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あなたが映画館で2回観た映画は何ですか? ──映画の見方を考える

以前、「泣いた映画が必ずしも良い映画ではない」みたいなことを書きました。

今回も似たような話かもしれません。

実は「何度も観た映画が必ずしも良い映画ではない」と言うか「観た回数と映画の評価は必ずしも比例しない」ような気がして書き始めたのですが、書いている途中でいろんなことに気づいて、映画というものの見方はいろいろあるような気がしてきたのです。

皆さんは同じ映画を何度も見に行くことがありますか?

世の中には気に入った映画を何度も何度も観る人がいます。

僕の周りだと、古くは『燃えよドラゴン』や『STAR WARS』を十何回も、あるいは何十回も観た人たちがいました。

あるいは近年では、自分の推しのアイドルが出演している映画のチケットを20枚買って、10枚は宣伝を兼ねて友人知人にあげ、残りの10枚は自分で使うなんて猛者もいました。まさに推し活鑑賞

ある意味それは「自分はこんなにこの人のファンなんだぞ」というのを周りの人たちに(あるいは同じアイドルを推す仲間内で)見せびらかすような面もあるのかもしれません(マーケティングの世界ではそういうのを誇示的消費などと言うようです)。

僕はそもそも、本であっても映画であっても、一度読んだ/観た本/映画をもう一度読む/観る暇があるんだったら新しい本を読みたい/別の映画を観たいと思うタイプなので、同じ映画を何度も観ることはあまりないのですが、それでも複数回観た映画は何本かあります。

ここで「映画を観る」と言っているのは「映画館で観る」という意味であり、テレビや配信で再度観たというようなケースはカウントしていません。

  1. 限られた上映期間中に、

  2. わざわざもう一度スケジュールを合わせて、

  3. 決まった時間に映画館に行き、

  4. 前回と同額の入場料を支払って観る

──というのは結構ハードルの高い行為です。単に「テレビでやってたから/Netflix や Amazon にあったから」もう一度観たというのとは重みが違うと思うのです。それは、そのハードルを越えてまで観たいと思うほどの価値を認めていたという証拠なのだと思います。

でも、だからと言って、その映画は必ずしもマイ・ベスト・ムービーではないような気もします。

それで、まずは自分が複数回観た映画ってどれとどれだっけ?と思って調べてみました。

僕が生涯で映画館で2回以上観た映画は以下の14本でした(ちなみにこれは僕が映画館で観た映画の1% 未満です)。

『青春の蹉跌』 1974/7/11 ②
『感じるんです』 1977/?/? ②
『グッバイ・ガール』 1979/4/9 ②
『もう頬づえはつかない』 1980/1/31 ②
『Keiko』 1980/2/22 ②
『晴れ、ときどき殺人』 1984/5/27 ②
『メインテーマ』 1984/7/20 ③
『天国にいちばん近い島』 1984/12/15 ②
『Wの悲劇』 1984/12/15 ②
『台風クラブ』 1985/9/7 ③
『エリ・エリ レマ サバクタニ』 2006/1/28 ②
『シン・ゴジラ』 2016/7/31 ②
『先生! …好きになってもいいですか?』2017/8/3 ②
『天気の子』 2019/7/20 ②

※   タイトルの後の日付は初回鑑賞日、丸数字は鑑賞回数

これを見てひとつだけ言えるのは、3回観た映画はさすがに自分が極めて高く評価している、文句なしのお気に入りの作品であるということです。

3回観たのは、相米慎二監督の『台風クラブ』と薬師丸ひろ子主演・森田芳光監督の『メインテーマ』だけです。ここで名前を挙げた2人の監督に僕は心酔していましたし、いまだに薬師丸ひろ子の大ファンでもあります。

また、クロード・ガニオン監督の『Keiko』は2回しか観ていませんが、これも上記の2本と並ぶ僕の大好きな映画です。

何度も観る映画の中には確かにそういうのもあります。

では、残りの11本はどうだったのでしょうか?

『Wの悲劇』は『メインテーマ』同様薬師丸ひろ子主演ということで、映画を見に行ったと言うよりも彼女を見に行ったという要素のほうが大きかったかもしれません。言わば昨今の推し活に通じる応援鑑賞ですね(でもせいぜい2回でしたw)。

ちなみに応援消費というのは推し活をはじめとする最近の若者の消費行動の特徴とされています。僕の場合は大昔ですが、すでに先取りしていたんでしょうか、なんてね(笑) 最近は年齢に関係なく同じようなものを好きになる消齢化なんてことも言われていますしね(関係ないかw)。

そして、『天国にいちばん近い島』は初回鑑賞日が『Wの悲劇』と同じです。つまり2本立てだったんです。だから、とりたてて大林宣彦監督や原田知世のファンであったわけでもないのだけれど、ついでに2回観てしまったんだと思います。

せっかく2本立てで1本あたりの単価が抑えられているんだから、2回目は1本だけにして単価を上げるのは馬鹿らしいという、言わばコスパ鑑賞でしょうか?

