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AIネイティブ世代は自分たちより賢いのか?

最近、未成年がどのようにchatGPTと接していくべきか、みたいな議論をネットでよく見かける。どう接していくべきか、というより、どう規制すべきか、みたいな話である。

chatGPTをはじめとする生成AIの進化スピードはすさまじい。特にいまのchatGPT-4などであれば、小中学生の宿題ぐらいなら瞬殺で解いてくれるだろう(大学受験でもいけるかも)。そういったものを使えば一瞬で宿題は終わってしまうはずだ。なので、なんらかの規制が必要だ、という考え方は自然なものである。

なぜか世間では「読書感想文を生成AIに書かせること」を問題視することが多いのだが、それよりも数学や理科、社会などのほうが問題だろう。そのまま流し込んで使えるようなレベルで解答を返してくるからだ。

当然ながら、普通の勉強ではそういったものを使わせないようにする、といった配慮が必要だ。言うまでもないことだが、自分の頭を使わずに宿題をやったとしても、最終的には自分に返ってきてしまうので。

脳を使うことをサボると、ちゃんとやっている子との差がどんどん開いていってしまう。しかし、それは考えてみれば問題集をどう取り組むのかの差と似ているような気もする。数学の問題集をちゃんと自分の頭でイチから解く子もいれば、わからないとすぐに答えを見てしまう子もいて、そういう点ではいまと同じ状況と言えるかも。

むしろ、自分が興味のある分野のことをchatGPTに質問してどんどん知識を吸収していってしまう子の存在のほうが問題? になってくると思う。今でも学校で教えない内容の本などを読んだりして知識を吸収していく子はいるが、一定以上の年齢向けになるとたとえば漢字が読めなくてつまづいてしまう。

chatGPTであれば、全部ひらがなで教えてくれたりもするので、そのハードルを下げることができる。知識に対して貪欲な子とそうでない子の差がますます開いていったりして。

たとえば、中学生が読むには難解な本をchatGPTの力を借りて読みこなしてしまうとか。周りにそういった知識や時間のある大人がいなくても、一人で勝手にどんどん知識を吸収していく、ということはあるかもしれない。

僕は将棋が趣味なので、「AIをどう活用して自分の能力を伸ばすか?」ということについては常日頃考えている。将棋の対局のときに、自分では一切考えずにソフトに指し手を考えさせて対局することも可能だ(これは俗に「ソフト指し」と呼ばれ、将棋においては重大なルール違反。将棋アプリでは、発覚次第永久追放になるケースもある)。

当たり前だが、これをやったとしても、自分では一切考えていないわけだから、将棋は全く強くならない。

では、いったん自分が指した対局の内容をAIに解析させるのはどうか。これはおそらく大多数の人がやっていて、僕もやっている。が、AIに読み込ませることで一応の「解答」を知ることができるのだが、それをただ眺めて「ふーん」と呟くだけでは上達しない。なぜその指し手がいいのか、ほかの手だとどうまずいのか、といったことまでちゃんと考えないと身にならないのだ。

しかし、そうはいってもなかなかそれをやるのは難しく、そう思っていてもできるものではない。そもそも、ソフトの指し手の意味がわからず、なぜこれがいい手なんだ? と困惑してしまうようなものも多い。

明らかに自分が失敗した手を指した場合はそれが失敗だとわかるのだが、「いい手」がどうしていい手なのかは、数手先まで進めてみないとわからないことが多い。どれだけ調べても全くわからないこともある。

なので、AIを活用してはいるものの、いまだにどのように活用するのが正解なのか、というのはわからずじまいである。

生成AIを未成年がどう活用すべきか、という教育の話に戻す。大人なら生成AIをどう活用しようが個々人の勝手だが、教育の場合は失敗するとのちのち本人が苦労することになるから大変だな、と思う。しかし、どういった教育がいいのかについては検証に時間がかかるし、何が要因でそうなったのかの立証も難しい。

僕は一応「ゆとり教育」に片足を突っ込んでいる「ゆとり世代」だが(中学は私立だったので、ゆとり教育のカリキュラムで授業を受けたことはないのだが)、いまになってあの教育は失敗だった、と言われても困る。まあ、公的に供される教育というのは「必要最小限」のもので、究極的には各家庭・個々人で涵養していくべきものなのかもしれないが。

あと20年もしたら「生まれたときから生成AIがある『AIネイティブ世代』」が社会に台頭してくるわけで、どういう社会なんだろうな、と思う。いまの自分たちと比較して、知能が高いのか低いのか。いや、その頃には生成AI自体の性能があがりすぎて、もはや人間がどういう仕事をしているのか、という感じかもしれないが。

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