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今野敏「トランパー 横浜みなとみらい署暴対係」

今野敏「トランパー 横浜みなとみらい署暴対係」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
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 県警本部暴対課・平賀松太郎警部補が横浜港埠頭に浮かんだ「サツカン殺し」。もとは県警本部捜査第二課の永田優子課長から振られた、高級食材の取り込み詐欺捜査だった。仲間を殺られたことで神奈川県警は怒りに震える。しかし捜査過程で、平賀が詐欺犯人を匿っていたことが露見。平賀をよく知る「ハマの用心棒」の綽名がある諸橋夏男・神奈川県警みなとみらい署・刑事第一課暴力犯対策係係長。平賀の行動には、きっと何か裏があると感じる。そこを明らかにすることが、平賀の汚名を晴らすことになる。諸橋の良き相棒である城島勇一係長補佐の人脈で、事件の背後には中国の闇が潜んでいたことが見えてくる。
 読んで痺れる諸橋係長のカッコよさ。やるべきことはやる、現場の心意気。自らも危険にさらす覚悟がある。いつも嫌味な監察官ですら、本音は心配している。それでいて唯我独尊に陥らない謙虚さも備えている。縄張り意識の強い警察で、組織の領分を無視しては通らない。まさに男が惚れる男である(いや永田優子課長も充分惚れているな)。
 本作にリアリティがあるのは、舞台が神奈川県警であることだ。福富町に潜んでいる中国の謎の人物、暗躍する中国マフィア、中華街の顔役でありながら秘密に口をつぐむ大型中華料理店主。中国と深い関係にある横浜だからこそ、読んでいて本当に殺されそうな恐怖が背筋に走る。

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