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三つ子の魂百までも(19)


19

暑かった夏も終わり、やっと涼風がそよぐ季節なのに、
僕の心は悶々としていた。
僕の両親に加藤修君を会わせる事を約束はしたが、
その事で、両親にどの様な感情を抱かせるのであろうか?

また、自分の出生の秘密を知ることの不安や怖れを、
僕は、拭い去る事は出来なかった


僕が、探偵事務所に入って五ヶ月が過ぎた。
依頼者も少しずつではあるが、増えてきた。

かなり忙しい時もあり、肉体的、精神的に疲れを感じる事もあるが、仕事をやり終えた時の達成感、また依頼者が喜ぶ姿を見ると
その疲れは、心地良く自分の生きる力となっていくのを感じている。
これは、今までバイトの仕事には無かった。

だが、今回は自分の過去を調べる事であり、
加藤修君の依頼でもあるが、言葉にはならない言葉が、
僕の心の中で鳴り響いていた。

僕の実家は、アパートから50kmぐらいの距離でさほど遠くは無いのだが、実家に帰るのは久しぶりである。

昨日、実家に電話した。

母親に会わせたい人がいるので、都合のよい日を聞いたら
「来週の日曜日」という答えをもらった。
父親も一緒に居て欲しいと頼んでおいた。

その事を加藤修君に伝え、加藤修君も快く了承してくれた。

加藤修君とは、ラインや、電話で連絡は取ってはいるが、
お互いに忙しく、会う機会は少ない。
でも、加藤修君から三浦さんの話は電話で聞く事は度々ある。

と言うよりも、僕が加藤修君から聞き出す感じである。

加藤修君の三浦さんに対する想いは純粋過ぎて、少し滑稽にも思えてしまうところもあるが、これも加藤修君の人柄だろう。

僕は加藤修君が好きである。
真面目でケレン味が無く、友達になって安心して付き合える人だ。
何故、三浦さんは加藤修君を好きになってあげてくれないのだろうか?
女性の感情が僕には理解出来ない。
真面目でおとなしい男よりも、危険な男を好む女性の気持ちは、
僕には絶対に理解出来ない。
今度、三浦さんに会った時は、加藤修君の良いところアピールしようと思っている。

三浦さんは、事務所に良く来ているみたいだが、最近は僕も
外に出る機会が多く、会う事も少ない。

三浦さんは裕美さんと友達で、仲が良い。
女の人の話題がどの様なものかわからないが、僕の悪口だけは
言わないで欲しい。








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