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(続)三つ子の魂百までも23




「私達は、前回も申し上げましたが矢部道子さんという女性を捜査しています。その矢部さんが最後にあった人物が、新美さんと言うことまで、掴んだのですが、残念な事に新美さんが亡くなってしまった。矢部さんの足取りが新美さんの所で止まっていると言う事は、新美さんと矢部さんの関係があるのでは?という気持ちになっているのです。この前、新美さんの事を、貴方からお聞きし改めてもう一度聞かせていただきたいのです。」
と、僕は以前の事も踏まえて、もう一度確認した。

広田美枝子さんは、僕の言葉に応えるかの様に言った

「矢部さんが新美君とどの様な関係であったか分かりませんが、
今日は新美君の誤解を晴らす為に此処に来ました
新美君、大学の中では評判が悪いのです。何故か判らないのですが、新美君を良く言う人は少ないです。
新美君は、人付き合いが下手で、他人を信用しない人ですが、でも心は優しく、本当に良い人だと私は思っています。」

「何故、広田さんは、新美さんの事を良い人と思っているのですか?」
と、直美さんは優しく穏やか口調で聞いた。

「私も、新美君に最初出会った頃は、とっ付き難いし、話辛い人だな!と思っていたのですが、私の母が病気になって、落ち込んでいる時に、新美君が相談に乗ってくれたのです。
その時、優しい人だと感じました。
難しい手術だったのですが、名医の方を紹介して頂き無事に手術は成功しました。今も母は元気です。」

「他の人で新美さんを、良い人と言っている方をご存じですか?」
と、直美さんは、優しく聞いた。

「さっきも言いましたが、新美君は人付き合いが上手く無いので、ほとんどの人は、新美君を誤解しています。
私以外なら、3〜4人位です。新美君は困っている人を見ると、ほっておけない人で、新美君を頼っていったら相談に乗ってくれる人です。根は本当に優しい人なのです」

「困っている人を見るとほっておけない人ですか?
だとすると、新美さんと、矢部さんの繋がる可能性は高くなりましたね。」
と、僕は確信を持って言った。コナンみたいに。
裕美さんを見ると、目を閉じている。もしかして、霊感を使っているのか?

ここで、伊東さんが、言った
「昨日、貴女が教えてくれた医師の病院に行って来たのだが、もう辞めたと言われたよ。それに、・・・」
と言いかけて、止めた。この間の取り方は、参考になる。
「石川先生、あの病院やめたのですか?そうですか。知らなかったです。この前電話した時、何もその事は言っていませんでした。
いつ辞めたのですか?」

「最近みたいだ。何か病院の院長とトラブルがあったみたいだ。
良くは判らないが、良い事では無さそうだ。」
と、伊東さんが言い終わると、同時に僕は

「広田さんは、その石川医師と連絡が取れるのですか?」
と、期待を込めて聞いた。

「取れますよ。電話番号を教えてもらったので。」

「今でも取れるのですか?」と更に僕は聞いた。

「電話してみますか?その人なら新美さんの事をよく知ってますよ。」

「お願いします。」と僕は、広田さんに頭を下げた。
もしかすると、矢部道子さんの事の判るかも知れない。

広田さんは、携帯電話で、石川医師に電話を掛けた。
呼び出し音が数回鳴ったが、石川は出なかった。
「出ませんね。また、今度掛けます。」
と、やるせなそうに言った。

「石川医師は、どの様な人ですか?」
と、今まで何も言わなかった裕美さんが、聞いてきた。
その、言葉の声はいつもの、能天気な声とは違い何か重みのある声だった。

前著の「三つ子の魂百まで」はKindleにて販売中です。
興味が有れば読んで頂きたいです。

尚「ある科学者の憂鬱」も宜しくお願いします。

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