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いおり真「すまひとらしむ」

いおり真「すまひとらしむ」①(白泉社)。ヤングアニマル掲載の相撲漫画。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B08WYYWLC1/
主人公の蔵王は、僅か3人と弱小の藤の葉部屋の新弟子。白髪にして、部屋にも住まない謎の力士。「勝てばいい」と手段を選ばず、礼儀を顧みない。相手が失神するほどのカチアゲ、腕が折れるまで搾り上げる閂(かんぬき)。とはいえ、序ノ口で早速の7戦全勝優勝。しかし角界の形骸化を公然と批判するため、協会の実力者であり、一代年寄でもある大日皇事業部長から目をつけられる。スポーツであるか、神技であるか。相撲はいつも、その二つの基準を揺れ動く。「すまひとらしむ」は、その揺らぎを「蔵王」という徹底的な勝負主義者によって突く。現実の土俵に照らせば、白鵬関の横綱として問われる真価が容易に思い浮かぶ。おそらく筆者は白鵬擁護派の見解。別途インタビューでも、角界が野球賭博や八百長事件で苦しんでいた時代に、一人横綱として協会を支えていた功労を訴えていた。そして真剣勝負という観点では、野見宿禰と当麻蹴早の殺し合いを相撲の原点として挙げている。角界はどう変わってゆくべきか、どこまでを変えずに守ってゆくべきか。フィクションの世界であるからこそ、大胆な試論が楽しみである。

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