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近所の謎の空き家……

近所に謎の空き家がある。

空き家そのものは珍しくもなんともないのだが、わりと好みなたたずまいの家なので、どういう状態なのかが気になるのだ。どう見ても空き家なので、売りに出たりしてないのかなと奥さんと前を通りかかるたびに話題にしているのだが、そういうわけでもなさそうである。どうにも腑に落ちない、謎の家なのである。

あきらかに空き家なのだが、家に家具はなく、カーテンなども撤去されている(そのおかげで、家の中の様子が伺える)。みたところ、あきらかに無人である。

しかし、表札もなければ、「売り家」などの張り紙もなく、空き家のまま放置されているようなのである。見た目からして結構古めの家で、おそらく築30年以上は経っていると思われる。そして、その状態のまま、少なくとも一年は放置されているのである。

いろいろ仮説を立ててみたのだが、どれもしっくりこないのが不思議なのだ。

①持ち主が高齢で、施設に入るなどして家を離れたパターン
見た目の築年数からしてこれが一番自然なのだが、家財が全くないのが気になる。もちろん、家財をすべて処分してから家を離れることもあるだろうが、家財は処分したのに家は処分しない、ということなどあるのだろうか?

②持ち主が国内のどこか、または海外に転勤になったパターン
空き家に見えるが、実は一時的に家族が離れているだけで空き家ではない、というやつである。しかし、これも家財が一切合切ない、という点が不自然である。

③実は売り家であるパターン
売っているように見えないが、実は売っているというパターンである。しかし、売り家ならばどこかに「売り家」という張り紙に連絡先ぐらい書かれていそうなものだが。現に、うちの夫婦はわりと気になっているので、連絡先が書いてあれば、値段ぐらいは知りたい程度には興味がある。

④空き家だが、すでに買い手がいる。
これもなかなか信憑性が高いが、一年以上、いまの状態で放置されている点がやはり不自然である。

このように、いくつか仮説は思いつくのだが、どれも不自然な点があり、しっくりこないのである。この記事にオチはなく、真相はわからずじまいなのだが、なんとも。

もしかしたら、近所の少年探偵団などによって「町内7不思議」などにリストアップされているのかもしれないが。しかし、大人の頭で考えても思いつかないので、小学生でもなんともしがたいことではあるだろう。

もちろん、上記の仮説は「不自然である」という理由で却下しているにすぎないので、実はその不自然さを乗り越えた現実が待っているのかもしれない。たとえば、家財が一切ないのは家主がミニマリストだったからとか。あるいは、宗教団体に入れ込んでいて、一切合切を寄付して出家してしまったとか。実は空き家だが、誰かが張り紙を貼られるたびに剥がしているとか。実は誰かが住んでいるとか。などなど。

現実は小説より奇なりという言葉があるが、まさにその言葉通りのことが起きているのかもしれない。

先日祖母が亡くなり、祖母の家も空き家になってしまった。なので、こうした空き家問題はわりと自分の身にも降りかかっている問題ではある。しかし、家財などは一式そのまま残っているので、どうしようもない。

いずれにせよ、真相は謎のままである。

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