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「趣味はサウナです」は本当にそうですか?

生きていると、ときどき「趣味はなんですか?」と聞かれることがある。たとえば転職したての頃に自己紹介をしたりすると、自分の趣味を話すことがセットで求められたりする。このとき、どういうことを言おうか、悩む人も多いのではないだろうか。

最近、会社に転職してきた人がいた。「趣味は野球観戦です」と言っていたので、野球好きの人がいろいろと話しかけていたのだが、あんまり盛り上がっている感じがしなかった。

あとで聞いてみたら、じつは無趣味で、野球観戦は適当にその場で思いついたらしい。なるほど、そういうパターンもあるのか。

趣味というのは、つまりお金を稼ぐためにやっていることではなく、完全に自分の嗜好に基づく活動なので、個人のパーソナリティが出やすい。なので執拗に趣味を訊いたりするのは、一種のハラスメントになるのかもしれない。しらんけど。

と考えていくと、みんなどれぐらい趣味の真実を語っているのだろう? いや、まあだいたいは本当のことを言っているのだとは思うが、言っていない人も多いに違いない。

自己紹介でよく語られがちな趣味がある。最近だと、「趣味はサウナです」と言う人がやたらと多い。あとは筋トレ。少し前だと自転車とか。女性だと、カフェ巡り、なんてのもよく聞く。

完全に個人の偏見で申し訳ないのだが、「サウナが趣味」だと言っている人とはあまり深い友達になれそうにないな、と思ってしまう(よく聞く趣味なので、これを読んでいる人の中にもきっといるとは思うが)。それって趣味と呼べるほどの活動なのか? と思ってしまうからだ。

趣味というより、たんなる習慣というか、リラックスするための手段にすぎないじゃないか、と思ってしまうのだ。ありとあらゆるサウナに精通していたり、茶道のように作法を極めたり、禅のように精神の深みに通じていたりするのだろうか。最近はマニアが多いので、そういう領域に行っている人もいるかもしれないけれど、大多数の人はそこまでの情熱でもない気がする。

サウナももちろん作法はあるのだろうし、良し悪しもあるのだろうけど、基本的に運動をしたりするのではなく座っているだけで汗が出てくるのだから、お手軽な活動ではある。まあ、人の個人的な趣味にケチをつけるほど野暮なことはないので、もちろん何も言わないのだが、内心では他に何かないのかな、と思っている。

もちろん趣味にもいろいろな種類があるだろう。自分は、「それがお金儲けにつながるわけではないけれど、自分なりに追求していくもの」が趣味といえるのではないか、と思っている。わかりやすいのは書道とか、柔道とか、「道」という字がついているものである。

サイバーエージェント社長の藤田晋は、若い時は麻雀が趣味だったらしいのだが、有名な雀士である桜井章一氏の道場に通っていた時期があったらしい。そこではとにかく「耐える」ことが要求され、趣味でやっているだけの麻雀でなんでそんなに精神を削られるようなことをしなきゃいけないんだ、と不満に思ったこともあったらしいが、結果それが人間性の鍛錬に繋がり、ビジネスを展開するうえで役に立った、と言っている。

別に役立つからいいというわけではないが、ただ単にストレス解消のための習慣というだけでは趣味とは言い難いのではないか、と自分は思う。もしそうなら、自分個人として何かを追求していくのは仕事(本業)だけ、ということになるのだろうか。

本当はあんまり人に言えない趣味を持っていて、なんとなく無難だから「サウナが趣味です」と言っている人が多いのではと睨んでいる。なので、「趣味はサウナです」の人を見ると、本当の趣味はそれじゃないでしょ? と内心で思ってしまうのだ(本当にサウナが趣味の人もいると思うので、完全に偏見である。しかし、その後の会話でサウナについて話していくと、入れ込み具合は読み取れる)。

岡田斗司夫が動画で言っていたのだが、昔の貴族の趣味は顕微鏡でノミとかダニとかを観察して、それをスケッチすることだったそうだ。

なぜなら、顕微鏡自体が非常に高価で、当時の屋敷一軒分ぐらいの値段がしたので、庶民には手が届かなかったのだという。だから貴族はそれを購入して、微生物などを観察していたのだそうだ。

しかし、そうやって「生物学の研究をする」レベルのものが趣味としては一番高尚なんだろうな、と思う。日本の天皇陛下も代々生物学の研究をされているが、そういった経緯があるらしい。

自分の場合、趣味は作曲だったり、小説執筆だったりするのだが、これをふだん人に言うことはない。もちろんnote執筆もそうだが、会社の人に話したことはない。そういう意味では、「趣味はサウナです」と言いそうな条件を備えているのは、ほかでもなく自分である。言わんけど。詳しくないし。

「趣味はなんですか?」の問いは、自分としても非常に答えにくいものなのだ。

その点、将棋をはじめたのはいいことだなと思っている。これは完全に利益に直結した活動ではないし、それでいて将棋をしたからストレス解消になるというわけでもないし、しかし学べるものはあって、道のようなものだから、いい趣味を見つけたな、と思っている。

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