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シェアハウスで泥棒を疑われ金銭トラブルになった話[解決済]

やあやあどうもどうも。

なんだか物々しいタイトルですよ。全部全部ホントの話。
でもね、紆余曲折を経て全部全部解決したの。頑張ったよ。今回学んだ点もまとめに書きます。

まず前提をば。
私はイギリスのロンドンに2022年、3ヶ月滞在していました。
今回、友達に紹介してもらったシェアハウスに泊まることになりました。このシェアハウスというのは、一軒のお家に他人同士が住むライフスタイルのことです。基本的に一人1つの部屋を持っており、トイレのついているバスルームやリビングルーム、キッチンを全員で共有します。

イギリスの映画、例えば「ノッティングヒルの恋人」を観たことのある方はおわかりかもしれません。主人公の男性が、少し頭のネジの外れたハウスメイトと一緒に住んでいます。私はこの映画を見た昔、ロンドンのハウスシェアの文化を知らず、主人公のハウスメイトが登場した時は「え?この主人公と一緒に住んでる人、誰?居候?」なんて混乱していました。今ならわかる。あれはハウスシェアリングだったのだと。

日本でも最近増えてきていますよね、シェアハウス。
「他人同士が一つ屋根の下で暮らすなんて、トラブルにならないの?」と思われたことでしょう。

はい、トラブります。トラブる時はトラブります。もちろん、トラブらないケースもたくさんありますが、大小関係なく言えばそれなりに何かあるのではないでしょうか。

私の場合、今回は入居から退去直前までずっと泥棒嫌疑をかけられるという災難にあいましたよ。やれやれ。
(ちなみに、以前ロンドンに住んでいた時には、十分理由を説明されないまま家を追い出されるという憂き目にあいましたが、この話はまた後日)

さて、今回泊まったお宅の状況はこんな感じ↓
・南ロンドン
・治安のよいエリア
・4階建ての細長い一軒家
・3人でシェア

ハウスメイトはこんな感じ↓
・家主さんは遠くに住んでいる
・家の管理を任されているイギリス人(バックグラウンドはガーナなので黒人)
・私(日本人)
・ブラジル人(私の後から引っ越してきた。イタリアに以前住んでいたのでイタリア語は話せるが英語はそこまで流暢ではない。虚言癖あり)
・全員女性

さて、私が引っ越した初日はイギリス人(ケニア系)の人が家を案内してくれました。今のところ私たち2人だけ。彼女のこと、仮に「モニカ」と呼ぼうかね。モニカちゃん。私よりちょっと年上くらい。
背が高い黒人で、緑のドレスがとてもよく似合う。家のことを丁寧に説明してくれる。私が足りていない物を快く貸してくれる。他の友人たちにも信頼されているようで、いつも彼女の携帯はピロピロ鳴っている。綺麗好きで、私の話もニコニコ笑顔で聞いてくれる。私に手作りのジェロフ(アフリカのピラフみたいなもの)もくれた。仲良くなれそう。

事件が起きたのは入居3日目。
部屋から出たらモニカが待っていた。何やら目が怖い。パッチンと袋を止めるクリップを両手に持っている。(* 以下クリップと呼ぶ)
「あのね、これは私のクリップだからね、あなたのじゃないから」と開口一番よくわからないことを言われた。
何?
私は日本から袋止めクリップを持ってきていた。IKEAで売っている、5種類の色のセット。それを、台所の自分に割り当てられたキャビネットに入れていた。
暗かったことと、少し離れていたこともあって、よく見えなかったので、両手に持っていたのはもしかしたらよく似た彼女のクリップだったのかもしれない。よくわからなかったのでその時は「わかった」とだけ言ってやり過ごしました。
しかし後日、台所でお昼ごはんを作っていたら彼女が降りてきた。雰囲気が何やらヤバい感じ。
「私のごみ袋がないんだけど」
ゴミ袋?
「ゴミ袋ってどんな?」
「黒い40Lのやつ」
「…見たことないから知らないな」
「ああそう、あとあなたまだ私のクリップ使っているの?」
オオン???
この前言ってたIKEAのクリップのことだなこれは。やっぱり、私のクリップを自分のものだと勘違いしているんだな。

「これは私が日本から持ってきたクリップだよ」
「でも私のものとよく似てる。私のはいろんな色が入っているユニークなものなの」
「私のはIKEAで買ったよ。モニカのもIKEAで買ったやつじゃなくて?」
「覚えてない」
「まあ、必要だっていうならあげるけど」
「あなたのものだっていうなら、いいわ」

