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香納諒一「毒のある街 K・S・P」

香納諒一「毒のある街 K・S・P」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
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 新宿を牛耳る神竜会の構成員が射殺された。東京進出を目論む関西系暴力団・共和会傘下の鳴海興業による凶行だ。さらに神竜会幹部までもが中国マフィアの手で爆殺。背後には新宿土地利権の闇が横たわる。果て無き勢力争いと報復。凶悪犯罪組織に敢然と立ち向かう沖幹次郎らK・S・P特捜部を、やがて悲劇が襲う。刑事として、人としての葛藤に裂かれた魂の極限を描く。
 解説の細田正充氏が書いていたが、われわれ読者は「新宿鮫」の大沢在昌、「不夜城」の馳周星につづく、新宿警察小説の真の後継者を得たようだ。それも全10作のシリーズ構想で、今回は第2作。冒頭に衝撃をぶっ放した第1作に続いて、今度は冒頭のトリックに、次の展開に、更にエンディングに何度も煙に巻かれて引き摺り回される。キャラクターも個性的だ。主人公である骨太の冲幹次郎はもちろん、その女上司(それも署長秘書が上司に!)となった村井貴理子は明らかに沖に惚れている。そして悪役筆頭の朱栄志の豪胆さと狡猾さは天晴れと言いたくなる。そして刑事の成れの果てである鬼崎功一が見せた意地は、阿鼻叫喚で血みどろだった本作品の一服の清涼剤だった。醜悪さの中にこそ、一点の救いは美しく異彩を放つものである。


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