見出し画像

新たな広域ローカルの可能性 FUKAYA MORNING CARNIVAL|Memo

2022年11月22日・23日、埼玉県の深谷・花園で開催されたFUKAYA MORNING CARNIVALに行ってきました。先月オープンしたふかや花園プレミアム・アウトレットの隣にある深谷テラスパークの駐車場・芝生エリアに設置されたテントやキャンピングカーに泊まり、翌朝早くにローカル野菜を使った朝食を楽しみながら日の出を迎えたよ、というのが表層的な説明になるのですが、そこで起きていたことはもう少し重層的で、偶発的で、戦略的な味わい深いことだったように思います。本企画を実施する側の目線は「チーム県北(なかのひと)」のNOTEに詳しいですが、私は参加した側からの目線で少しまとめておきます。

個人的には、11/19所沢などとあわせて、エリアの文脈と構造を読み解き良質なローカルコンテンツを掘り出し繋げることの重要性と可能性をあらためて認識する機会となりました。

最高におもしろい朝は深谷にある。
全国でも有数の農畜産業が活発な埼玉県深谷市。その朝はとても早く、日の出前の早い時間に目覚め、その日一日が始まります。夕方から、早朝から、深谷らしさとすべての楽しさを集めてギュッと詰め込んだ、深谷テラスパーク発の新しいイベント「深谷モーニングカーニバル」を開催します。

https://fukaya-terracepark.jp/news/288

開催場所は大型開発プロジェクトが進む深谷市花園

FUKAYA MORNING CARNIVALが開催されたのは、先月オープンしたふかや花園プレミアム・アウトレットに隣接する公園や広場です。

関越自動車道・花園インターチェンジに近接するこの一帯は「花園IC拠点整備プロジェクト」として土地区画整理事業が実施され、2018年10月秩父鉄道「ふかや花園駅」(深谷市請願駅)、2022年5月深谷市「深谷テラスパーク」(日比谷花壇ほか数社による指定管理)・深谷ベジタブルコミュニケーション「深谷テラス ヤサイな仲間たちファーム」(新規事業プラン社内公募制度により生まれたキューピー子会社の運営)、同年10月三菱地所・サイモン「ふかや花園プレミアム・アウトレットモール」(第三期まで開業すると国内最大規模)と、次々に新施設がオープン。

まだまだ全貌も将来も分からない新しい動きながら、周辺エリアの期待値は高まっています。

深谷と寄居の間に位置し重なり合う旧花園町が舞台

花園とは地名で、深谷市と合併した旧花園町が由来です。

旧花園町は埼玉県の北部、荒川流域にある町で、秩父鉄道・小前田駅周辺の集積と、関越自動車道・花園ICと接続する国道140号線沿いのロードサイド集積以外は、ほぼ農地が広がります。埼玉県の都市計画的には隣接する寄居町と一体で扱われますが、2006年に深谷市ほか2町と合併し新・深谷市となりました。

深谷市は利根川流域に広がる東京近郊有数の農業地帯で、特に深谷ねぎブランドで知られます。2013年には頭にねぎのツノが生えたイメージキャラクターふっかちゃんが誕生し、いまや深谷市内のいたる所でふっかちゃんの姿を見かけます。

寄居都市計画と深谷行政区域が重なる旧花園町の、広域交通の関越自動車道や国道140号線とローカル交通の秩父鉄道が交差する場所が、今回の舞台となりました(前置きが長いわ)。

アウトレット開業前の下見で感じた会場周辺の印象

さらに長い前置きで恐縮です。実はアウトレットが開業する数日前、小川町在住の両親と車で国道沿いの集客施設とアウトレット周辺を見てまわりました。アウトレットで国道沿いの集客施設に影響が出るのではと言う両親もだいぶ息子に毒されたなと思いつつ、高齢の親に車を出さる息子でごめんなさい。

ひと通り周ってから深谷テラスパークに到着し、パノラマデッキから周辺を眺めると、アウトレットと広がる農地が見えます。目を瞑ると、円形広場や遊具で遊ぶ子どもたちの声とアウトレットのアナウンステストの音が聞こえ、瞼の裏には今日これでもかと目に入ったふっかちゃんの姿が浮かびます。公園の遊具にはネギが刺さり、新駅のロータリーにはネギなど野菜が植えられ、深谷のネギもとい野菜に対する本気度に恐れ入りました。

