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三島浩司「クレインファクトリー」

三島浩司「クレインファクトリー」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
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 ある日突然ロボットたちは反乱した。働いていた工場で、人間たちに攻撃を加え始めた。クーデターは電源破壊で鎮圧された。その後で世界には「分水嶺」と呼ばれる現象が発生して、その投機性を巡って世界中を巻き込んでゆく。反乱の現場だったあゆみ地区で暮らす少年マド(若菜窓)は、里親となった国見千晶と五つ年上のお騒がせ女子サクラ(村本桜)と暮らしている。千晶の頼みで、千晶の甥である大学生・末永広海とともに廃工場跡地に千鶴を探す。ロボットの設計者であった千晶は、行方不明になった首謀ロボット「千鶴」の行方を追っていた。「千鶴」に会えば反乱の原因にたどり着けるのではないかと千晶は考えていた。
 里子として暮らすマドやサクラたちが抱えている寂しさやコンプレックス。マイナスな心の陰影が、ロボットたちの心象風景と重なってゆく。本来ならばプログラミングされた機能しかないはずのロボット。しかしリーダー格「千鶴」は心を持っていた。ロボットにとっての「心」とは何か? その謎を解き明かすことが、世界を揺るがす「分水嶺」の出現の意味を顕らかにする。そして「千鶴」との再会によって、マドは「心」とは何かを知る。里親里子の制度を乗り越えた信頼と愛情に、思わず胸を突かれる。

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