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三つ子の魂百までも(番外編)18


18

「箪笥の中身は見ないでください。」
と、恥ずかしげに呟く晃子の声だ。
……見ないで!と言われると見たくなるのが人情である。
でも、箪笥の引き出しを開けると、悪霊が居るかも知れない。
ここは、引き出しを開けずに動かす事を優先しよう……
と、決意する公一であった。

この箪笥は高価なものらしく、結構な重さがある。
ゆっくりと、公一は箪笥を動かしているが、誰も手伝ってはくれない。
裕美は、見つめているだけだ。
……悪霊様、私にだけは乗り移らないでください。命令したのは、あの人です……
と、云う想いを秘め公一は箪笥を動かした。
いつの間にかリビングの灯りが灯されている。和室の蛍光灯も点いて明るい。
そして、無事に箪笥は移動された。
「公ちゃん、箪笥の後の壁を調べて!」
……また、僕に命令するの!箪笥の後ろの壁って何!
この場所に悪霊が居たんでしょ!……
と、裕美に言ってやりたい気持ちを、グッと抑える公一であった。

「此処を見るんですか?この壁ですか?暗いのですが?」

「懐中電灯ありますか?」
と裕美は晃子に聞いた。
晃子から懐中電灯🔦を受け取り、公一は壁を観察しているが、
本心はいつでも辞めたいと思っている。

「その壁に穴が開いていないかよく調べて!」
と、裕美の言葉が明るく感じる。
……壁に穴って何?この穴から悪霊が出てくるの?そんな馬鹿な!…
と、思いつつ公一は壁の穴を探した。

だが、裕美の言葉通り、壁に穴が有る。
……♪なんでだろう?なんでだろう?……
以前芸人がこの様な歌を歌っていた事を思い出しながら、
公一は、裕美に伝えてた。

「裕美さんの云う通りに、穴が開いています。
なんでこんな所に穴が有るのでしょ?
ネズミが開けたのでしょうか?」

「馬鹿ね。今時ネズミが家にいる事無いですよ。」
と、裕美さんが公一をたしなめた。
そして、大島晃子に向かって、裕美は厳かに告げた。


https://note.com/yagami12345/n/ndef316e77b35

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