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足元のぬくもり

実家に帰ると、私の顔を見て尻尾をふよふよと揺らしながら「ニャー!」と力強く鳴く君がいる。

新卒で入った職場で心身ともにボロボロになってしまい、毎日涙が止まらなくなってしまったとき、母が確かな覚悟を持って君を連れて帰ってきた。

家に来たばかりのころの君は、私の後ろをころころと着いてきて、猫じゃらしを少し揺らすだけで嬉々として飛びついた。
毎朝君が大きな声で起こしてくるのがかわいくて、私は朝がくるのが少し楽しみになった。
家に帰ると玄関まで駆けてくる君がいるから、一日いちにちを乗り切ることができた。

しばらくして転職をして、後ろ髪をひかれる思いで実家を出た。

なかなか会えなくなってしまったけれど、実家に帰るたびに君は「今までどこに行ってた!」と言わんばかりに鳴き声を上げる。
それが嬉しくて仕方ない。

私が布団で寝ていると、いそいそと私の足の間にきて君は寝床を作り始める。
動かないように細心の注意を払うけど、君の一定のリズムで繰り返される呼吸音が私の眠気を誘う。

足元の確かなぬくもりを感じながら、どうか一日でも長く生きてくれますようにと願う。

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