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山を知らなかった長野県民の話⑧~屋久島・縄文杉トレッキング!~

朝、3時台。スマホの目覚ましアラームが鳴る。
(3:30か3:45だったような…)

ついにこの日がやってきた。

昨夜用意したウエアに黙々と着替える。

モンベルで購入したアミノ酸の粉末を口に含む。登山中だけでなく、登山前にも飲むことによってより疲労軽減効果が期待できるそう。

屋久島にはゲストハウス等の宿泊場所があるエリアがいくつかあるが、私の泊まっている安房エリアが最も縄文杉トレッキングの登山口に近い。

トレッキングツアーの迎えは登山口から遠いエリアから順にピックアップしてもらえる。そのため、この安房エリアが一番遅くまで寝ていられる(それでも4時半頃迎え)。

登山靴の紐を結び、ゲストハウスの玄関を出る。外はまだ真っ暗。街灯の明かりの下に立ち、迎えのバスを待つ。早朝すぎて眠かったが、それでも、もう楽しみで仕方がなかった。気持ちが逸って仕方がなかった。

バスが到着。もう既に人が何人も乗っていた。私が最後の乗客だったと思う。参加客全員が乗車したところで、ツアーガイドさんからツアーの説明があった。

その際に、レインウェアのパンツの方を着用するよう指示があった。レインウェアの上着に比べて、ズボンの方は着脱に時間がかかるため、登山中よりも事前に着ておいた方が楽だからとのこと。「なるほど」とここでも学びがあった。

そして登山口に着くまで30~40分ほどあっただろうか。体力を貯めるため、目を閉じて到着を待つ。

登山口に着くと、トイレを済ませ、朝食を食べる。出発が押さないよう、お弁当を皆で早食いする。夕食を軽めにしたおかげか、なかなかのボリュームだったが美味しく食べることができた。

全員が食べ終わると、ヘッドライトを着用するよう指示がある。実はまともにヘッドライトを使用したのはこの時が初めて。つけ方を間違えており、ガイドさんが正しい装着方法を教えてくれた。

行動開始が5時台だったため、辺りは真っ暗。雨も降っていたため、全員でレインウェアのフードを被りながら、出発前に準備体操を行った。

私は登山をする時はいつも登山口で写真を撮っていた。荒川登山口の看板をいつものように撮影していると、ガイドさんが「撮りますよ~」と私もいれて写真を撮ってくださった。

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屋久島国立公園」の文字が胸アツ。

参加客が一通り写真を撮ると、いよいよ出発となる。

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最初はひたすらトロッコ道を歩く。真っ暗な中をひたすら一列になって進む。前の人を見失わないように付いて行く。

そして、ガイドさんが時々立ち止まって、屋久島や屋久杉、植物などの解説をしてくださる。一人で来ていたら絶対に素通りしていたものについて色々と教えてもらえるので、一層思い出深いものとなった。

手すりのない橋など、暗い道を内心「ひぇ~」と思いながら登っていく。ヘッドライトでのトレッキングが初めてなので内心少しびびっていた。

屋久杉や縄文杉の解説を受けていると、徐々に白んでいく空が見えた。雨雲があったので綺麗な朝日!というわけにはいかなかったが、早朝の山は冷えた空気と静寂と、空の色の移り変わり、様々な独特な要素が重なり合ってとても特別な感じがした。

道中で、屋久杉の年輪を見ることができた。
でかい。
何層もの歴史が積み重なっている。
これを切り出し、運ぶために作られたのが私たちが今歩いているトロッコ道。

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森の奥まで行かなくとも、このトロッコ道だけで充分ジブリっぽいなと思った。すでにトトロいそう。

良い写真が撮れそうなスポットをガイドさんが立ち止まって教えてくれる。ペースメーカーとなってくれつつも、こうして楽しみ方も教えてくださる。やはりプロと歩くのは楽しいなぁと思った。

歩くペースは結構早いなあと感じた。普段街中を歩くスピードは私は速い方だと思っている。混雑した都心の駅を歩く時なんかは特に。
さすがに実際の時速はその時ほどではないと思うけれど、気持ち的にはそれくらいの急ぎ具合のような感じがした。

トロッコ道は距離は長いけれど割と平坦、後半の山道は階段が続いたり岩の上や木の根のある所を歩いたりして時間がかかることが予想された。登山に慣れていない人は特に。
あくまで私の推測だけれど、前半のトロッコ道でなるべく時間を巻いておくためにペースが早かったのではないかと思う。なんとか遅れをとらないように付いていく。

一列で歩いていくが、休憩を挟むたびに並ぶ順番を変えていった。そうすることで、ガイドさんの真後ろにつける人が毎回変わるので、説明を間近で聴いたり質問がしやすくなったりする。

