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colors ―色と、ことば―

色。

言葉や文章が好きな人にとっては、なんとも厄介で愛しい対象ではないでしょうか。それを表現するならばなんとも単純なものだけれど、さまざまな角度から切り取って、あらゆるエピソードと重ねて語ることができるのだから。

今回、そんな色をテーマとして、言葉を編む皆さまと、写真を撮る皆さまを、noteでつないだコラボレーション企画を行いました。

colorsとは

企画「colors」は、KASUMIさんが旗揚げした札幌のフォトコミュニティから生まれました。私たちは主に外で撮影活動をしていましたが、新型コロナウイルスの影響で活動がままならなくなりました。なかなかオンラインでの発表が少ないコミュニティメンバーが、この自粛期間を生かしてできる活動はないかと考えて生まれたのが本企画です。

「colors」では、コミュニティのメンバーが色を基準に既存写真を選抜し、noterさんに届け、その写真から連想される小説やコラムを自由に書いていただきます。

クリエイター同士が色でつながり、それぞれの表現でその色を表す。そんな試みです。

colors#01

初めての取り組みとなる今回、生まれるのは全5作品、それぞれ「赤、紫、水色、青、緑」の色を描きます。

本noteでは、その5作品をまとめ、簡単に紹介させていただいております。まったく違った解釈、世界が広がる5色の作品を、ぜひお楽しみください。(紹介はnote公開順)

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 赤は生命力を表現する色だ。興奮する色でもあるし、熱情の色でもある。性的な感覚を刺激する色でもあれば、一方では危険や警告を表す色でもある。

[文章:岩代ゆいさん、写真:きょうかさん]

赤におんなの年月を重ねた岩代ゆいさんのエッセイ。赤をまとうエピソードから想像する映像は、モノクロームの過去に映える赤を描いていった短編映画のよう。岩代さんのきめのこまかな目を通してみている世界の「赤」を感じました。

赤の変化は、命の変化。そして、自分自身に寄り添う赤を選びながら生きていくことの美しさは、赤そのものの理解のようにも思う。私も、“サムシングレッド”の意志を以て、老いたい。そう思いました。

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空と海の質量が、あまりにも重い。このように現実は確かにそこにあって、止まらないものだ。区切りめのない青は、底も端もなく続いていた。

[文章:宿木雪樹、写真:KASUMIさん]

青は未完成な色、終わらない色。その発想からスタートした短編小説です。幼さゆえに重ねる失敗と青を重ねながら、青春のもどかしさを描けていたらさいわいです。

身の回りにある青が持つ意味や感情に向き合いました。青信号は進め、海の青はすべてを飲み込む、雨の日の青い影は不安と闇。写真の現像のときに青を抽出するようなイメージで書きました。

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家路を急いでいたはずの足は止まっていた。この雨のせいか、観客は僕一人だった。雨が太陽にキラキラと反射して眩しい。彼女のダンスには、雨を弾き飛ばすような激しさがあり、力強さがあり、静けさがあった。

[文章:ひさとみなつみさん、写真:ゆっこさん]

たった数枚の写真から、ひさとみなつみさんは美しく幻想的な国を紡ぎ、その生活と人々の関わりを鮮やかに描いてくれました。異国のひとを介して描かれる、新しい価値観や美しさとの出会いが、さわやかな水色のなかで輝くような作品です。

ひさとみさんが企画主体だった我々写真コミュニティや、北国在住であることまで慮って随所にうれしい要素を入れてくださったこと、本当に心打たれました。それをこんなに美しい作品にまとめあげてしまえることに、ぎゅっと胸が熱くなりました。

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人は、満月みたいにゃいかないんです。でも。
私は空をかき混ぜた。ぐるぐると。ぐるぐると。

[文章:奥村まほさん、写真:宿木雪樹]

「むらさき」を色としてでなく、概念としてそこはかとなく香らせるまほさんの作品。まほさんの作品は写真のよう、絵画のよう、とずっと前から思っていましたが、今回わたしの写真からこんな素敵な作品を紡いでくださったことに、感謝しかありません。

曖昧で、境界のない色。昔話のようで、未来につながっているようなあわいの経験。そんな世界に包まれます。詩でも小説でもコラムでもなく。まほさんの世界。この感覚に陥らせてくれるから、たまらない。

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同じ高さだった目線は、中学に入ってからどんどん合わなくなった。チカが話すとき、少しだけ左側に頭を傾けるのが俺のクセ。柔らかい息がかかる耳たぶは、いつも何かを我慢している。

[文章:サトウカエデさん、写真:一誠さん]

若葉の緑は、これからの成長を感じさせるハッとさせるあざやかさがある。そのあざやかさを、少年と少女の思い出と現在から描き切ったサトウカエデさんの短編小説です。夏の気配がすぐそこに感じられて、まるでその町を、祭りの日を知っているかのような感覚になる。

さらにこの小説にはたくさんの色が出てきます。今回「みどり」を主題にしていただきましたが、まるでこのcolorsの主題を考えてちりばめてくださったように、たくさんの美しい色が。全体を通じて、カエデさんの優しい視点で現像したようにトーンがそろっているのも、美しい。このシリーズの終わりに、文章のパレットを贈ってくださり、ありがとうございます。

終わりに

今回、お忙しいなかお時間をくださったnoteのクリエイターさん方に、改めて感謝の気持ちをこめてお名前を並べます。

岩代ゆいさん
ひさとみなつみさん
奥村まほさん
サトウカエデさん

そして、今回の企画の発端をくれた写真コミュニティの皆さんにも感謝を。

KASUMIさん
きょうかさん
ゆっこさん
一誠さん

もしできれば、また「色」をテーマにした文章×写真のコラボレーション企画をやりたいな、と思っています。

今回は初めてだったので試験的に、私が尊敬するnoterさんに声をかけて形にしましたが、次回可能だったら公開型に……したいな。

もし興味がある方は、ぜひそのときご一緒できれば幸いです。

今回集まった素敵な色のパレットを眺めつつ……。また会う日まで。

読んでいただき、ありがとうございました!もしコンテンツに「いい!」と感じていただいたら、ほんの少しでもサポートしていただけたらとってもとっても嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします。