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凪良ゆう「流浪の月」、2020年本屋大賞の受賞作

凪良ゆう「流浪の月」。2020年本屋大賞の受賞作。広瀬すずと松坂桃李の主演で映画化もされている。電子書籍でも「積ん読」だったのに、ようやく着手。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B09NJMCW3R/
 ロリコン青年による少女監禁事件と誤解された文♂と更紗♀。逮捕以降の二人には、常に偏見と好奇の目が注がれる。少年刑務所で服役した文は、その後の人生も追跡される。引き離された更紗は、児童養護施設に送られて事件時の写真はずっと晒される。思わぬ形で再会した二人。インターネットが普及した社会。そこで一度貼られたレッテルは、決して剥がれない。みんな単なる好奇心で過去を掘り起こしてくる。それをどう説明しても、本人たちの気持ちは理解されない。そこには善良面をした無理解が横行するだけ。そこに更紗のバイト仲間である母親に逐電されて転がり込んだ少女・梨花。悪夢は再び甦る。
 『よくぞこんな作品が本屋大賞を取ったな』というのが、今さらながら実感。無惨と転落に塗れた語りは、読んでいて辛く苦しくなる。それでも人は生きる道を探す。自分で決断することは尊いことだ。文、更紗、梨花が寄り添っている姿は、家族愛や恋愛だけが愛の形ではないということを実感させる。尾久キリスト教会の広瀬邦彦先生は「母の愛は貴重である。しかし全ての人が、その愛を享受できているわけではない」と説いた。幸せは普遍的にあるものではない。人それぞれによって違う。好意は押しつけるものではなく、相手の気持ちに耳を傾けることから始まる。

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