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三つ子の魂百までも(17)


17

「御免ください。三浦です。いらっしゃいますか?」
とドアを開けると同時に元気な声が聞こえてきた。

出迎えたのは、もちろん、裕美さん。
「いらっしゃい。待ってましたよ。」
と声がはしゃいでいる。

複雑なのは、僕たち三人だ。
特に加藤修の心情を思うと、言葉を絶する。

「あら、お客さん。お邪魔だったかしら?」
と小声であるが、聞こえてきた。

「邪魔な訳無いですよ!」
と空気を読め無い裕美さん。

三人、時が止まってしまったかの様に、動けない。

だが、なんとか自力で動いたのが、直美さん

三浦さんの側に行き、耳元で囁いている。
加藤修は背中を向けているので、三浦さんの表情は見えないが、
僕は、三浦さんと対面している。

三浦さんは、意を決したかの様に、こちらに来た。

加藤修は立ち上がり帰ろうとしたが、三浦さんは加藤修を制した。

そして、三浦さんは、

「前回の事で、加藤さんの気持ちも知らず、加藤さんを傷つけてしまった事をお許しください」
と丁寧に、加藤修に詫びた。

(三浦さんは、良い人だ。)と、僕は想った。
おそらく、加藤修も同じ事を想っているであろう。

「いえ、こちらこそ、貴女にご迷惑を掛けました」
と言う加藤修の言葉が若干であるが、震えていた。

「こちらに、掛けませんか?」
と三浦さんを僕の隣に座らせ、加藤修と対面で対話させる様に仕向けた。
「お互いの誤解がとれて良かったですね」
と僕は、二人に言い、三浦さんに向かって

「加藤さんは、本当に反省しています。片想いする男の気持ち分かってあげて下さい。」
と、加藤修に代わり、僕が三浦さんに伝えた。

三浦さんは少し、はにかんだ笑顔を見せた。

「有難うございます。こんな私を想って頂いて。」

と言ったが、加藤修の顔を見るのでは無く、何故か僕を観て言ってきた。
僕は、同じ様な顔なので、どちらでも良いのかと思っていた。
その時までは。

加藤修は下を向いている。何を考えているのだろうか?
三浦さんを見る事に、ためらいがあるみたいで、
俯いている。
僕と同じで、シャイな人なのだ、と実感した。

僕は加藤修の三浦さんの事を想う恋心を、応援したくなった。
(加藤君、この恋を成就させてあげるよ)と心で声援を送っていた。

またもや、こちらに裕美さんがやって来た。
デリカシーの無い裕美さんは、三浦さんに加藤修の横に座ることを勧め、裕美さんは、僕の横に座った。

でも、この行動はクリーンヒットかも知れない。
加藤修は嬉しそうで、下を向いていても、そのオーラが伝わってくる。

「よっちゃん、この二人に似てるでしょ。顔だけ見たらどっちがどっちか判らないでしょ。身体つきが違うだけで、顔だけなら判別出来ないでしょ?」

と、裕美さんらしい発言だった。
(裕美さんは、三浦さんの事をよっちゃんと、最近呼ぶ様になったみたいだ)

三浦さんは答えに窮していたが、顔を縦に動かし、

「本当によく似ていらっしゃいますね。」と小さな声ながら、
はっきりと言った。

「でしょ!不思議でしょ。双子みたいに似てるでしょ」

僕たち二人は、しばらくの間、何も言葉を発する事が出来なかった。
だが、加藤修は決断したかの様に、顔をあげ男らしく言い切った。

「今度、時間がある時に、杉田さんのご両親に会い、真相を確かめたいと想っています。いいでしょう?杉田さん。お願いします。」

と、今までとは違った、男らしい加藤さんだった。

「私は、研究者です。疑問点は解決したい。」
と更に力強い発言であった。

僕は、加藤さんに
「私は研究者ではありませんが、私も疑問点は解消したいです!」
と、立ち上がり握手を求めた。
加藤さんも立ち上がり、その手を握った。
目と目を交わす二人。同じ顔の二人。
異様な光景に見えるかも知れない。

「ところで、コーちゃんの誕生日はいつなの?」
と、素直な疑問を裕美さんは聞いてきた。

僕は、立ったまま、

「僕の誕生日は、平成8年の99日です。」

加藤さんは驚いている。
座っている三浦美乃さんも驚いている。

「誕生日、同じです」と、同時に二人の声がした。

同じ誕生日の人は、よく聞く話だが、同じ生年月日の人が、
此の場所に三人居合せるのは、珍しい事では無いかと想った。

加藤さんとの双子の確率はより高まった感じするが、
三浦さんと同じ生年月日だったのは、ビックリである。
しかしそれは、偶然であろう。
私達が三つ子とは思えない。

楽しいお喋りは続いたのですが、ほとんど、裕美さんの一人お喋りで加藤さんは、頷くだけ、美乃さんは微笑んで、僕は裕美さんの言葉に内心はビクビクしながら、聞いていました。

その話の内容は、割愛させて頂きます。









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この小説、これが最後の投稿です!
だと、思います。

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