドHOOKでの経験を生かして2021年にPianityを創業。Web3、 NFT、音楽の世界において影響力のある数学者にして起業家。


伴幸祐(ばん・こうすけ)

福井高専、福井大学でコンピュータサイエンスを専攻。バンド活 動経験10年、ソフトウェアエンジニア歴10年。音楽経験と技術力・ 発想力を武器にメディアアートやハッカソンなどコンペティショ ンで受賞多数。音楽×NFTの事業化は2018年から取り組みを開始 し、2022年ドットミューラ株式会社を共同創業、同社代表取締役。

.muraのサイト


モチベーションあがります(^_-)