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【詩】均衡

ひとが均衡する
立てる位置で
そのひとがぎりぎり
感性を保てる位置で
まったく逆の欲望を
ないまぜにして 
フロートにして

重心が揺らぐ
中身が入れ替わっていく
わたしの中の水が
淀んだ流れを
外に押し出し
わたしの均衡を
じりじりと
追い込んでいく

均衡する群衆は
引金を引いたら 
音よりも速い
空気の破裂に慄き
二度と元の比率では
立てなくなる
不自由な耳や足を押さえながら
新しいバランスをさがす

わたしの均衡が その変化が
ほかの誰かに
分かるはずがない

うすく濁った水を
ぜんぶあなたに差し出して
わたしは
真ん中で立つことをやめる
じぶんの歪みと
無垢さを呪う


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