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ぼっち旅2019 〜20.世界で一番カオスなシアター〜

気付いたらもう2021年になってしまった今、、あれ?一昨年の旅の記憶とか忘れちゃったらもったいない、と思ってしっかり記録に残していきたいと改めて決意を固めたのでした。何度も書きますが、人に読んでもらうこと以上に自身の備忘録的意味合いが強いことはご了承ください。

序章 未知の世界に足を踏み入れる

ここからはあなたの感性に従って気の向くままに進みなさい
触れること、仮面を外すこと、声を出すことは禁止されています
ひとりの背中を追い続けるもよし、歩む道を変えてもよし
影の黒子としてこのホテルで起こる事件の目撃者となるのです

※ネタバレが含まれます

さあいきなり解き放たれた仮面姿の私たちの前に、階段が現れます。昇るか降りるか、直感的に人の少なそうな方を選んだ私は階段を駆け上がります。現代の東京を生きるKikoにとって、階段ダッシュは高校の部活動以来。すると突如途中の階から乱入し、私の3歩先を走る、シルクハットを被った長身の紳士。うん、よくわからないけどとりあえずこの人を追ってみよう。

暗い廊下を猛烈な速さで走る紳士、演技とはいえ少々全速力過ぎない?そう思っているといきなり立ち止まった。あたりを見渡すとライティングもBGMもマンハッタンのど真ん中のビルの中とは皆目思えない、ここはまさしく墓地。とある墓石の前で佇む紳士、懐から何やら包みを取り出し、土の上に撒き始めました。

紳士の厳かな儀式を見守るKiko含め4-5人の黒子たち。演劇で観客が声を発することがないことは一般的ですが、演者まで声を出さないというのはなかなか新鮮な体験。手元の動きを見るために反対側に回り込んだりしても見向きもしない紳士、ほんとに私たちがいないかのように振る舞うことを徹底している。儀式を終え歩き出した紳士。周りの観客の少なさからしてこれは物語の周辺にいるモブキャラなんでしょうか。

せっかくだし他のキャラクターの生き様も見てみたいのと、建物内を散策したいという思いで紳士に無言で別れを告げます。さあ次は誰に着いていこうかな。墓地を抜けると、服を売るお店や文具を売るお店などが立ち並ぶ通りにやってきました。セットのクオリティに感心していると、奥の通路を駆け抜ける十数名の群衆。人気キャラクターなんでしょうか。

さらに奥に進んでいくKikoさん、地理感覚は強いと自負していたつもりだけど、暗くて道が多い、もちろん標識みたいな親切なものもないので、自分の居場所が掴めない、そもそも窓もない箱なので地下にいるのか、地上にいるのかもわからなくなり、どっぷりと物語の世界に浸かっていく。階段を降りていると人だかりにぶつかる、やけに黒子も多いなあと思っていると、2人の屈強な男が別の男を布で包んで運んできて、それに1人の老婆が連れ添っているのが目に入る。登場人物が4名もいるのはもう重大イベントと思って様子を伺いましょう。私はこの老婆をKate、担がれている男をBobと呼ぶことにする。

セリフがないのでこれまでの流れはさっぱりわからない、もちろん登場人物の名前もわからないので勝手に名前をつけているが、何やらBobが死んでしまったのか、Kateは嘆いているようだ。気付いたら男たちは走り去ってしまい、さらにKateもどこかに行ってしまった。それにつられて追いかける黒子たち。じっと動かず床に寝かされたBobが動く気配を見せないのを見ると、他の黒子たちも私とBobを置いて去っていきました。

第1章 KikoとBobの冒険

微動だにせず横たわるBobを見つめる私、Kiko。さすがにずっと寝っ転がっているわけにもいかないだろうと思った私はもう少しBobのそばにいてあげることにしました。永遠とも思えるような、おそらく5分程度の時間を共にしたのち、すっと起き上がるBobは何かびっくりしたような表をしながら息を吹き返したのです。果たして私も去ってしまって誰も見ていない状況でも同じような演技をするのだろうかと考えていると、Bobはルンルンと走り出したのです。さあ追いかけるとしましょう。

そこからBobは礼拝所で祈ったり、自分の姿を鏡で見てニヤニヤしたり、街を駆け回ったりと、正直何をしているかわからないのですが、なんだか面白いので追っかけをしていました。ビジュアルも地味なおじさんなので、あまり黒子たちも集まってこず、なんだかんだ二人だけの時間をだいぶ過ごしてしまった。一回も目があったことはないけど、この東洋人の私が着いてくるのをどのように見ているんだろう。とにかく動きが細かくしっくりくるので、その演技という挙動に引き込まれる私、セリフがないのはこれはこれで想像力を掻き立てられて本当に面白い。よくこんな舞台を考えた人がいたものだと感心させられます。

