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2021年に出会えてよかったコンテンツ【漫画編】

 俺が寝ている間に年が変わってしまった! というわけで大遅刻ではありますが、2021年に読んでよかった漫画について少しずつコメントしてみようと思います。書かないとどんどん忘れてしまうので、記録に残すことが大事なんですよね。なお漫画編と書いてますが他の〇〇編が出るかは不明です。

応天の門

菅原道真と在原業平がコンビを組んで京の都で起こる怪奇事件を解決していく話。怪異譚(に見せかけた人の業)が結構好きなので、一気に読み進めてしまいました。意外とこの時代の物語ってあまりお目にかかることがなかった気がするので新鮮。自分はあまり日本史に詳しくないので「清和源氏の祖である清和天皇ってこの時代の人だったのか」などと発見があって楽しいです。時代考証の方による解説もあるので読みごたえあり。でもタイトルにあるようにこの後「応天門の変」があるんだよなあとか、歴史上の人物であるが故にその後がわかってしまう切なさなんかも感じます。でもその切なさも含めた空気感がいいんですよね。

望郷太郎

地球に氷河期が訪れ、文明がリセットされた500年後、コールドスリープから目覚めた主人公が故郷の日本を目指してどうにか生き抜いていくお話。赴任先のイラクで家族皆でコールドスリープしたはずなのに、彼以外の家族はとっくの昔に通電が止まって死亡しており、主人公は絶望。そして日本へ帰ることだけを希望に旅に出るのです。
主人公は大手総合商社の一族でイラク支社長でもあったのですが、新世界で生き抜くにはあまりにも貧弱なフィジカルの持ち主。現生人類が把握していない鉱石の生産地域を知っているなどある種のチート的な知識もあるのですが、それだけで俺TUEEEできるような状況ではなく、知り合った人々に助けてもらいながら、変わり果てた世界で様々な人々と出会って相互に影響されていきます。
一度文明が滅びて再び起こるならこんな感じだろうか、というシミュレーションがよくできていて、貨幣や支配構造の誕生などを見ると、人類はまた過ちを繰り返してしまうのか、という気持ちになったりもします。ある種の異世界転生ものに近い構造ですが、徹底したリアリティがあって引き込まれる作品です。

作りたい女と食べたい女

飯を作るのが大好きだけど大量には食べきれない女と、飯をたくさん食べるのが大好きな女が出会ってしまったお話。美味しいご飯を食べる二人に癒やされるだけでなく、社会の不条理に切り込んでいく作風がとても好みでした。女性が何かしてると周囲が勝手に男のためなんでしょ、男の影響なんでしょ、と解釈してくるクソのような社会で、自分を大事に生きていくために必要なことを教えてくれる気がします。
飯漫画で飯を食うヒロインに妙に性的な表情をさせるやつとかありますが、本作はそういう感じではなくて淡々と食べているのがいいですね。そういう意味では孤独のグルメのシスターフッド版と言ってもいいかもしれません。あとレズビアンを取り巻く状況を描くためショッキングな描写がある回では、事前に注意書きを入れてくれていて大変ありがたい配慮だなと思いました。

かげきしょうじょ!!

宝塚歌劇団をモチーフとする紅華歌劇団に入団した100期生の少女たちが、未来のスターを目指すお話。元JPX48のアイドルだった少女、歌舞伎に関して複雑な感情を抱いている少女など、様々なバックグラウンドを持つ少女たちが登場します。アニメから入っていま原作を追いかけている途中なのですが、登場人物たちの生きざまを掘り下げていくストーリー展開が素晴らしく、人間の描き方がいいなと思います(アニメだと人物ごとに特殊EDが用意されているのも大変好みでした)。
ただ、物語の最初の方である人物が過去に性的虐待を受けていたことが明らかになる場面があるのですが、その生々しさが真に迫っているため、同様の経験をしたことのある方は過去の記憶を想起する恐れがあります、ご注意ください。被害自体もですが、それを周囲が全く真剣に受け止めてくれない感じがあまりにも身に覚えがあるため、自分はしばらく精神的に厳しくなってしまいました。とはいえ人の心を動かす力のある物語なので、少しずつ読み進めていきたいと思います。