とは言いながら、『天国にいちばん近い島』もそれなりに評価していたからこそ、あえて両方観たのだと思います。

それに対して泉じゅん主演の『感じるんです』は、当時の「にっかつロマンポルノ」ですから多分3本立てだったはずです。ただ、こちらはひたすら『感じるんです』だけが目当てで、1回目もそうでしたが2回目も併映の2本には目もくれずに映画館を出てきたわけで、コスパ志向とは真っ向から対立する見方です。

でも、ポルノで2回観た映画は生涯でこれだけなので、こちらもあの時の僕には感じるところが大きかったんでしょうね(先日妻が留守の間に WOWOW で3回目の鑑賞をしました。──これなんかノスタルジー鑑賞と言うべきですかねw)

『グッバイガール』は良い映画ではありましたが、単に少年期の僕のメンタリティにマッチしたのだと言うべきでしょうね。そういう意味では『青春の蹉跌』や『もう頬づえはつかない』も同じです。アドレッセンス鑑賞とでも言いましょうか。

時代/世代/年代によって刺さる映画は変化してくるものですが、やっぱり、基本的には評価が高い映画でないとなかなか複数回観たりはしないということなのでしょう。

ところで、ちょっと変わっているのは『エリ・エリ レマ サバクタニ』です。

これも主演・宮﨑あおい、監督・青山真治という僕好みのキャスト/スタッフですが、これを再度観たのは、前回観たときに、何度も出てくるシーン(浅野忠信と中原昌也の二人組が「ノイズ音楽」を演奏するところ)で、何度となく寝落ちしまったからです。

で、そんなに好きな人たちの映画なのに途中で寝てしまったのが悔しくて、もう一度見に行きました。言わばやり直し鑑賞か? いや、確認鑑賞か?
でも2回目のときも案の定、草原での演奏シーンで見事に眠りに落ちそうになりました(笑)

さて、『晴れ、ときどき殺人』ですが、なんでこれを2回観たのか、全く記憶もありませんし、今となっては想像もつきません(笑) 渡辺典子がそんなに好きだったのかな? いや、悪い映画だと言うんじゃないんですよ。でも、2回観るかな?って感じ。そういう、よく分からないのもあります。

『先生! …好きになってもいいですか?』は僕が勤めていた会社の出資作品だったので、関係者プレビューで先に観ていた(つまり1回目は無料)のですが、これも大好きな三木孝浩監督の作品なので、「ちゃんとお金を払って劇場でもう一度観てあげたい」みたいな感覚だった気はします。そう、これも言わば応援鑑賞

ただ、2回目を観て評価が高まったのも事実です。やっぱり2回観ると発見があるんですよね。

『シン・ゴジラ』と『天気の子』はとても高く評価したからもう一度観たということに相違ありません。特に『天気の子』は IMAX で観てみたくてもう一度映画館に足を運びました(そういう意味ではグレードアップ鑑賞なのかもしれません)。でも、高く評価したからと言って、それだけで必ずしも「もう一度観てみよう」ということにはならないと思います。

この2本の映画について言えば、「絶対に見落としていることがまだまだたくさんあるはず。それをもう一度見極めたい」という意識が非常に強かったように思います。言わば探求鑑賞ですね。

まあ、こうやって改めてチェックしてみると、なんのかんの言っても、大体の映画は高く評価しているからこそもう一度映画館に行ったということが分かりますが、しかし、それがベスト作品かと言えばそうとは限らず、中には別に高く評価したというわけでもないのに観に行った作品もありました。

だから、誰かに「この映画は2回観た」などと言われると、「そんなにこの映画が好きだったのか!」と思ってしまいがちですが、あまり短絡的に考えないほうが良いみたいです。

あと『台風クラブ』から『エリ・エリ レマ サバクタニ』までの約20年間は、素晴らしい映画もそれなりにたくさん観たと思うのですが、2回観た映画が1本もなく、この長いブランクも逆に不思議ではあります。

他の映画とどこが違っていたのでしょう? 今イチ琴線に触れる作品には出会わなかったということなのでしょうか? あるいは映画自体の問題ではなく、僕自身の生活習慣の問題だったのでしょうか?
今後の研究課題です。

皆さんも映画館で2度観た映画を思い出してみてください。なんで2回観たのか思い出せないやつもあると思いますよ(笑)

最近の若い人たちは失敗したくないという思いが非常に強いので、事前ネタバレ視聴というのをやるらしいですね。

そういう意味では2回目の鑑賞というのはすでに大体のことを知っているわけで、しかもある程度評価しているからこそ観るわけですから、これは安心して観られます。そして多分、そこには新たな発見もあるはずです。

たまに2回目の鑑賞に行くのもいいかな、と思います。皆さんも如何でしょうか。


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