ううん、なんだか歯切れの悪い感じというか、嫌疑が晴れたのか晴れていないのか。
まあされどクリップとゴミ袋。大したものではないとタカをくくっていた。

その後も何かと小さなトラブルは続いた。共有で使っていたお鍋の蓋が壊れたらしく「あなたのせいで壊れた、どう弁償してくれるの」と迫られたり(後日50ポンド=8,000円くらいを渡したら「Too late(遅すぎる)」と断られた、いったい何だったのか)、
突然跳ね上がった電気代を「あなたが洗濯機を夜9時前に回したからだ、弁償しろ」と責められたりした。

電気代云々については、この家が契約している電気会社では夜9時から朝の6時まで電気代が3割引きになるというので、洗濯機は夜9時以降に回す事というハウスルールが彼女の頭の中にはあったようだ。(※アパートの場合、近隣住民への騒音になるので、夜9時以降は洗濯機を回してはいけないとしている家も多いので注意)
ロシアのウクライナ侵攻の影響もあり、電気代が3倍4倍にと徐々に上がっていたタイミングだったので、私の入居時期がそれと重なり、私のせいで電気代が跳ね上がったように見えたらしい。

そしてついに彼女の怒りが爆発するときが来た。いつものように昼御飯は何作ろ~とキッチンに降りていくと、彼女が待っていた。
「ねえ、もういい加減にして」
そういらだつ彼女の目は本気で怒っていることを物語っていた。

え、何?何!?

さっきまで「お昼ご飯はお蕎麦にしようか、それとも冷凍のグラタンを解凍しようか」とノホホンと考えていた私の緊張スイッチが一気にONになった。

「あなたが盗んだゴミ袋のことだけど」

あ?この前言ってたあの黒いごみ袋40L?あらやだいつの間にか私が盗んだことになっている。

「No! I didn't steal it (盗んでないよ)!」
間髪入れる自己弁護に走る。このままだとまた家を追い出される羽目になる!と若干慌てていた。

「叫ぶのはやめて頂戴、あなたの声は耳に響くの。大きな声で叫ぶなんて。この前くれたテキストにも、大文字を使っていたわね。大文字は、叫んでいるという意味なの。あなたがassertive(自己主張が強い)ってよくわかったわ」

オオオオオンン?????待って待って。
テキストというのは、LINEみたいなメッセンジャーアプリでやりとりすること。「LINEする」というのを英語では「text」(テキストする)という動詞を使用する。

まあそれはいいとして、ものすごく頭が混乱した。あれ?いつの間にか私の人格否定に走ってない?モニカってそんな人だっけ?っていうか私叫んでたのか…。焦ってたんだなと反省(ここまで0.00005秒)。

西ヨーロッパの文化では、喧嘩して叫ぶ人というのは自己制御能力がない人とみなされるのです。特にイギリスはその傾向が強い気がする。日本と少し似ている。

といことでとりあえず謝った。「ごめん、I did not mean to shout to you(あなたに叫ぶつもりはなかった)。でもこれだけは覚えてほしいんだけど、私は何もunclean(汚いこと)はしていない。当然あなたのものを盗んでいないし、それを隠したりもしていない」

こんなこと、日本で3*年間住んでて一回も言ったことないんだがね。

「OK、あなたは何もuncleanなことはしていないのね。それだけでも聞けて良かった」
モニカはそう言ってくれたものの、それでも彼女の怒りは収まらないようだった。

ああああああああなんかマズい気がする。目が本気だったもん。
黒人の人の怒った表情って、我々アジア人の表情とまたちょっと違うものがあるんだなって気づきました。
とりあえず私は何をしたらいいんだ、どうしたら嫌疑は晴れるのか、彼女とまだ仲良くしたいのにどうしよう、と部屋に帰って悶々とする。そして仕事で使用しているラップトップPCを開く。

「友人と仲直りする方法」

ポチッとな。ラップトップは優秀だ。いつでも私の疑問に答えてくれる…。

ふむふむ。

①こういう時は、たとえ自分が悪くないと感じる状況であっても自己弁護に重きを置いてはいけないらしい。まずは相手への気遣いから。
②口頭だとお互いに感情的になりやすいので、手紙を渡すとよいらしい。
③手紙に気遣いのプレゼントがついているとなおグッド。
④自分から行動する事。相手からの謝罪を待つのはよくない。

なるほどね。善は急げやなんとやら。ということですぐに手紙を書いた。
英語での手紙だ~緊張する~。

"Dear Monica,
first, thank you for expressing what you are thinking to me…(初めに、自分が感じていることを私に教えてくれてありがとう)"

という感じで書き始めてみた。どうよ。

ついでにフランス土産のボンヌママンのマドレーヌもつけちゃう。

モニカに渡すと、彼女はとても喜んでくれた。何度も手紙を読み返してくれたようで、私のスペルミスを見つけて笑っていた。そして「ゴミ袋はそういえば、あなたが来る前からなくなっていた気がする」と言ってくれた。やっと嫌疑が晴れたようだ。良かった。

めでたしめでたし…?