お屋敷の部屋にやってきた私たち。とそこにさっきBobを抱えてきた屈強な男たちが現れます。タイミングが完璧すぎて時計も身に付けていないのにどうやって把握してるんだとという疑問が湧き上がる。そしてBobが生きていたことにも驚くそぶりがないので、死んでしまったという私の読みは外れていたのかもしれません。なんだか闘うような雰囲気を醸し出した男たちとBobでしたが、なんと男たちは召使いだったようで、Bobに綺麗なスーツを着せたり、髪を整えたりしはじめたのでした。ほんとにストーリーがわからないとフラストレーションを感じる間も無く、次のシーンに移り変わります。

着飾ったBobは大広間のような場所にやってきました。そこに現れたのはなんとKateだったのです。Bobを見て歓喜する老婆Kate、なんと広間でBobの手を取り踊り始めたのです。黒子たちも集まってきて、ダンスパーティーの始まり始まり。よかったね、BobとKate、再開できて。間近で踊る二人を見てなんだかほっこりした気持ちになっていたKikoさん、そんな私に手招きをする影が。その主はなんとBob。これは私の妄想ではないのですが、なぜかあのBobが踊りの合間に私を呼んでいたのです。キョロキョロあたりを見回すも手の先には私しかいません。覚悟を決めてゆっくりとBobの方に歩み寄るKiko。するとBobは周りで群衆をなす黒子たちに聞こえない小声で、私の耳にささやいてきたのでした。気の動転しそうな私の耳に入ってきたのは、かろうじて"God" "Temple"のようなフレーズたちでした。何かの台詞か暗号か、と考えているとBobはまた私が透明人間かのように振る舞い始めたのです。サプライズにドギマギするKikoを置いてBobは走り去っていきました。

第2章 その後の物語

Bobと別れたKikoさん、少し歩き回ることにしました。やっぱりセットの完璧さには感心させられます。例えば夢の国のアトラクションの内装(タワー・オブ・テラーとかホーンテッドマンションとか)もなかなかの出来ではありますが、比にならないクオリティーです。ここの設計をする担当の仕事、楽しそうで夢のある仕事だなあなんで現実に引き戻されそうになる私の前を通り過ぎる黒子の群衆、ちょっと着いて行ってみましょうか。

先程Bobたちが踊っていたホールには煌びやかな衣装に身を包む登場人物たち(と大勢の群衆)が集まっていました。ダンスパーティーは何かクライマックス感を匂わせていますが、ここで終わりでしょうか。ダンスを終えた登場人物たち(その中にはBobもいますが)は長机に横並びに着席しました。いきなり赤い照明と怪しいBGMがかかり、なぜか席上でスローモーションで動きながら、互いに激昂する表情を見せる登場人物たち。狂気を感じるその姿に見入っていると、血塗れの男が乱入し、真ん中に座っていた別の男が上から吊るされ、暗転。衝撃的な光景を見せられなかなか処理しきれずにいると、気付いたら登場人物たちはいなくなっており、穏やかな音楽がかかるとともに集まっていた黒子の群衆たちも散っていきます。これで終わりかな。

改めてうろうろして時が経ちますが、何も起きません。そこから私が気づくまでに時間はそこまでかかりませんでした、そうです、物語のページが1枚目に戻ったことに。

あるときはエキゾチックなお姉さんを追いかけて店の中に黒子5名ほどと侵入(私たちが入った後に入ってきた扉は鍵がかかった)した後、私の隣の黒子さんがそのお姉さんに導かれて奥の扉に消えて行ったり。あるときは色気のあるお姉さんを追いかけていたら、バスタブの中で一糸纏わぬ姿で立ち上がったあと、周りにいた黒子たちにバスローブを着させる姿を目の当たりにしたり、となんとも刺激的な空間を駆け抜けたKikoさん。走り回ったり考えたりで疲れているはずがアドレナリンが出ているのか、最後まで息を切らさず満喫することができました。結果3回物語を辿ったのですが、話の真意は掴めず、またここに来ようと決意を固めたのでした。

終章 夜のマンハッタンを歩く

仮面を配られたBarの部屋に戻ってきました。仮面を3時間もつけていたので鼻には溜まった汗の痕。足もパンパン。言い表せない達成感のようなものを見にまとい、出口に向かうKiko、途中でパンフレットを見つけて迷わず購入。20ドルくらいしましたが、意外と買っている人いなかったかもしれません。演目の終了後にBarで飲めるイベントもあるようですが、妹もホテルで待っているかもしれませんし(というよりは単純にビビって)帰ることとしましょう。

胸がいっぱいになっている私は、本当は少し一人で歩くのは怖いマンハッタンの夜もルンルンで歩きます。昼間に通った道のりだったこともあって道にも迷わず無事駅に到着。深夜の地下鉄も治安がいいなんて安心な街ですね。

夕食を食べていなかったので、怖いもの無しのKikoさんは道端の屋台で売られているハラールフードに手を出してしまったのです。味は意外と美味しい(少なくともワシントンD.C.のごはんよりも断然)のですが、付属しているHOT sauceが辛いこと。それでもニューヨークの2日目の夜は満足感いっぱいで床に着きましたとさ。

ちなみに妹が帰ってきたのは深夜1時過ぎ。妹よ、アメリカまで来て夜遊びはほどほどにね。

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