車を停めたテラスパーク北側の駐車場、その隣には何もない芝生エリアが広がり、何か仕掛けるならここだなという印象を強く持ちました。

最高の朝を迎えることを軸としたイベントコンセプト

深谷テラスパークやその一帯で何らかのイベントが開催されることは耳に入りつつ、しばらくの間はコンテンツや全貌が分からぬままでしたが、徐々に、多くの地元事業者が出店・協賛に名を連ねる大型イベントになっていることや、夕方から翌日昼にかけての時間帯に実施するチャレンジングなものであることなどが伝わってきました。

その名も「FUKAYA MORNING CARNIVAL」。出店やキッチンカー、マルシェ・朝市などの飲食・物販や、各時間帯でのコンサートや夜のシネマ上映などもありつつ、どうやら軸となるのはテントやキャンピングカーの宿泊体験ができる「車中泊フェスタ」と2日目の朝6時からスタートする「朝食グランプリ」らしい。

最近「おいしい朝食はその街に泊まる理由になる」を持論としているので期待大、小川町の仲間からも一緒に行こうとお声がけがあり、11/23の夜から11/24の朝まで深谷で過ごすことを決めました。長すぎる前置きは以上ここまで。

余談:イベント当日、会場に向かうまで

11/22夕方、熊谷駅から秩父鉄道に乗り換えてふかや花園駅へ向かいます。余談ですが、秩父鉄道は、子どもの頃にSLパレオエクスプレスに乗って以来かもしれません。

さて、新駅に到着すれば会場は歩いてすぐのはずが、外を眺める余裕なくメールを打ち返していたためでしょう、なぜか目的地のひとつ手前の駅で下車してしまい、遠くに控えめに光るアウトレットを目指して真っ暗な畑の中を歩きました。畑にはおそらくねぎが植えられているのでしょう、収穫期まっ盛りの香りがマスク越しに強く伝わります。

余談に余談を重ねますが、ようやく先に到着したメンバーとアウトレット内のスタバで合流した時、窓の外にはガリガリ君ソーダ味が青白く光っていました。赤城乳業も深谷市です。さらに余談ですが、アウトレット内のENOTECAで勧められたBELLAVISTA ALMA TERRA 2020がかなり美味しくて、帰りに1本買ってしまいました。

余談は終わって、次からイベントの様子を書こうと思います。

テントとキャンピングカーで世界観が現れた芝生会場

FUKAYA MORNING CARNIVALの会場は大きく3つに分かれ、お目当ての車中泊フェスタは北側の駐車場・芝生エリアでの開催でした。ふかふかの芝生の上には大きめモノポールテントがいくつも張られ、駐車場にはキャンピングカーが並び、その視線の先にアウトレットの灯りが見えるという不思議な風景が出現していました。

仲間が申し込んでくれたのは、テント1張りとハイエース1台。夜から朝までの間に雨が降りはじめ気温も下がるという厳しい予報でしたが、結果的には寒さも思ったほどではなく、雨も翌朝までぎりぎり持ちこたえてくれました。

アウトレット内の店舗やイベント会場の出店でビールやワイン、食事などを買い込み、円形広場へ移動します。焚火が置かれ、音楽も演奏される中、夕食を楽しみました。この会場には各世代が幅広く訪れていた印象です。夜8時からはアニメ映画「セロ弾きのゴーシュ」が上映され、子どもたちが並んで見ていました。

火は自然と人を引き寄せ語り合うことを促す力がある

FUKAYA MORNING CARNIVALの車中泊フェスタ会場。21時からキャンプファイヤーが点火され、静かな大人タイムに。井桁に組まれた薪から高く立ち登る炎や夜空に舞う火の粉を眺めているうち、これを囲むように自然と人が集まり語り合いはじめていました。

今回イベントのキーパーソンや協力者(中にはレジェンド級の方も!)と直接お話できたもの、とても素晴らしい時間でした。

キーパーソンが仲間と意気投合するも何のツテもないところから、一人ずつ地道に声をかけ協力者を得ていき、まるで奇跡のようなつながり方もありながら、ローカルコンテンツやプロダクトを展開する賛同者・参加者を増やしていくというストーリーが、行政が公的資金を投入し大手資本が参加して動いてきた大型開発プロジェクトの片隅の、まだ何の色もついていない芝生広場で展開されるという、とても不思議な場でもありました。

