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2021年に出会えてよかったコンテンツ【映画編】

 前回の漫画編に続いて今回は映画編を書いてみました。とはいえコロナ禍ということであまり映画を観れず、観られなかった作品も結構あります(元々あまり映画を観る方ではないのもあります)。それらは配信・レンタルなどが始まり次第、順次観ていきたいと思います。

本気のしるし〈劇場版〉

 原作漫画の方については『文藝』の闇のブックガイドでコメントしているので、映画について少し。原作と同じ刺さるセリフのよさに加えて俳優陣の演技が良く、時代に合わせたアレンジ・解釈もとてもよかったです。知人と観に行ったのですが、自分は原作既読・相手は未読で、双方ともに楽しめました。冒頭で地図を読めなかった浮世が、やがて地図を使って相手を探しに行くという展開に胸が熱くなり、僕もちゃんと地図を読めるようにならなければいけないな、としみじみ思いました。

花束みたいな恋をした

 個人的には結構刺さる映画でした。主役二人にはちょっとずつ共感する要素があったのですが、やや麦くんの方に共感したかな。麦くんはせめて営業じゃなければ違ったのかなとか、いやでも第二新卒の就活って営業率高いんだよな…とか、色々な描写が妙にリアルでした。自分の過去を見ているような感じがあり、とてもつらい。でも観てみてよかったです。
 絶妙に××とか○○とかのネットスラングとかを避けてお出ししてくるあたり、チョイスが上手かったですね。あと麦くんが初手で「女なのにこういうの好きなんだ」とか言うタイプの男でなくて本当に良かった。自分が若い頃は周りにいるのそういう奴ばかりだったから…。
 あと気さくな兄貴みたいな人が男性陣からは評判いいけど女性陣からは男尊女卑のヤバい奴と認知されてる感じとか、カルチャー系の集まりでわりとある光景だなと思いました(ああいう奴が仕切ってしまうような集団があまりにも憎くて、どうすれば皆が安全に対等に喋れる場を作れるのか、日々悩んでいます)。
 以下余談です。麦くんは自分で考える力を失い社会の要請に応えるだけの“人形”になってしまったわけですが、 僕は二人に『闇の自己啓発』を読んで欲しくて、書店のシーンや本を見せ合うシーンでうっかり出てきてくれないかなと、ヤキモキしてしまいました(公開時期的に出るわけがない)。頑張ってこじつけると、劇中でヴェイパーウェイヴとか宝石の国の話も出てたので、昔の知り合いに薦められて…とかで手に取るきっかけが無くもないのかなと思いました。まあ麦くんはあそこまで人形化が進むと手遅れっぽいですが…。
 二人の好きな本の列挙とかはあんまり刺さらなかったんですが、自分や周りも若い頃はああいうノリだったなという恥ずかしさ、“人形化”していく麦くんの迫真の描写などが良かったです。僕は周りの人達、そして自分自身が人形化していくのに耐えられなくてああいう本を出したので…。
 いずれにせよ『花束みたいな恋をした』や『闇の自己啓発』が話題になる世相って、既存の社会への不満が高まっており、マジョリティなるものに取り込まれたくないという意識を持つ人が多くいるということなのかなと思い、少し救われた気もしました(手前味噌で大変恐縮ですが)。

あのこは貴族

 家制度を継続するための「装置」としての生で終わっていいのかと、問いかけてくる映画のように感じました。家を継続するための人形になれ、産む機械になれと迫られた女性がそこからEXITする話。お嬢様が結婚相手を探す流れを見て、谷崎潤一郎の『細雪』を現代的にアレンジするとこうなるのかな、なんて思いました。現実は結婚してハッピーエンドでは全くなくて、その後の人生にどう折り合いをつけていくか、何を優先していくか、ということなんですよね。
 事前情報をほとんど入れずに見たので、もっと苛烈な内容なのかと勝手に思っていたのですが(パク・チャヌク監督の『お嬢さん』みたいなオチかと思っていた)、そうではなくてしっとりとした感じの終わり方でしたね。
 「貴族」「地方」双方の女性に少しずつ共感する要素があり、改めて「人を装置のように扱ってしまう社会・家制度を変えたい」という気持ちになりました。

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||

 まずは長い間苦しんできた庵野監督が救われてよかった、「おめでとう」と言いたいです。しかしエヴァ的なものに長く囚われた自分が救われたかと言えば、それは別の問題。
 田舎の村社会のような「第三村」を理想的に描く感じが個人的に耐えがたく、全体を通してなんだか求めていたものとは違ったなと思ってしまいました。しかし現実に帰れというモチーフを以前より明るく描いているのは良かったですし、Twitterなどでいろんな人の感想を見るのは結構楽しかったです。
 あと昔はアスカに感情移入していた自分が、いつの間にかゲンドウに入れ込むようになっていたことに少し驚きました(シンジよりもゲンドウの方がセカイ系主人公みたいになっているからか)。作者サイドも年を経てゲンドウの質感が上がったから、というのは間違いなくあるんでしょうけども。
 とはいえ自分の話をすれば、数年前に読書会を始めた時と比べて今の自分は色々な方々のおかげでだいぶ落ち着いてきた(悪く言えば丸くなってしまった)ので、庵野監督の光落ち(?)には共感する面もありました。

キングスマン:ファースト・エージェント

 2021年の映画納めはこの作品でした。バカ笑いしたくて観に行ったらドシリアスな展開が続いてビビったんですが、一発ネタだった同シリーズを「以降はこういう方向性でやっていくぜ」という方針を示した意味では評価したいです。なんだろう、思ったのとは違ったけどこれはこれでアリという感じですかね。設定的に色々「大丈夫?」と思うところもありますが、今後のシリーズ作品も楽しみです。

あとがき

 上では出しませんでしたが『閃光のハサウェイ』も良かったです。ブライトさんの気持ちを考えるとこっちまで胃が痛くなる…。ほか『映画大好きポンポさん』『最後の決闘裁判』『マトリックス レザレクションズ』あたりは観られていないので、近いうちに劇場or配信などで観たいなと思っています。
 こういった総括は、Twitterに感想を書いただけだと流されて消えてしまうので後から参照しづらいという反省から始めてみましたが、どの程度の作品を取り上げるか、どういった書き方をするかなど、まだ定まっていないので試行錯誤したいと思います。しかし一年も経つと年初のころのコンテンツなどは新鮮な感覚が失われてしまうので、もっとこまめに書いた方がいいですね。


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