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「あなたの印象」円グラフを部下に描いてもらう
前回は、人を育てるフィードバックをするためには、相手にどんな視線を向けているかが大切、というお話しでした。相手の靴を履くことで、本人の目に映る景色を想像できていますか?
今回は、フィードバックをするためのもう一つの前提である、信頼関係について書こうと思います。ちなみに、育てられる側(部下)が、育てる側(上司)に対して抱く信頼関係です。人を育てるうえで大切な、育てられる側(部下)が育てる側(上司)に対して抱く信頼関係を、育てる側(上司)がどうやって作っていくか、というお話しです。
信用と信頼
ところで、みなさんは「信用」と「信頼」という似通った言葉を使い分けているでしょうか?私もあまり意識していなかったので、この記事を読んでなるほどと思ったのです。
信用とは「相手への理性的な判断」であり、信頼とは「相手との感情的な結びつき」だと。
『信頼関係の創り方、育て方』
信用関係という言い方はあまり耳にしません。今回のテーマも、信頼関係です。つまり、理性ではなく、感情的な結びつき。感情的なものなので、再現性をもたせるのが難しい。感じる本人(育てられる側)が感じてしまえば「ある」し、感じなければ「ない」。そこに理屈や方法論があるとは限らないので、いざ自分(育てる側)で実践しようとしたときに難しさがあります。
そこで、信頼関係には4つの「感じ方のパターン」があることを紹介しようと思います。「こうすれば絶対に大丈夫」ということは言えないけれども、手探りのしどころくらいにはなると思います。本人の目に映る景色を想像して、4つの信頼関係のパターンがその景色のなかに映り込んでいるかを考えてみてください。
1つ目の信頼:私のことを気にかけてくれている
信頼関係としてもっとも基本的なものが、「私のことを気にかけてくれている」という感覚です。「『そこにあなたがいる』ことを、私は認識していますよ」という、存在に対する無条件の承認です。
「『そこにあなたがいる』ことくらい、認識してるよ、当たり前だろう」と感じる人もいると思います。では、相手も同じように、同じ程度に、感じているでしょうか。こう自問自答するのが、「相手の靴を履く」ということにつながります。
◆パソコンの作業中に話しかけられて、顔はディスプレイに向けたまま、手はキーを叩きながら、「ん?なに?」
◆朝出社してから挨拶を交わしていないので、相手に対するその日の第一声が、「そういえば、あの件どうなった?」
オフィスワークに典型的な、「『そこにあなたがいる』ことを認識していない」風景です。
コミュニケーションの原理原則は、「質の前に、まずは量」です。この原理原則を実感してもらうために、私はよく「本人(部下)があなた(上司)に感じている印象を、円グラフで描いてみてください」と育てる側(上司)に言ったりします。「『そこにあなたがいる』ことを認識していない」関係性だと、こんな円グラフになります。
気をつけてほしいのは、「仕事上の指摘/注意」の絶対量は問題ではない、ということです。本人とあなたの間で交わされるコミュニケーションのなかでの割合の問題だということです。上のような印象円グラフを抱いている部下が見ている景色はこんな感じです。
質問したいことがあって、向こうに座っている上司に目を向けたが、PCに向かって難しそうな顔をしている。
「いま忙しそうだし、あとで聞こうかな。。。」
そうこうしているうちに、上司が席を立ってこっちに向かって歩いてきた。
目があった。
「あのさ〜」
「はい、すいません!なんでしょうか。。。」
上司とのコミュニケーションのほとんどが「話しかけづらい」と「怒られる」という場面で占められているので、部下は上司とのコミュニケーションに身構えざるをえません。話しかけられたときの第一声が「すいません」ですしね。こうなってしまっては、上司の言葉なんて耳に入ってきません。目が合うやいなや、心のシャッターを下ろしてしまいます。