(写真提供・デザイナー安川宏輝氏)
キーパーソン・上田嘉通氏、レジェンド・竪村浩一氏も

地元野菜を使った朝食を楽しみながら迎える日の出

朝6時に目が覚めハイエースの寝袋から外へ出ると、外は日の出前でまだ薄暗く雨雲の重い空。降り始める前に楽しみたいと、朝ごはんグランプリ会場へ。

出店をまわるとどれも地元野菜を使った美味しそうなメニューで、何を食べるか真剣に悩みました。まずは野菜とふんわり卵のスープで、冷えた体を温めます。次に生ハムと野菜のベーグルサンドを。もう少し行けそうだったので、クロワッサンと野菜とその場でつくるスクランブルエッグでシメ。もう食べられません。残念ながらここで雨が降りはじめました。

晴れていたらさらに気持ちの良い朝だったと思いますが、それでも企画の趣旨は十分味わえたと思います。朝早くから、しかも雨天であるにも関わらず、そこそこの人出がありました。

アウトレットの閉店から開店までの間の時間帯に、あえてメインプログラムを持ってくるのもアリかもしれない。そんな新しい風景が生まれたFUKAYA MORNING CARNIVALでした。

付記:にわかビギナーに優しいテント・車中泊体験企画

今回FUKAYA MORNING CARNIVALの車中泊フェスタは、キャンプやアウトドアに興味はあるが自分で準備するとなるとなかなかできないし万一準備不足だったときには怖いと二の足を踏んでしまうにわかビギナーにとても優しい企画だった、と感じます。

それはまさに自分自身のことに他ならないわけですが、電車でも来れてすぐ近くで食材購入できるような安全地帯でライトに体験しつつ、ツールの使い方にも慣れれば、次は実際にキャンプサイトに行ってみようかと心理的ハードルも下がります。

また会場には、キャンプ民泊(インストラクターのサポートを受けキャンプ体験できるNONIWA)、キャンピング用品(ホームセンター・コメリが展開するオリジナルブランドNatural Season)、キャンピングカー(埼玉トヨペットがトイファクトリーとコラボして生まれたGreen Buddyや、東和モータース販売の扱うキャンピングカー)、その他数々の事業者が集まっており、直接聞きたいことを聞き、購入もできる場になっていました。

ビジネスとして成立するほど数がいるかは不透明ながら、きっかけづくりとして有効に感じました、というにわかビギナー体験者の声を付記します。

「広域ローカル」の可能性を感じるイベント

11/22夜から11/23朝までFUKAYA MORNING CARNIVALで体験したことの表層をなぞれば、先月オープンしたふかや花園プレミアム・アウトレットの隣にある深谷テラスパークの駐車場・芝生エリアに設置されたテントやキャンピングカーに泊まり、翌朝早くにローカル野菜を使った朝食を楽しみながら日の出を迎えたよ、ということでした。

ただもう少し目を凝らしてみると、もっと重層的で、偶発的で、戦略的な味わい深いことだったのではないかと思えてきます。
なにかと乱発されるこうしたイベントが主に日中の時間帯に実施される中、夕方から翌日昼にかけての時間帯に実施するというチャレンジングな企画。
行政が公的資金を投入し大手資本が参加して動いてきた大型開発プロジェクトの中心部から少し離れた片隅の、まだ何の色もついていない芝生の広場にも着目して仕掛けたプログラム。
意気投合した数人が地道に動き賛同を得る中で名を連ねた、地域密着過ぎず広域過ぎないエリア感で展開するコンテンツやプロダクトを持つ事業者。
またこうした事業者や周辺地域のキーパーソンたちが、キャンプファイヤーに集まり語り合った静かな大人タイム。

それは「広域ローカル」という新たな可能性を感じさせるものでした。

個人的にも、11/19所沢の社会実験などとあわせて、エリアの文脈と構造を読み解き良質なローカルコンテンツを掘り出し繋げることの重要性と可能性をあらためて認識する機会となりました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?