YAKUSHIMA ZINE

フルーツ、お魚、野菜に野鳥……。屋久島在住のさまざまな書き手が、日常の風景を交えながら…

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フルーツ、お魚、野菜に野鳥……。屋久島在住のさまざまな書き手が、日常の風景を交えながら、島の四季を発信するローカルマガジン。このメディアは、THE HOTEL YAKUSHIMAの委託を受け、一湊珈琲編集室が運営しています。

最近の記事

#山尾三省の詩を歩く 第16回

 子ども達の夏休みが始まった。連日、強い日射しの照りつける空が広がり、海も青く青く輝いている。海の上にはぽかりぽかりとわた雲が浮かび、そしてもくもくと入道雲が湧き出している。  今年も日本列島は猛暑の夏を迎えている。  屋久島は32度を越える日はほとんどないが、それでも日中はやはり暑い。 「海沿いの道で」は四男の道人が小学6年生の夏休みの時の詩だ。  小学校最後の夏休みに学区の志戸子集落から吉田集落までをクラスの皆で歩くという行事が計画されたのだ。三省さんは道

    • #屋久島野菜徒然日記

      随分お久しぶりになってしまいました。 気づけば季節は春から夏へ。 屋久島は水の中に住んでいるかのような気候です。 一年間、屋久島のお野菜を一つづつ紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか? 見直してみて、日々の仕事の中で想うのは やっぱり屋久島のお野菜からはこの土地の水の味がする ということ。 そして、それをもっと感じていくと その透きとおった味わいこそ、屋久島野菜の魅力なのでは、と感じるのです。 水が体の中に入ることによって、細胞一つひとつを輝かせ

      • #山尾三省の詩を歩く 第15回

        雨の季節が始まり、連日のざんざん降りだ。 まだ居ても立ってもいられないほどの大雨にはなっていないが、気は抜けない。 さて、この詩の「ガクアジサイ」はおそらくヤクシマコンテリギ(ヤクシマアジサイとも言う)のことだろう。 今を盛りに、白川山の林道沿いに白い花を咲かせている。 コンテリギとは紺照木なのだと知ったのは最近のこと。葉の裏側を陽にかざすと紺色に見えることから付いた名前らしい。実際、葉をかざしてみるとそう見えないこともない。 雨の日に上下の雨合羽を着て外作業をする

        • #山尾三省の詩を歩く 第14回

           三省さんが亡くなる3カ月前に書いた最晩年の詩だ。  前年の11月に末期がんの告知を受けてから、死というものと向き合って来た三省さんの辿り着いたひとつの境地を表していると思うが、理屈で読もうとすると難しくなってしまう。  こういう詩は音楽を聴くように読めばいいのだと私は勝手に思っている。 耳元で5月の風がそよそよとさやさやと吹いている、そのやさしい風の感触を感じることができればいいのだと思う。  1年の中で最もさわやかな5月の風をからだに受けるように読みたい…。 今年も5月が

        #山尾三省の詩を歩く 第16回

          #山尾三省の詩を歩く 第13回

           平成10年、長野県松本市浅間温泉にある神宮寺に広島の原爆の残り火が分燈されました。「劫火」は当時の住職であった高橋卓志和尚から、その火の傍に置く詩を書いてもらいたいと依頼があり書いたものです。  死を目前にして書いた「三つの遺言(東京神田川の水を飲める水にしてほしい。九条を世界の九条にしてほしい。原発を止めてほしい)」に通じる、三省さんの願いであり、祈りでもあります。  昨年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻は世界中の人々に驚愕と恐怖を与え、今なお戦闘が終わる兆しは見えま

          #山尾三省の詩を歩く 第13回

          #やくしまびより 3月

          ............ 山下あけみ 種子島出身のひつじ年でうお座。 漁船漁港を描くのが好き。 特に種子島で製造されていた薩摩型木造船には思い入れがある。 埴生窯に嫁に来てから、紹介を兼ねて窯の仕事や屋久島の自然をマンガに描き、不定期だがFBページはにい窯にて連載中。 「やくしまびより」でも島の日々のちょっとした出来事や身近な自然の風景を描いていく予定です。 どうぞご覧ください。 はにい(埴生)窯 https://www.facebook.com/hanii

          #やくしまびより 3月

          #屋久島野菜徒然日記 3月

          気づけば3月もおわり。 この連載もはじめて1年になりました。 拙い文章ですが、日頃向き合っているお野菜たちと会話をするように文章をつくるのは、わたしにとってすごく貴重な時間です。 お付き合いいただきありがとうございます。 さて、そんな1年のお野菜たちを振り返っていたのですが、屋久島のなかでわたしの特に大好きなお野菜をご紹介していない!ということに気づいてびっくり。 それは"山芋"なんです。 屋久島に来て、その美味しさに驚いたお野菜のひとつ。 こちらの山芋は、やくとろと

          #屋久島野菜徒然日記 3月

          #山に十日 海に十日 野に十日 3月

          春の縄文人  三月、タブノキの花が咲き始めると、屋久島の照葉樹林は、一斉に新芽を吹き出す。実に地味な花だけど、タブノキの花は、島に春の到来を告げる花である。 「木の芽流し」が降り注ぎ、タブノキをはじめ、クスノキやスダジイの新緑がモコモコと空へと立ち上がる光景を目の当たりにすると、心は遥かなる時空を超え、縄文時代へと飛翔する。  一万年以上も続いた照葉樹林文化。その担い手であった縄文人。凄いなぁと思う。そんなに長い間、地球環境とうまくやり取りを続けてきた文化が、かつて存在し

          #山に十日 海に十日 野に十日 3月

          #山尾三省の詩を歩く 3月

           1990年春に書かれた詩。春の海の透明感が希望とともに伝わってくる気持ちの良い詩だ。  三省さんにとって、海はまず第一に日々の食事のおかずをもたらすものであった。海は自分達が貝を採りに行く場所であり、近所の漁師たちが魚やイカなどを獲ってきて持ち帰り配ってくれる所だった。  そしてさらに食べ物だけではなく、本来の希望を与えてくれる場所であり、静かに沈潜する自分に真理という大切なものをもたらしてくれるところだった。難しい言葉も華美な言葉もなく、率直にすとんと胸に落ちてくる無駄の

          #山尾三省の詩を歩く 3月

          #屋久島の鳥たち 3月

          春の訪れと旅立ち  3月に入ると野山には可愛い花や新緑が見られ始めます。 小さな虫たちも活動し始めます。  里ではいろんな鳥の声が聞こえるようになってきます。  ウグイスの「ホ~ホケキョ」はさえずりと言い、雌へのアピールになります。  冬の間はこの声が聞こえませんが、居なくなったわけではなく、「ジャッジャッ」と「笹鳴き」と呼ばれる地鳴きで鳴いています。  似たような地味な地鳴きで鳴く鳥が多いのですが、この時期になるとさえずりの練習を始めるようです。  冬の間、里に下りてき

          #屋久島の鳥たち 3月

          #果実でめぐる島のいちねん 2月

          皆さまこんにちは‼︎ お久しぶりぶりの投稿になりました〜 実はあけましておめでとうございますを言えていません… 笑 年始の投稿吹っ飛ばしました すみません アレだ、年末も飛ばしたかなーーー??? まぁ、それくらいお久しぶりでございます 12月は『ぽんかん』の事を書こうと思って写真は撮っていたものの記事が書けず 気づけば2月(いや、正式には今は3月) 無理言って2月のフルーツ記事でアップしていただきました その今月のフルーツは 『サワーポメロ』ですっ! えっ???

          #果実でめぐる島のいちねん 2月

          #屋久島野菜徒然日記 2月

          屋久島の2月下旬はすでに春模様。 外ではすももの花が咲き、早咲きの桜も満開です。 この時期の屋久島もまだまだ色々なお野菜が色取ってくれていますが、一際目を引くのがアスパラ菜やロマネスコ、カリフラワーやブロッコリーといった花野菜たち。 もう暖かくなるよ、春が近づいているよ、という合図のように、もこもこと可愛い姿を見せてくれます。 ゆがいてディップをつけて、というのは定番の食べ方ですが、この茹で方が結構奥深い。 コツはたっぷりのお湯で泳がせるようにゆがくこと。 決してギチ

          #屋久島野菜徒然日記 2月

          #島ぐらしとさかなたち 2月

          屋久島水揚げ第2位の魚 屋久島での水揚げ第1位の魚といえば、みなさんご存じのトビウオ。 年間を通して10種類前後のトビウオが獲れる。 トビウオと並んで屋久島で有名な魚といえば、観光客にも人気の首折れサバ。 こちらはゴマサバという種類で、1日の出荷制限もあり屋久島での水揚げは第5位となっている。 では、第2位の魚とは? それは、メダイ。 体に対して目が大きいことから名付けられた白身魚で、屋久島ではタルメと呼ぶ。 旬は1月~3月で、鹿児島県の冬の魚にも選ばれているが、 島内で

          #島ぐらしとさかなたち 2月

          #山に十日 海に十日 野に十日 2月

          炭を継ぎ薪を燃やして  屋久島の冬は寒い。島の北部で暮らす島人は、特に寒がりである。前岳に雪が積もり、北西の風が吹き荒れ、気温が10度を切ると、「凍え死ぬよね」なんて、たわけたことをのたまうのだから、情けない。  だが、明治10年に建てられた我が家は、本当に寒い。礎石の上にポツンと乗っかっているだけの「キャクロ作り」なので、床下はスッポンポン。冷たい風が、我が物顔で通り抜け、時折畳の隙間から、家の中へと不法侵入してくる。壁も一枚壁なので、アチコチに開いている節穴から、虎落

          #山に十日 海に十日 野に十日 2月

          #山尾三省の詩を歩く 2月

          「夢起こし」は三省さんが屋久島に移住してまもない頃の作品だ。 『びろう葉帽子の下で』の初版は屋久島移住10年の節目に出されたから、少なくとも10年以内の作品である。 屋久島に移住して、これから自らの自己実現の道を歩むという喜びの中で創られている。 畑の土を起こすという慣れない仕事をしながら、自分の夢を起こしていると身震いするような喜びの中にいたに違いない。 その心の震えが伝わってくるようだ。 「その夢は椎の木、小麦、ばんじろう、船、神」と畳みかけるような言葉たちが読む者の心も

          #山尾三省の詩を歩く 2月

          #やくしまびより 2月

          ............ 山下あけみ 種子島出身のひつじ年でうお座。 漁船漁港を描くのが好き。 特に種子島で製造されていた薩摩型木造船には思い入れがある。 埴生窯に嫁に来てから、紹介を兼ねて窯の仕事や屋久島の自然をマンガに描き、不定期だがFBページはにい窯にて連載中。 「やくしまびより」でも島の日々のちょっとした出来事や身近な自然の風景を描いていく予定です。 どうぞご覧ください。 はにい(埴生)窯 https://www.facebook.com/hanii

          #やくしまびより 2月