心のシャッターを下ろしてしまったことを端的に表すのが、「あの人は私のことが嫌いなんだ、気に食わないんだ」という本人からの言葉。あなたは「仕事の中身」について指摘/注意してるつもりでも、本人は「私という存在」に向けて矢を放たれていると捉えてしまっています。だって、本人があなたと向かい合ったときの時間のほとんどが指摘/注意で占められているのですから。「私のことを気にかけてくれている」というのは、「あの人からの指摘/注意というのは、『仕事の中身』に対するものであって、『私という存在』に対するものではない。だから、『私という存在』は無条件に認められている」と言い換えられるかもしれません。
この円グラフを健全なものにするために必要なのは、「仕事上の指摘/注意」を減らすことではありません。それ以外を増やす、ということです。
「褒めて育てるのと、叱って育てるの、どっちがいいんですか?」
これも本当によく聞かれる質問です。
私はいつも、「両方やってください」と答えます。
『テレパシーで人を育てようとしていませんか?』
褒めるも叱るも両方やったほうが良い理由のひとつが、コミュニケーションの量が増えて、印象円グラフのバランスが改善につながるからです。
「褒める」のハードルが高いのであれば、「挨拶」「雑談」を愚直にやってみてください。
挨拶
挨拶、あえて言うことはないですよね。新人に挨拶を求めるのと同じテンションで、自分から挨拶してください。Web会議が多い今であれば、相手がつないできて顔が映ったときに、「おはよう」「おつかれさま」。リアルな職場よりも、よっぽどタイミングがつかみやすいのではないでしょうか。
欧州(IMDやFinland企業)のWebinarやワークショップ型研修に幾度となく参加しているが、参加者が入った時に顔を出して主催者に“Hi”“Hello”と声をかける人が多くいる。
(中略)
終り出口も同じだ。欧米だと、“Thank you”と多くの人が、その時だけミュートを外して声掛けしたり、チャットに”Thank you”, “it was fun”と書き込んだりしてから、退出する。
(中略)
顕著に表れるのは大学の授業だ。日本人学生向けの日本語の授業では、ほとんどの学生が黙って退出していく。それに対して、留学生や帰国子女の多い英語の授業では、殆どの学生が“Thank you”, “Thank you, Professor”, “see you next week”と声をかけて退出する。これは気分が良い!(笑) 因みに、この違いはリアルな教室授業でも見られる傾向だ。
『Three months Online生活から見えてきたこと ~オンライン御作法編~』
雑談
雑談の効能は、いまどれくらい市民権を得ているでしょうか。
リモートワークになって雑談が減ったという嘆きはいろいろなところから聞こえてきます。裏を返すと、多くの人が雑談の効能に気づいたとも言えます。いままで気づかなかったけど、必要なものだったわけだから、仕組みとしてそれを維持していくべきでしょう。
健全な印象円グラフ
仕事上の指摘/注意の量はそのままに、それ以外のやり取りを増やしていくと、あなたの印象円グラフはこんな感じに変わるかもしれません。
こうなってくると、あなたに話しかけられたからといって、それは必ずしも指摘/注意とは言えません。「いつも普通に接してくれているあの人が、今回は指摘/注意をしている」と本人の目に映ることになります。「あの人からの指摘/注意というのは、『仕事の中身』に対するものであって、『私という存在』に対するものではない。だから、『私という存在』は無条件に認められている」という状態です。
汚れた水の源泉はどこか。〈パイプのあちら(相手)〉から汚れた水が流れてくるように思いがちだけど、実はパイプの向こう側で同じように感じてる人がいるかもしれない。
『コミュニケーションは、誰のもの?』
人を育てるために、信頼関係は必須。では、信頼関係をあなたの側からつくっていくための、最初の一歩にはなにがあるのでしょう。「私のことを気にかけてくれている」という本人の声を目標に、日々のコミュニケーションから始めてみてほしいと思います。
次回は、2つ目の信頼関係のパターンである、「私のことをわかってくれている」を紹介しようと思います。
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