私がガイドさんの真後ろについた時は、ガイドさんがこれまでに登った山の話などをしていただいた。

ガイドさんに一番しんどかった山を訊いた際、東京の雲取山を挙げていらっしゃった。

てっきり日本アルプスの山あたりを挙げると思っていたので意外に思い、詳しく話を聞いてみると、登山を始めて間もない頃に雲取山に日帰りで行こうとしてものすごく無理をする羽目に遭ったと…笑

雲取山は1泊で行くのが通常であるため、日帰りを考えられる時点で次元の違う話だった。さすがすぎる。ガイドさんは、登山を始める前から走ることが得意だったらしい。

ちなみに縄文杉への行きの道中、参加者の一人が「ガイドさんがご自身のペースで縄文杉へ向かったとしたら、今頃どのへんにいると思いますか?」と訊いた。返答は「僕だったら……もう登山口に戻ってますね笑」だった。一般人の倍以上のスピードで山を往く……。さすがすぎる。

やや早いペースになんとか付いて行き、トロッコ道の終点までたどり着く。ここで最後のトイレ休憩。ここから先は山道に入る。カロリーメイトを食べて栄養補給。気合を入れる。

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階段や岩、アップダウンのある道など、いよいよ登山らしくなってきた。事前にガイドさんから、歩幅を小さくし、なるべく段差が小さくなるように足の踏み場を選びながら登ると良いと参加者へ説明があった。
いわゆる”疲れにくい歩き方”であり、丹沢大山の後から私も意識していたことであった(段差の大きな踏み場に無理してよっこらしょと登り続けているとあっという間に疲れる)。

そのおかげか、私以外の参加者は、恐らくほとんど登山の経験がない人たちだったと思うが、息が上がったり多少立ち止まりはしても、大幅な遅れは見られなかった。ガイドさんの雰囲気づくりやペース配分にも気づかないうちに私たちはとても助けられていたのだと思う。

私はというと、旅前のトレーニングが功を奏したのか、来たかった場所に来られたことによってアドレナリンが出まくっていたのか、アミノ酸の効き目が尋常でなかったのかは分からないが、特に行きではあまり疲れを感じなかったw 前の人やガイドさんにぶつかってしまいそうな勢いで歩いており、何度も「落ち着け…」と自分に言い聞かせた。

しばらく歩くと、縄文杉トレッキングの名所の一つ、ウィルソン株に着く。巨大な切り株の中に入り、ある角度から見上げると上に空いている穴がハート型に見えるというものだ。

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敢えて詳しくは書かないが、推しカプのグッズを持参していたため、そのハート型を背景にグッズの撮影。推しカプの永遠の愛を屋久島で祈ってきた(おい)

カップルで行ったら自撮りするなりなんなりすれば良いんじゃないですかね。はい。羨ましくなんてないんだから!!!!私はトレッキングさえ出来ればそれで良いんだから!!!!

……取り乱しました。話を戻します。

お昼ご飯は登山道途中にあるスペースの広い場所で食べた。事前に注文しておいたお弁当を広げる。

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とっても美味しかった。ガイドさんが水筒にお味噌汁を入れてきてくださり、そちらもいただいた。朝5時前から歩き続けてきた体に、このお弁当とお味噌汁は染み渡り過ぎる。ご飯を食べながら辺りを改めて見回すと、普段登っている山では見かけない植物、雰囲気がそこにはあった。

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私たちが昼食を終えると、別のグループが同じ場所で昼食を始める。同じ日にいくつものグループが縄文杉を目指して歩いているのだ。繁忙期になるとそれこそトイレでも縄文杉付近でも渋滞が起きるとのことだったが、私が行ったのは11月だったためか、特に混んでいて苦労するということはなかった。

他のグループのガイドさんが同じChumsの同じザック(私は35リットル、ガイドさんは50リットル)を使っていて少し盛り上がったりはした(こういう山好き同士でなければ出来ない会話を山でするって最高だよね)。

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縄文杉まで近づいてくると、このような看板が出てくる。そう、世界自然遺産のエリアに入るのだ。

大切に保存されてきた美しさ。地球上の守らなければならない生態系。そんな貴重な場所に自分が立ち入って楽しむことができている事実に、気の遠くなるほどの歴史を感じるとともに、感謝の念が生まれた。

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大きな杉。「触ってみていいですよ」とガイドさんから言われたため、直接手で触れてみる。初めて屋久島の杉に触れる。むやみに叩いたりして傷をつけてはならない。

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夫婦杉。推しカプのグッズを取り出そうか迷ったが、同じグループのリアル夫婦を押しのけてまでオタク的撮影をすることはないと思い、撮影は断念。こんな風に元は別々の木々だったのに、繋がってしまう木もあるのだ。

こうしていくつも大きな杉を見たり、「ここの水なら飲めますよ」と言われた水流の水をペットボトルに入れたり、「ここ、もののけ姫の森っぽい景色ですよ」と撮影スポットをガイドさんが教えてくれたり、疲れよりも楽しさが勝る時間を過ごした。



そして、いよいよ縄文杉に辿り着いた!!!!

