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日本一無名な島根が異世界に行ったら世界一有名になった話 23

写真やグラフも見ながら一つずつ文を読んでいく寺山。
すると昨日の夜から朝までの間に、いくつか新たな報告がなされていることが判明した。

特筆すべきは県境における地形変動の規模について。
昨日の地震発生直後に現地を訪れた寺山は、事前の説明で土砂崩れが発生したと説明を受けていた。
だが実際に見てみると、とても土砂崩れというには範囲や規模が尋常ではない様子だった。
そのことに関して、周辺を警備する警察や自衛隊に対して詳しい調査を行うようにと指示を出していたのだが、早くもその結果が送られてきた。

報告によると昨日の午後四時頃、自衛隊の偵察小隊が国道9号線部分から被災地内部に侵入を試みたという。
道路が消失し代わりに木々が生い茂る中、徒歩で約1時間かけて2キロメートル東に進んだ記録が資料に書いてあった。
その時の移動中に関する記述もいろいろとみられ、かなり入念に調査したことがわかる。
そして調査の結果、2キロ先に進んでも地形の変動は続いており、それまでの鳥取の地図情報と一致する道路や建物は確認できない、ということが書かれていた。

一通り文章を読んだ寺山は、その隣に添付された写真に目を移す。
そこには昨日見た森と瓜二つの光景が映し出されていた。
寺山が県境で見た風景と違うところがあるとすれば、森の外から見ているか、内側から見ているか、という違いくらいだろう。
写真の中の森は彼の記憶のものよりも少しだけ薄暗く、深い緑に覆われ陽光が遮られている様子が見て取れる。
それ以外の木や草の様子はほとんど変わらなかった。

いったいこの災害は何なのか。
ここまで資料を読んだ寺山の額に嫌な汗が流れる。
県境で起きた出来事の真相を知りたいと思い読み進めるが、なぞは深まるばかり。
彼なりにいろいろと原因を考えてみたものの全く答えがわからない。
しかし資料の続きには、そんな謎をますます深めてしまうような内容が書かれてあった。

それは地形変動の内部の調査記録。
自衛隊の調査部隊はGPSなどが使えない中地図を頼りに内部を進んでいったのだが、そのさい地震などによる負傷者の発見も目的としていた。
それは災害救助などを担うこともある自衛隊としては当然のことで、その結果がある程度詳しく記述されている。
その結果報告によると被災地内部では負傷者は発見されず、それ以外の人もまったく確認できなかったと書かれていた。
道路や建物のみならず人すらも消失している状況。
犠牲者が出ていないというのは幸いかもしれないが、だからといって無事であるという保証はない。
巻き込まれた人は本当にいないのか、相変わらず不安と焦りが寺山を襲う。

それに伴い紙をめくる手が震えるものの、文章はまだまだ続いている。
気分を落ち着けるため深呼吸をし、再び資料に目を落とす。
するとそこには奇妙な内容が書かれていた。

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