ブルーピリオド

アートに興味のなかったマイルドヤンキーの青年が、ふとしたきっかけで描くことに目覚めて東京藝術大学を目指す話。芸術に携わる苦楽をえぐいくらいに表現しています。つらい思いをしている登場人物が結構いるので、胸が苦しくなるシーンも多いのですが、伯楽とも呼ぶべき大人たちが節目節目でいてくれるのでちょっと救われます。僕は芸術については詳しくないのですが、何かと真剣に向き合うことを大切さに気付かせてくれますね。自分があまりにも表面的にしか絵画を見れていなかったのだなと反省しつつ、美術展にもっと行きたくなりました。
あと作者と完売画家の方による対談記事も良かったです。この漫画を読むことで美大に進むというイメージの解像度を上げることができて、情報格差に貢献する部分もあるのではないかと指摘されていました。美大受験に限った話ではないですが、確かに身近に経験者がいないと想像力が働きにくい面はあり、自分や周りの解像度を上げてくれるコンテンツの存在はありがたいことだなと思います。https://www.newsweekjapan.jp/stories/culture/2021/12/post-97745.php


売れっ子漫画家×うつ病漫画家

ちょっとした賞をとったもののその後鳴かず飛ばずで漫画が書けなくなり、精神を病んでしまった漫画家が主人公。アルコール依存症とパニック障害と自律神経失調症などを抱えており、便宜上彼をうつ病漫画家と呼んでいます。漫画が売れずセルフネグレクトでゴミやねずみと同居してるほどめちゃくちゃになった彼と、ひょんなことから知り合った売れっ子漫画家(実はうつ病漫画家のファン)が、こんなところにいさせられない、と自分の豪邸に引き取ってお世話してくれるお話。
編集者に意に沿わない漫画を描かされたり罵倒されたりするシーン、そして自分の心の中の声が自分を責め続けるのがつらいです。でも売れっ子漫画家はめちゃくちゃいい人でスーパーダーリン。売れっ子漫画家はうつ病漫画家の漫画のセンスが大好きで、良かれと思って色々してくれるのですが、うつ病漫画家がなんでも持ってる彼と何もない自分を比べて苦しむところに共感してしまいました。自分にも看病してくれる売れっ子漫画家が空から降ってきてくれないかな、なんて思ったり。
また漫画に関するスタンスの違いの話なんかも出ていて勉強になるなあと思います。例えば、絵で見せる漫画と文字が多いタイプの漫画の比較の話も出てくるのですが、どちらのタイプを読みやすいかどうかに優劣はないんだよ、と言ってくれていることに救われました。僕は絵の構図の良さなどがあまりわからなくて、文字にされないと理解できないタイプなので、自分のことをずっと漫画を読めていないダメな人間だと思ってきました。だからすごく救われたし、今回こういう記事を書こうと思ったきっかけにもなりました。

鍋に弾丸を受けながら

治安の悪い場所の料理は美味しい、という謎の経験則によって世界各地の危険な場所に飯を食べに行くお話なのですが、主人公が二次元作品を摂取しすぎて脳が壊れているために登場人物が全員美少女に見えているという狂った設定になっています。沙耶の唄みたいでテンションが上がりますね。
自分はあまり何かの美少女化が好きではないのですが、この作品は上記のように突き抜けてしまっているので逆に読めるという感じがあります。土地や人の紹介をしつつうまい飯を食う描写がなんだか楽しくて、ついつい読んでしまいます。

あとがき

とりあえず以上になります。僕が作品を評価する際の軸ですが、物語としての面白さ(+テンプレから逸脱してると嬉しい)と、自分の実存の悩みに近いかどうか、の2軸が大きいような気がしました。今回だと実存軸の作品は『ブルーピリオド』『売れっ子漫画家×うつ病漫画家』あたりだったかと思います。
自分は漫画を読む習慣があまりなかったので、こんな名作を今更読んでるのか!と思われる方もいるかと思いますが、大目に見てやってください。ちなみに漫画を読むきっかけはTwitterで見たとか、セールで目を付けて大人買いしたというパターンが多いです。
ただ、自分は主にDMMブックスとKindleで漫画を買っているのですが、うっかり別々のプラットフォームで重複購入していることがあり、管理が難しいなと思いました(作者様にお布施できたので良しとします)。
あと、去年は出版の関係などでバタついてしまい、書くことができなかった「2020年に読んでよかった漫画編」もいずれやりたいと思いますが、その余力があるかはわかりません…。

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