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自分が縄文杉に辿り着いたことを自覚した瞬間、急に、昔何かのバラエティ番組で縄文杉が紹介されていた時のことを思い出した。世界遺産神秘的行くのは大変、そんなことを言っていて、自分にはまじで全く縁のない場所だと当時思っていた気がする。


ま   さ   か   来   る   と   は

(しかも自らめっちゃ望んで)



私はいつも登山をする時には山頂標や三角点に手でタッチするのがお決まりなので、この時も「縄文杉」と書かれた看板にタッチした。

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「来た…」

来たかった場所に来た。来れた。体力がないことには自信があった自分が。行動力がないことには自信があった自分が。圧倒的インドアだった自分が。こんなところに来た。もう、それだけで充分だった。

縄文杉には申し訳ないくらい、縄文杉を通して”自分自身”を見ていた。

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ガイドさんが縄文杉をバックに写真撮影してくださる。その次に、オタクグッズと縄文杉をパシャリ。北デッキ?と南デッキ?があり、その両方に上がって写真を撮れるだけ撮った。

今思えば、もっとじっくり縄文杉を見ても良かったと思うが、当時はちょっとした興奮状態でそんなことを考える余裕がなかった。

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ガイドさんが、「実は縄文杉だけじゃないんですよ」と指差して教えてくれた方を見るとこんな木が。

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そこかしこに見慣れない木々。その中を毎日行き来するガイドさんたち。道中、その生活リズムを聞いたりして大変だなとも勿論思ったけれど、「羨ましいな」とも思った。こんな自然の中で生きていけるなんて。

「そろそろ行きましょう」とガイドさんから声がかかる。何時間もかけてきた場所なのに、そこにいられる時間はとても短い。
儚いけれど、だからこそ大切にできるものがある。愛おしくなる。




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基本雨が降っていたトレッキングだが、帰りには雨がやみ、晴れ間も見えた。ガイドさんが「あれが太鼓岩です」「あの雲がなければ宮之浦岳が見えるんですよね~」と教えてくださる。もののけ姫の世界観を味わえる白谷雲水峡コースで太鼓岩へ行くことができるため、そちらもまた行ってみたい。


そして、私が屋久島に関心をもつきっかけとなった宮之浦岳

「体力つけて絶対いつか行くよ」と誓った。



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しんどかったのは帰りのトロッコ道。歩行距離が長くなり、足の裏が痛くて仕方なかった。それでも終わらないトロッコ道早歩きはなかなかに「ご、拷問……」だったが、行きの道での思い出を振り返ったり、縄文杉に辿り着いた達成感を噛みしめたり、そうしているうちになんとか登山口へ戻ってきた。

縄文杉トレッキングを歩き切った。できた。できるか不安だったけどできた。自分に、やればできるじゃん賞2019を上げるとしたら間違いなくこの日の自分にあげたい。

同じグループのメンバーで体操をした後、ガイドさんから、宿泊場所に戻ったら足を冷やしてくださいと話があった。「お風呂にじっくり浸かって温まりたいという気持ちもすっごく分かりますが、まずはシャワーの水で冷やしてください」とアドバイス。

今日一日歩きまくって足はボロボロ(炎症を起こしている?)なので、まずは冷やしてほしいと。危なかった、この言葉がなければ一目散に熱い湯に浸かって「最っ高~~~~~~~~!!!」ってやってるとこだった。

バスでゲストハウスまで送迎していただく。名残惜しくてバスを降りたくなかったw ゲストハウスの部屋で一息つくと、レンタルしていた登山用具をお店に返しに行く(返却時間が決まっているので注意!)。

昨晩はスーパーのカップ麺で済ませたが、今日はもう自分を縛るものは何もない。むしろ達成感でご褒美を自分にあげまくりたい気分。私が宿泊していた安房エリアには飲食店が数件ある。思案した結果……

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人生初の 一   人   焼   肉   ! ! ! ! !

美味しかった…。とにかくお腹が空きまくった時のこの焼肉は体に染み過ぎた。幸せすぎた。

ゲストハウスに戻り、ほろよいを飲みながらドクターXを観てもう幸福を詰め込んだような夜だった(当方、ドクターXオタク)

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楽しい時間はあっという間。1か月以上目標にしてきた縄文杉トレッキングは今日で終わり。明日には屋久島を出なければならない。またしても「帰りたくない~~~」と思う私。名残惜しいけど、


また、次の思い出をつくりに、次の場所へ行こう。

この屋久島にもまた来よう。


登山をするたびに、

人生を、この世界を、

楽しんでやろうとガラにもなく思う。



ありがとう、屋久島。

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