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「平家納経」をさがして

「平家納経」を一昨年から少しずつ模写している。
といっても、お経の頭にある見返しという絵の部分だけの模写、それも素人の模写だから技術も知識も素材も無いので、まあ推してしるべしだ。
ただ描いてみると、素人目にも謎も世界も次々と広がる「平家納経」の底知れない魅力に徐々にハマっていった。

「平家納経」は平安末期、平清盛(1118-1181)が一門の繁栄を祈願して広島県宮島にある厳島神社(いつくしまじんじゃ)に奉納した三十二巻の国宝の写経だ。

子供の頃、教科書に載っていた写真を見た時にその美しさに感嘆した記憶から、いい大人になってから大和絵の教室にかようようになった私は次の画題として恐れ多くも見返りの絵の模写をすることにした。

始めるにあたっては、平安末期では色も褪色して見えないだろうと、いつものごとくガサツな判断をした私は田中親美(しんび)による模写の模写をすることにした。
田中親美は三井財閥の大番頭で著名な茶人である益田鈍翁(どんのう、どんおう、益田孝)と高橋箒庵(そうあん、義雄)の依頼で、関東大震災を挟んだ時期に平家納経の模本に取り組んだ。益田からの当時の巨額な資金をベースに、元々書に優れた田中親美は色鮮やかで絢爛豪華な模本を作り上げた。厳島神社への奉納分、自分の保管分、益田鈍翁に納めた益田本、大倉財閥の大倉本、安田財閥の安田本、電力王で茶人の松永耳庵(じあん、安左エ門)の松永本と、ある。
教室の先輩に広島の筆の里工房で開かれた「よみがえる王朝のみやび」展のプログラムを紹介され、この本の益田本を参考に模写を始めた。

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