…いやいや、そうは問屋が卸さんよ?

帰国1週間前にまたモメた。今度は電気代の件だ。さきほど前述した、あのロシアのプーさんが引き起こしたエネルギー不足による価格高騰。ニュースが言っている通り、価格が何倍にも跳ね上がっている。私が以前に買っていたバターは100円が500円になった。ガソリンスタンドの洗車の値段も5ポンドが25ポンドになった。私の家の電気代は3~4倍になったそうだ。
そのタイミングで私が入居したものだから、「あなたのせいで家の電気代が高くなった」となってしまったのは前述した通りです。

電気代ってシェアハウスの場合どう決まるの?って思われたのではないでしょうか。
まず、入居時に「この家の共益費は£〇〇〇です」と、金額が決められる。この金額は前月の支払いだったり、直近1年の平均値などで決められるが、計算方法は家主による。
それでテナント(入居者)は家賃と共益費をまとめた金額を毎月払う。
問題は、この電気代が過去の金額から決められていることにありました。

今回、金額が前月から跳ね上がってしまったわけですから、当然「もっと払ってちょうだい」となります。
その場合、入居時に支払ったデポジットから差し引かれます。

今回私は、家に入居する前に、1か月分の家賃をデポジットとして渡していた。日本で言うところの敷金でしょうか。
家を損傷した時、思いがけず電気水道ガスを使用しすぎてしまった時などはこのデポジットから超過分がひかれる仕組み。

じゃあ、家には3人いるんだから、超過分は3等分だよね?

はい、ここでまた問題発生。

私が入居した翌月にブラジル人の女の子が入居してきた。彼女、びっくりするくらいガリガリで目がギョロギョロしている。聞けば、複数のアレルギーと他にもいくつかの病気を持っているそうで苦労しているらしい。
可愛そうに…と私もモニカも同情していた。
だが彼女、実はとんでもない人だった。まず、身元確認の時点で嘘をついていた。しかも入居前にもデポジット(敷金)の支払いを断った。さらに、家賃の減額まで求めたらしい。各自割り当てられているお掃除もちゃんとやっていない模様。

そこでモニカが「契約不履行」を理由に彼女を追い出した。

ということでこのブラジル人の子は「跳ね上がった電気代の超過分」を支払わずに消え失せたのである。

そしてモニカは「電気代が跳ね上がったのはあの日本人のせい」と思い込んでいるのである。つまり、超過電気代は全額私になるのである。

そんなこんなで、日本円にして15万円ほどのデポジットを返してもらえないかもという可能性が浮上した。

いやいやいやいやそんなのおかしいでしょ、ということで今回は他の人にも加勢を依頼し巻き込んだ。さすがにお金の話だからね。

といっても第3者の彼ら彼女らにやれることなどほとんどなく、「電気代超過分はこの日本人のせいという証拠はないが、かといって弁護できる立場でもないので、できることは、私とモニカとの仲が悪くならないようにアドバイスするだけ」という状態になった。

いやでもね、これが良かったんですよ。
1つ助言されたのが「家の中だと閉鎖的な空間なために陰湿な空気になりやすいから、開放的な外で、できるだけ人が多い明るい場所で穏やかに二人だけで話し合ってみたら?」という点でした。
ということで、実践しました。帰国前日に。

結論。

問題全部解決しました。

実はモニカが、たくさんの病気を持っていて、それと戦っていること
電気代については家主に交渉しできるだけ私たちテナントに不利益がない形で収束させたいと考えていること
職場の直属の上司が突然辞職してしまい、仕事がストレスになっていること
など色々話してくれました。

そうだったんだね…。

ついでにお酒もおごってくれた。

ということでそれから1か月以上が経過していますが、モニカとは今も定期的に連絡を取っています。
彼女自身もその後家主と衝突し、その家を出るハメになったそうで…
いやあ、さすがロンドン…。カオスですね。

ということで今回のまとめ!

・シェアハウスは身元確認大事!
・お金の問題が浮上したらできるだけ早急に頼れる人に相談するとよい
・家の中より、明るい屋外の方が良い話し合いができるというのは本当だった
・こちらが不利益を被っても相手への気遣いを忘れずに



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