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これが大人の恋愛?

松井久子著『最後のひと』を読んだ。
帯には「75歳になって、86歳のひとを好きになって、何が悪いの?」とある。
何も悪いことはないと思う。
わたし自身、老齢期の孤独を実感する年齢域に入った。
恋愛とまではいかなくても、人といい関係を築いていきたい。
孤独感をうまくやわらげて残りの人生を有意義にしたい。
そんな気持ちが以前よりも強まってきている。
なので、なんらかのヒントが得られればと期待しながら読み始めた。
 
ふたりが出会って、徐々に距離を縮めていく過程。
そこはすんなりとストーリーに入り込めた。
ふたりとも、知識も教養も社会経験も積み重ねてきた人間である。
自分のスタイルというものをもっている。
異質のふたりが、互いの生活リズムや流儀や価値観の違いをいかに超えていくのか。
互いがどう歩みより、考え方の違いをどう克服していくのか。
そこに大いに興味をもっていたのだが、残念ながらこの本にその答えはなかった。
 
ふたりはただくっついて孤独を癒やしたかっただけなのか?
そう邪推するほど、後半はどこにでもありそうな、ありきたりの恋愛が展開されていった。
わたしは完全においてけぼりを食った。

ま、勝手に答えを望み、ヒントを期待したわたしが悪いのである。
本小説は著者の実体験がベースとのこと。恋愛は人の数だけある。
ご本人らが幸せなら外部のわたしがとやかくいうことではない。
 
一般論として、年を重ねると、若いころよりも自分が自分でありたいという気持ちを強くしていく。
安易な人間関係は、自分が自分であろうとすることを妨げるものだということを経験的に学んできている。

ゆえに人間関係には慎重になる。
恋愛に対してハードルは高くなる。
仮にもういちど恋愛してみたいという気持ちはあっても、行動にはつながらないことが多いのではないだろうか。

好感をもてる人に出会ったとしても、そこでふいに性的な欲望をもったとしても、である。
感情に身を任せたり、性的欲望に身を委ねたりすれば、たしかに当面の孤独は癒やされるだろう。だが、それは当面にすぎないことも、年齢を重ねて理解している。
自分らしくありたいと願う気持ちは、一時的に棚上げされるだけで、消えたりはしないことを知っている。
 
個人的には、感情に揺さぶられやすい恋愛関係よりも、自分が自分のままでいられる友人関係を望む。
しかしながら、友人関係も新たに築くとなると難しい。長く維持していくのはさらに難しい。

だから、まずは孤独への耐性を高めていく方が現実的なのだろう。
とはいえ、いい出会い、いい関係を探し続ける姿勢も捨てたくはない。
探しても手に入らないかもしれないけれど、探すというプロセスにも気づきや学びがあるはずだから。
 

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