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西澤保彦「沈黙の目撃者」

西澤保彦「沈黙の目撃者」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓

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警察も登場してとってもロジカルなミステリー小説ではあるのだが、途中から『あれあれ、なんだこれは?』。いつの間にやら、カミュ『変身』のような不条理な怪異ホラーに。読んでいて怖くなる展開で、そこからはホラー小説。それでいて、そんな摩訶不思議が事件解決の切り札になっている。そこには、親子の情が通っていたり、怨念を晴らしていたり、欲望に耽溺していたり、黄泉の世界と現世の境を彷徨う魂たちの修羅場がある。これを世間は「特殊設定ミステリー」と呼ぶ。

1️⃣沈黙の目撃者

・お世話になった警察OBの先輩・麻薙良雄が殺害された。しかし下戸だったはずの彼がロング缶ビールの空缶を大量に残している。そして交通事故死したはずの娘・古都音の悲鳴を隣家の女性が聞いた不思議。ノンセクシャル男性の塙反(はねさか)刑事とレスビアンの与那原比呂刑事が、比呂の恋人である川渡紗夜と共に矛盾と怪異の事件推理に挑む。

2️⃣ まちがえられなかった男

・深夜にカラオケ中の凡海大樹(おしのみおおき)やって来た警察の麻薙刑事と与那原刑事。大樹が昼間口説いていた旅行代理店の美女・朱馬佐織(あかまさおり)がその後で射殺されたという。街には連続殺人が4件も発生し、犯人との関係やアリバイを調べられる。やがて事件は連続殺人ではなく、連続自殺とされて過去のことに。しかし久しぶりにやって来た麻薙は、事件の意外な真相を明らかにする。

3️⃣リアル・ドール

・ある日、目が覚めると美濃部卓也はコーヒーのマグカップになっていた。目の前で扇情的な装いをしている梅木遥子。どうやら自分は死んでいるらしい。彼女の恩師である加賀教授と繰り広げられた淫らな過去。次々と繰り広げられるアラレもない話しは、卓也の記憶の底に埋もれていた過去の黒歴史を掘り起こす。全てを暴いた後の遥子は、さらなる驚天動地の事実を明かす。

4️⃣彼女の眼に触れるまで

・魔性の女・佐保梨。知力と体力の限りを尽くして、その妖しい美しさで男を誑かし、暴力や侮辱で極限まで傷つける。その害意は男たちに彼女をこの手で殺したいという衝動に駆り立てる。そんな佐保梨が報いの果てに殺された後、バー「リボーン」のマスターは、佐保梨の残存意思を来店した女性客に憑依させる。並行して起こる連続殺人事件は、佐保梨の遺体と同じ損傷を示していた。

5️⃣ハイ・テンション

・47歳にして処女だったトモ先生は、同僚の宇苗からレイプされる。その時にトモ先生は自分がレスビアンだったことを自覚する。望まない行為に激怒したトモ先生は宇苗をナイフで刺し殺して、ベランダから飛び降りて自殺する。トモ先生が愛していた女生徒・理沙は死後のトモ先生と交信できるようにする。そして理沙の勤めるバー・シズラーに来る酔客にトモ先生を憑依させて、その間に客のカードを使いまくる。しかし理沙の目的は、そんなことではなかった。

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