伊勢神宮への初参り
三重の伊勢神宮に初めて行った。百日はとうに過ぎていたが、子どものお参りも兼ねて。実家の父と母と。
そして、私の連れ合いと。
睦まじく歩いている私たちだが、数年前の父と母は、その人に会うことを拒んだ。結婚の意思を伝えてから、新しい関係の萌芽が見えるまで、1年かかった。
伊勢神宮の広い境内を、母が赤ん坊を抱いて歩く。
愛子さまが参ったんよ、と母が言う。父が、うちの孫もおんなじじゃ、と嬉しそうに言う。
赤ん坊は、いつしか寝入っている。母が、柔らかい髪に自分の頰をよせる。寝ていることを確かめるように。いとおしくてたまらないように。
おかあさん、重くない?ぼくが、と連れ合いが声をかける。ううん、だいじょうぶと、母が笑う。
母の腕にいるのは、私たちの希望。
この子はどんな人生を歩むのか。親をどれほど心配させ、子はどれほど思い通りに育たないことを、わからせてくれるのか。
母はきっと、それも、楽しみにしていたにちがいない。
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