Photo by ayakoailla ある夏の夜の出来事(7) 2 ボーン 2023年9月3日 11:17 7俺は、不思議な女に出会った。いつもの店のバーのカウンターに一人の女がウイスキーをロックにして飲んでいる。……酒に強い女だ……と、想いつつ俺は一つ座席を空けて女の横に座るバーテンダーがいつもの様に俺のキープしたブランディーをグラスに入れる。今日は俺とこの女以外の客は居ないこのバーは広くは無いが、客は十人ぐらいは入ることのができる。カウンターは5席有り、テーブル席が席が設けられている。落ち着いた雰囲気は、仕事で疲れた身体を癒してくれる最高の場所である。キャバクラとは違い女性の数は二人だが、精錬された大人の女性で会話も楽しめる。殆どが男性客なのだが、カップルで此処に訪れる人もある。女一人で飲んでいるのは、初めての光景であった。女性一人で飲んでいる時は、こちらから声を掛けるのは礼儀であろう。「お嬢さん、見かけない顔ですが、初めてですか?」と、囁く様に言ってみた不意に言葉をかけられてビックリしたのか、彼女は私の顔を強い眼差しで見つめてくる。相当な美人だ。女優にしても良いくらいの美人である。俺好みの知性に溢れる女。瞬間にして俺の心を鷲掴みにする。大きな期待が広がる。「いらっしゃい。今日は遅いのですね」と、店のママさんが声を掛けてくれた。「そうなんだ。仕事でトラブって嫌になるよ!此処で飲んでから家で寝るよ」と、ママさんと話してはいるが、気になるのは、彼女の事だ。ママさんは、おつまみのお菓子を私に渡してくれる。ママさんは、歳の頃は50歳手前ぐらいだが、落ち着いた大人の魅力は健在で長年この店を任されている。もう一人の女性は三十代でこの人も美人だ。だが、今日は居ないみたいだ。気になる彼女は、無言のままウイスキーを飲んでいる。瞳を伏せ、静かに飲む姿は失恋を癒しているかの様だ。……この様な美人でも失恋する事が有るのか?……と、想いつつ、俺はブラディーを飲み干す。「ウイスキーがお好きなんですか?ブラディーは如何ですか?」と、俺は声を掛けてみる。彼女は怪訝そうに、俺をみたが、少し微笑みで見せてくれた。「ブラディーも好きです。と言うか洋酒は好きです。日本酒は駄目ですが」と、小声で囁く様に呟いた。何とも可愛い仕草が俺の瞳に入る。「では、一杯お飲みください。私奢りで」俺はバーテンダーにブラディーを女性に差し出す様に伝えた。女性は嬉しいそうに、ブラディーを見つめ私に笑顔を返す。俺は席を一つ詰め、彼女の隣に座った。彼女はそれを拒む事は無い。良い雰囲気の中、会話が弾んで行く。彼女は酒が強いみたいで、ブラディーを何杯飲んでも酔いはしないみたいだ。俺のキープしたブラディーが空になる。俺は酔い潰れて寝てしまった。気がつくと、俺は一人カウンターで寝ていた。女性はすでに帰ったとの事。「広瀬さん、女の人を口説こうと思って、お酒を飲ましても、あっちの方が断然強いよ。先に酔い潰れるんだもの」と、ママさんから、少し嘲笑気味に言われる。恥ずかしい想いと、残念な想いが交錯する中、時計を見ると時刻は午前3:00を、過ぎていた。「あの女性は、初めての客ですか?」「そうね、初めての人ね。綺麗な人でしたね。でも、少し翳りがあるわね。気を付けてね。あの女は怖いかもよ」と、冗談めいたように明るくママさんは言った。その言葉を俺は軽く受け流して聞いていた。…もう一度、彼女に会いたい!…と、強く願う俺だった。俺は、最近妻と離婚したばかり。四十代の男盛りは、新たな女を求めても仕方が無い。俺の名前は、広瀬賢治。俺はバーテンダーに「あの女が来たら必ず電話をしてくれ」と、頼んでおいた。だが、彼女はその店に姿を現す事は無かった。https://note.com/yagami12345/n/n157de60b98b0 ダウンロード copy #女性 #ホラー #バーテンダー #カウンター #売れないKindle作家 #売らないkindle作家 #売れてるkindle作家 #猛烈熱女 #ブラディー 2 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート