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人間になった宇宙人(11)



沈黙の空間が流れた。それは時間にしてどれ位であろうか?
その沈黙を破ってゴアが云う

「雅子さん、私はもう帰える時が来ました。
私は地球に来た目的を達成した事に満足しています。
本当に雅子さんに会えてよかったです。」
と、ゴアは嬉しいそうに、満面の笑みを浮かべて言った。

「佐竹君、宇宙に帰っちゃうの?もうすぐ帰るの!」
と、悲しみの表情で云う雅子。

雅子の瞳に涙が自然と溢れてくる。

「雅子さん。貴女に私の正体を明かした以上
雅子さんの記憶にある私の事を全て
消去しなければいけないのです。」

「・・・記憶の・・消去?・・・佐竹君の事を消してしまうの?」
と、悲しみに堪えながらの弱々しい声である。

「そうです。私が宇宙人と伝えた為に、貴女の
私の想い出を全て消し去ります。

でも、猫の聖ちゃんは貴女の飼っていた猫として想い出は残ります。」
ゴアの言い方は、規則を伝える公務員みたいだ。

「そんなの嫌よ。記憶を消すなんて!絶対に嫌🤢!」
と、感情の趣くまま叫ぶ様に、雅子は言った。

「雅子さん。これは規則なのです。もちろんM52星の規則ですが。
もし、私の記憶を消さずにいたら地球人が混乱してしまいます。また記憶の消去は、私に関わった人達全員です。
一人残らず記憶は消去もしくは、違った記憶が創作されます。
雅子さんの場合は、私に関する事は全て消し去ります。」

冷静に伝えるゴアである。
「今、時はゆっくりと流れています。もう残りわずかな時間で私の姿は消えていきます。その時雅子さんは、私の記憶が全て消去されます。」

「時がゆっくり流れているって、何なの?判らないわ。」

「簡単に言えば、スローモションの映像を見る様に全ての人の時間が遅くなっているのです。詳しくは言えません。
さようなら、雅子さん。貴女にまた会えて幸せです。
私は、M52星から貴女の事を愛していますよ。
ずっと貴女の事の幸せを祈っています。
いつまでも、お元気で。朗らかに暮らして下さい。
そして、地球人を愛して結婚してください。
さようなら、雅子さん・・・・・」

「ちょっと待ってよ。佐竹君!ちょっと待って」

叫んではみたが、佐竹の姿は徐々に消えていく。
映画やテレビでよく見かける様に、消えていった。


どれ位の時間が経過したのだろうか?
喫茶店 オカに一人でいる雅子である。



「あれ〜私、何でここにいるの?
誰かといたっけ? どうしたんだろう?
何で一人でナポリタン食べてるの。それもニ皿もある?
何でかな?  叔父さん、何で私に此処にいるの?」

まるで、寝ぼけて起きて来た人の様に、独り言を言いながら
マスクーを呼ぶ雅子である。

呼ばれたマスクーは怪訝な表情を浮かべながら、
雅子の横に来た。

「雅子ちゃんは、一人で来てたよ。お腹空いたから、
ナポリタン二人前を注文していたよ。
それから、雅子ちゃん、そこで寝てたよ。
ぐっすりと寝てたから、起こすと悪いと想って、そのままにしておいた。」

「・・・^_^ 寝てたの?私。 覚えて無いわ・・・(^.^)
ナポリタンふたつも頼んだの?私。(^^)
本当に、一人だった?(^ν^)
誰かいた様に思うのだけど・・・・」

不思議がる雅子に
「本当に一人だったよ。夢でもみたんじゃ無い。
恋人の夢を(^O^)」

と、少し冷やかす様にマスターが言いながら、雅子の側を離れて行く。

納得のいかない雅子。

「誰かいた様に思うだけどな〜。夢だったのかな。」

と、時計を見ると時刻は17:00を刻んでいた。
……確か私、此処に来たのは16:00頃だった。
結構な時間、私 寝たんだ。……


家の帰り道、今の出来事を思い出そうとしている雅子である
……本当に一人でオカに行ったのだろうか?何も覚えていない。
誰かもう一人居たみたいに感じるだけど、夢だったのかな……

と、
春の夕暮れ路を元気に自転車で家路に向かう雅子である。


「ただいま。」
元気よく勝手口から声を掛けていつもの様に母に言った。
「何か手伝う事あるかな〜」
と、言いつつ
……無い方がいいんだけど……と本心では想っている。

「お腹空いて無いの?もうすぐお客さん来そうだから、
早めに食べておいてね。でも今日、遅かったわね。
何処に行っていたの?」
と、母の律子が言う。

「オカ に行って来たの。そこでナポリタンを食べたからお腹いっぱいなのよ。」

「そう、洋子ちゃんと行ったの?」
と、皿を洗いながら横目で聞いてくる。

「お母さん、私の友達で洋子以外に誰か居たっけ?
たとえば、恋人とか?」

「恋人!そんな人 雅子にいるの?(*゚▽゚*)
居たら教えてよ!」
と、皿の洗いの手を止めてびっくりしている、母。

「居ないですよ。」と小声でつぶやく雅子。

……やはり、私には恋人も付き合っている人も居ないみたいだ。
一人で喫茶店に行くなんて!惨め。しかもオカの叔父さんにも
私に恋人が居ない事も知られてしまった。
何で一人でオカに行ったのかさえも覚えていない……

自分自身を可笑しく想っている雅子である。

そして次の日の朝・・・・

https://note.com/yagami12345/n/naf405db67dab

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