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インドに行ったら人生は変わりますか?

インドに行ったら人生が変わる、という話をよく聞く。バックパッカーなどがインドに行き、そこでいろんな体験をして、人生に革命が生じるということだろうか。

そういう意味あいで、インドはバックパッカーにとっては格好の「冒険先」になってるんだろうな、という気もする。「手っ取り早い異世界」というわけだ。でも、タイや韓国などに行くよりは難易度が高く、冒険なのは確かだろう。

意外とインドに行っても何も変わらない、という説もある。僕はあまり変わらないと思っている。とはいえ、行くのに意味がないと言いたいわけではない。行ってみたら行ってみたで、きっと何かしらの発見はあることだろう。旅行というのはそういうものである。

インドには行ったことはないが、お隣のバングラデシュには10回以上行った。もちろん仕事で、である。隣国ではあるものの、もともとはパキスタンとして単一の国だったのが、インド部分が独立し、その後バングラデシュとして独立したという経緯があるので、メンタリティはだいたい同じ人たちである。

最大の違いは、インド人はヒンドゥー教を信仰し、バングラデシュ人はイスラム教を信仰している、という点だろう。インド人は牛を食べない代わりに豚を食べる。バングラデシュ人はイスラム教徒なので、その逆である。しかし、その他の部分はかなり似通っているのでは、と思っている。

インドはいまはアライバル・ビザ(到着空港で発行してもらえるビザ)で行くことができるらしいが、バングラデシュはちゃんとした渡航ビザがないと行くことができないので、渡航難易度としてはインドより若干高いといえるだろう。イスラム過激派がいる、というのも渡航難易度を上げている。



「インドに行って、人生が変わる」というのは、どういう仕組みなのだろうか。要はカルチャーショックを受ける、ということなのだろうか。しかし、バングラデシュとはいえ10回以上行ってみたが、それだけでは別に人生は変わらない。

2019年撮影・ダッカにて

もちろん、現地に行くとびっくりすることはたくさんある。例えば、僕が最初に行った2017年当時は、バングラデシュには信号が2か所ぐらいしかなかった。信号などなく、みんな自由に道路を行きかうのである。当然、大渋滞が起きるので、首都のダッカ(東京23区ぐらいの大きさ)を縦断するのに、6時間とかかかる。

それが、2019年ごろになると、「一方通行」という概念が導入され、劇的に交通渋滞が改善された。それでも、ダッカを縦断するのに4時間ぐらいかかったのだが。

あと、やっぱりイスラム教関連で驚くことが多かった。本当に一日に何回もお祈りをすることとか。ラマダン(断食)期間中は、夜中に食事をとるのだが、深夜2時とか3時になっても往来を人が行きかい、どんちゃん騒ぎをやっているので驚いた。純粋に喧噪がうるさい、というのもある。

でも、だからといって「人生が変わった」とは思えない。そういう世界もあるんだな、と思っただけだ。「人生が変わった」と思った人は、何が変わったのだろう。こういう世界もあるんだ、だからもっと好きに生きていいんだ、と思った、ということだろうか。

環境が変われば常識も変わる。新しく触れた常識に刺激を受けて、考え方が変化することもあるだろう。しかし、考え方が変わったとて、また同じ環境に戻るのであれば、何も変わらないのでは、と思う。考え方に変化が生じたうえで、何か環境を変えるような行動をとるのであればいいのかもしれないが。

外から「観察」していても、別に何かが変わることはないのでは、と思う。自分がその当事者になってみなければ。普段、駅の清掃をしている人のことは、視界に入れていてもほとんど気にすることはないだろう。でも、実際にそういう仕事をしてみると、いままでとは違う視界になり、いろんな発見があるのではないだろうか。

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