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「文化的遺伝子」とクリエイターについて

「メタルギア」などのゲーム作品を作ったことで知られる、小島秀夫監督のブックガイド的な本を読んだ。

インタビューやドキュメンタリーなどで本をよく読む人だというのは聞いていたので、一体どういう本を読むのか関心があった。忙しい時でも毎日欠かさず本屋に行き、どういう本が出ているのか、世の中の動向を常に探っているらしい。

この本で紹介されている本は、「ゲームクリエイター・小島秀雄を形作った、フィクション作品」に大きく焦点が当てられている。
 
小島監督のつくるゲームは、テーマが常に「反戦・反核」なのだが、裏腹に、核戦争をテーマにした作品が多い。舞台も、冷戦中のロシアだったり、キューバ危機の頃の中南米(コスタリカ)だったり、政治や軍事色の強い作品が多いので、てっきりノンフィクションばかり読んでいるのかと思ったが、そうでもないらしい。

もちろん、ノンフィクションや資料なども読んで勉強しているとは思うのだが、自分の「文化的遺伝子ミーム」として、フィクションの作品をあげているのが面白かった。それも、SFやサスペンスなどばかりでなく、ヒューマンドラマなどもある。


 
一般的に、クリエイターは、自分が影響を受けたものについて語りたがらない傾向にあると思う。「自分は小説なんて読みません」ということを誇らしげに語る小説家もいる。

明らかに「これの影響を受けてるな」と感じる場合でも、それそのものへの言及は避けることが多い。クリエイターは、独自の世界観を作ることで商売しているわけだから、「元ネタ」が何か判明してしまっては商売あがったり、なのだろう。

もちろん、本当に小説をほとんど読まない小説家もいるのかもしれないが、小説以外の蓄積があるか、若い頃にたくさん読んだストックがあるということなのだろう、と思う。基本的には、クリエイターは「そういった勉強なんてしてないですよ」というのを売りにしているような。

小説や映画、ゲームなど、ストーリー性の高い作品を作る際、重要なのは「ストーリー」だと思われがちなのだけれど、ストーリーの基本的な型はもう出尽くしてしまっているように思う。重要なのは、表面的に見えるストーリーではなくて、その背後にある思想や哲学で、それらを総称すると「文化的遺伝子ミーム」ということになるのかもしれない。


 
おそらく、小島秀夫は「これが元ネタです、自分の遺伝子です」と言い切っても問題ないぐらい、いろんなものを読み、自分の血肉にしているんだろうな、と思う。

本当にオリジナリティがあり、クリエイティブティにあふれる作品を作る人ほど、それが本当にオリジナルであることにこだわらないらしい。
 
自分も、ものをつくる人間であり続けたいけれど、同時に、あらゆるものを吸収しつくす人間でありたいな、と。

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