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三つ子の魂百までも(番外編)14


14

事務所に着いた後も、裕美は熟慮していた。
時刻は、まだ16時前である。
叔父の伊東は、浮気の調査に出掛け、直美は弁護士との打ち合わせみたいだ。
浮気の調査は、離婚を前提にして捜査するのは多くの証拠が必要となる為、時間が掛かる。

「公ちゃん、こっちに来て!」
と、命令口調で呼んだ。
「何でしょうか?」と、直立不動の公一。

「此処に座りなさい!」椅子を差し出す裕美。
裕美の真剣な眼差しが
公一に、裕美のオーラを感じさせている。
裕美の物凄いエネルギーの波動が、公一に伝わったみたいだ。

「いい、私の言葉を真剣に聴くのよ。
今度の土曜日が、私達に取っての真剣勝負よ。
これに負けたら、悪霊が公ちゃんに取り憑くからね。
覚悟を持って臨むのよ」

と、とんでも無い事を告げる裕美である。いつもなら、ふざけたボケのツッコミを入れるのであるが、今日の裕美は違った。
ふざけたボケは入れる事もできない。

「取り憑くって、何ですか?」
と、公一の言葉が、泳いでいる。

裕美は、少し間を置き言った。

「ポルターガイストを起す様な霊は、何らかのメッセージを発信しているのよ。普通の霊とは違うの、解る?」

「解らないです、・・・。よく観るホラー映画みたいな事が起きるのですか?・・・」
と、公一の言葉が段々と小さく弱々しく怯えている。

「そうね。起こるかも知れないわ。でも・・・」

「でも・・・・って、後の言葉は何ですか?」
と、公一の言葉は、少し泣き声。

裕美は、考えているのか、それとも、もったいぶっているのか?
次の言葉を発してはくれない。

気になる公一は、さらに聞いた。泣き声で。
「なんなんですか?早く言って下さいよ。」

「まあ、その時解るでしょ。私が居るから大丈夫よ」
と、裕美の声が急に軽くなった。
そして、表情も明るい。不安がる公一を見る事が出来て裕美は満足の様子だ。
……一体、なんなんだ!……訝りながら
公一は自分のデスクに戻って行った。

「私が本当の事を言ったら、公ちゃんが怖がって部屋に行くのを嫌がるから言わないのよ」
と、公一の背中に声を掛ける裕美であるが、小声であるため
公一には届いていない

そして、運命のその土曜日がやってきた・・・。

https://note.com/yagami12345/n/naf9b665cab87

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