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性的なことについて

まだあなたにお話しするのは早いのかな、と思いつつも。
まあ、あなたがこれをいつ読んでいるかわからないから、早いもなにもないんだけど。

お腹が減ってなにかを食べたくなるように、夜に眠たくなるように、人の欲求には性的なものがある。
これは他の欲求とは違って、生まれてすぐにはないものだ。と、断言していいのかはわからないけど、少なくとも成長するまではあからさまに表にそれが出てくることはほとんどない。

性的欲求について、どう説明すればいいのかな。誰かとくっつきたい、というような気持ちかな。
いや、ちょっと違うな。もっと内奥に蠢いたものがある気がする。
性的な欲求は単純に人とくっつきたいという気持ちとはちょっとだけ違って、身体的接触などによって自分のなかに蠢いているなにかを鎮めるようなものじゃないかな。

あなたが生まれてきたのは生殖行為があったから。もちろん、ぼくが生まれてきたのも。
ただ最近は直接的な生殖行為がなくても子どもがつくれるようになってきている(ぼくは子どもを「つくる」という言い方が好きではないんだけど)。
だから性欲と生殖は必ずしも同じ場所になかったりもするけどね。
けどまあ、生命が生まれるところには原則として性的な行為があったってこと。性的なつながりを持つことで子どもができるってことだ。

ただし、そうやって生まれてきてくれた子どもを育てるということになると、生活はまったく変わってしまう。自分という存在をいったん棚上げして、無垢ゆえに存在を全主張する物体にずっとつき添わなきゃいけない。
それは綺麗事抜きに覚悟が必要な状況で、いや、あなたの覚悟だけでは不十分で、まわりのサポート体制をもあらかじめ想定してからすすめないと必ずしんどくなる。
性的な行為はそういうリスクを含んだ行為だということ。

一方で、新たな生命をつくる目的ではなくても性的な行為をおこなうことも多々ある。というか人間の場合そっちの方が多いし、そのときのほうが性欲の存在感は強かったりもする。
つまりお腹が空いて食事を摂るように、性的な繋がりを求めて人とくっついて自分の欲求を満たす、ということが日常的にある。
それはそれで、別に悪いことではない。

けどね、たとえば手をつなぐようなことと比べたら、性的な行為は自分自身をとても消耗するんだ。良きにつけ悪しきにつけ。
それには社会的な慣習や成長過程で受ける学習の影響も大きいと思う。
小さい頃から性的なものがタブー視された環境にいると、そういった行為に罪悪感を持ちやすくなるとか、逆に反抗心からそこにひかれてしまうとか。

人はそれぞれの方法で性的な欲求をかなえたい。ただ単純に欲求を放出したいだけだったり、「この人だから」とつながりを求めたり。そこは見極めが難しいところだ。
それでも本人同士がいいなら別にいいと思う。スポーツのような性的行為。それを否定する気はない。

人はそれと同じように毎日食事を取っている。目の前の食べ物にただ感謝するのではなく、なんか偉そうに香りとか風味とかを論じたりして。
人間にはそうやって本能的な欲求ですら説明したり、本来の用途以外でも楽しめるようにする特性があって、それも人生のたのしみになり得るから。

だけどやっぱり、性的なものはあなたのなかのどこかを消耗する。
たとえば腐った食べ物を食べると身体を壊す。睡眠の質が悪い状態が続くと、精神的な変調をきたす。
性的な欲求も同じようなもので、その解消過程にはリスクも伴う。さっき言った子どもができるということだけじゃなくて、その方法を間違えたりすると身体や心を痛めてしまうと思う。
だから身体の性的な部分を使ってお金を稼ぐこともなるべくなら控えた方がいい。
これはやっぱり慣習とか社会的な評価の問題なのだろうけど、それらは生まれたときから少しずつあなたに植えつけられていったものなので、大人になって急に変えられるものではない。だから自分では「大丈夫」「なにが悪いの?」などと理屈で納得させようとしても、こころの奥の部分で一般的な考えが自分を責めて消耗してしまっていることもあるかもしれないんだ。

もうひとつ、具体的なリスク管理の話。
いま心地いい関係でも、後から思い返したらとてつもなく恥ずかしいことって本当にたくさんあるから、撮影とかなにかに残るような性的な接触は絶対にしない方がいい。

呑みすぎて熱く語って、そのあと死ぬほど恥ずかしいことが、ぼくは年に2、3回あるけど、呑みすぎて熱く語ったくらいなら「いやー、あのときはごめん」で済む。いじる側には欲求が介在していないから、ただただいじりたいだけだから、笑ってやり過ごせる。

だけど、性的なものはそれだけでは済まないことが多いんだ。人から好奇の目にさらされてしまう。
いじる側に悪意が、そいつの欲求が散りばめられているから、好奇の目にさらされてしまってしんどくなる。
ネット上にいくらでも情報が置いておけるようになった現代では、永遠に近い時間それが残っていく可能性もあるし。

いずれにせよ、性的なつながりは人が生きる上で必要なもので、そのありようはそれぞれだ(そもそも性的なものを必要としない人もいるし)。
だけどそれらはあなたの心の奥のほうにきっと残ってしまうから、とてもとても大事に慎重に行動して欲しいと思います。
そうやって自分を大切にすることがきっと、相手を大切にすることにもつながっていくと思うから。

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