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同人誌出版で赤字を防ぐには?

同人誌を出して13万円の赤字を出した方の記事を読んだ。

一度でも同人誌とか、そういったものを作ったことがある人なら「あるある」と共感できる内容だと思う。

本を作ってみると、思っていた以上にお金がかかることがわかる。しかも、小ロットで印刷すればするほどコストが高くなり、たくさん刷れば刷るほどコストが安くなる。一般的に書店で並んでいる本は何千冊、何万冊という規模で刷っているから、あれだけの価格で書店に並べられる。

同人誌で、せいぜい10部ぐらいのロットで刷っている人にとっては、この「コスト回収」は死活問題である。



何が困るのかというと、シンプルにどれだけ売れるかがわからない、ということだ。Xやnoteなどをやっていればある程度は読者がいるわけだから読めそうなものだが、なかなか読めない。タダでインターネットで読まれているものと、即売会の場でお金をもらって売れるかどうかはかなり違う。

自分は小説を作って売ったことは一度しかないが、CDなら何回か作ったことがある。作るたびにいつも悩んでいた。何部刷ればいいのか、いくらで売ればいいのか。これは商売の基本であり、お金を投下する以上は最低でも回収しなければならず、なかなかシビアだ。趣味だから出費はあるものと割り切っても、毎回何万円も赤字になると続けるのが難しくなる。

何部刷るかの判断と値決めの部分は本当に難しいので、逆にここでコツを掴むと、ほかのビジネスにも応用できる。僕は大学時代からこういった活動をしていたため、就職活動のときに面接でアピールしてみたところ、なかなか面接官ウケが良かったのを覚えている。

こういうバイトをしたとか、文化祭の実行委員になってどうのこうの、という話をする学生が多いので、面接官の印象にも残ったようだ。小規模とはいえ、商売なのだから、そこでの経験が生きるというのは当然のことかもしれないが。

紹介記事の中で一番シビアだなと思ったのは、事前に投票の形で「買うかどうか」のアンケートをとってみたものの、会場での頒布ではなく通販で実際に購入してくれたのはそのうちの2割程度だった、というところ。

「こういったものがあったら買いますか?」という質問に対して、「買います」と答えることと、「実際に買う」ことのあいだにははてしない距離がある。口だけではなく、実際に財布を出して、現金と交換してもらうのはそれだけすごいことなのだ。

こういう現実を目の当たりにすると、そりゃ電子になんだって傾くよな、と思う。本なら電子書籍、音楽ならストリーミングである。電子のよさは在庫リスクがないことに尽きる。それでいて、わりと普通の値段で販売されているのだから、誰がどう考えても電子のほうが商売としては割りがいい。

ただ、この方は自分のフォロワーが買ってくれることを期待しておらず、「イベントで頒布する」ことを主軸にしているようなので、「会場」が必要なのだろう。基本的には「会場」に集まった特定の趣向をもつ客に販売する、という形式をとっているようだからだ。

お祭りで焼きそばがたくさん売れたとしても、ネットショップで売れるわけではない。「場」が客を呼び、「場」が財布の紐を緩めるのだろう。

「電子書籍よりも紙の本のほうが好き」という人は多いが、そりゃそうだろう、と思う。紙を印刷して製本するということ自体が贅沢なことなのだから、そっちのほうがいいのは当たり前である。

もしこの分野でなんらかの技術革新があるとするなら、自宅で本屋に並んでいるレベルのクオリティの本が短時間・短工数で製本できる機械、ということになるだろうか。

販売部数が小ロットでいいということは、つまり印刷する枚数も少なくていいということなのだから、自宅で作ってしまうのが一番いいのかも。この方向性なら、まだ発展の余地はありそうだ。

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