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雑記帖

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日々思い浮かぶよしなしごとを書いた雑文をまとめる雑記帖です。
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2020年3月の記事一覧

数学用語のできるまで 第2回 名前の効能

さて、あれこれお話しする前に、まずはこれをお読みいただこう。

ものの名前がひとたび定まれば、人はその呼び方で迷わなくて済むようになる。ものに名前をつけるのは、呼び方で迷わなくするということに尽きる。

例えば「熊太郎」という名の人がいる。だが、この人は熊ではない。その姓は「中村」だとする。この人は人であって村ではない。「直」という名前の人がいるとして、その人が正直かどうかは分からない。五郎の兄に

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備えあれば憂いなし。

「備えあれば憂いなし」

というのは、子供の頃、さんざん遊んだ歴史シミュレーションゲーム『信長の野望』(光栄)で何千回と目にした言葉。

『信長の野望』は、群雄割拠する戦国の日本で、一大名として国を治め、天下統一を目指すゲームだ。

基本は、平時の内政と他国との戦の二つの繰り返しで、平時は治水工事をしたり、開墾を進めたり、経済振興をしたり、民に施しをしたりして、要するに国を豊かにするための手を打つ

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『手のひら』で対談



本の雑誌社から刊行される『手のひら』という本に、吉川浩満くんとの対談が掲載されます。

「「読みたい」を叶える――春の読書ガイド」と題して、自分たちが高校生のとき、どんな読書をしたか、本をどんなふうに読んでいるかといった話をしております。

本の読み方にご関心のある向きは覗いていただければ幸いです。

吉川くんとは大学生時代からのつきあいで、かれこれ30年近くなるでしょうか。卒業後に、一緒に「

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Hello, world!

ときどき、どういう仕組みか分からないのだけれど、道を歩いたりしているときに、子供のころによく見たアニメの主題歌が思い出されたりする。

なかでも頻度が高いものに『銀河漂流バイファム』がある。1983年から84年にかけての放映をリアルタイムで見ていた。ということは、12歳から13歳くらいだろうか。

オープニングテーマは「HELLO, VIFAM」といって、キーボードのイントロとともに、作中に登場す

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noteを書きたくなるとき(あるいはたくさんの下書きに埋もれて)

どこかへ移動する電車でnoteを書きたくなることが多い。

といっても、これをお読みになっている物好きな方はご存じかもしれないように、なにか読んでためになるようなことも、面白いおかしいことも書いてない。折々の思いつきを書くばかりである。

移動中にnoteを書き始める。だが、多くの場合、書き始めたところで満足してしまう。あるいは書いてみたものの、わざわざ公開するようなものでもないと思ったりする。一

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数学用語のできるまで 第1回 数学の言葉はどこから来たのか

以前、日本語で使われている数学の用語はどんなふうに造られたのか、ということに興味があって、少し追跡してみたことがある。

その際、辿り着いた資料の一つに『東京數學會社雑誌』という雑誌があった。これは、明治10年の設立で、日本で最初の学会とも言われる東京數學會社(東京数学会社)が発行していた学会誌だ。

この数学学会では、ヨーロッパから輸入された新しい数学を扱っているのだけれど、当時はまだ、いまのよ

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気になることがあると

気になることがあると、世界の見え方は変わる。

例えば、株の売買をする人は、投資している会社の業績に関わるニュースが気になるようになる。カレーの作り方が気になる人は、スパイス売り場になにがあるかをチェックしたくなる。恋をしている人は、なにかにつけてその人を想う。

私はどうかといえば、これから1年、『数学セミナー』という雑誌で、数学と科学の本について読書日録のような連載をすることになって、これまで

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説明をよく読んで

くるみ汁粉を食べたくなって白玉だんごをこしらえる。

エプロンをつけてよく手を洗う。こんなときのために買っておいた白玉粉の袋とボールを用意する。

200gの白玉粉に水180ml。

袋の口をハサミで切ってボールに粉をあける。計量カップに水をとり、少しずつボールに注ぐ。水の染み込んだ粉を手で揉んでゆく。

粉がつながって少しずつ塊になってくる。さらさらしていたものが、ころころ玉になり、玉はやがてく

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