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どんな絵本に?(前編)【LITTLE RINGO BOOK 制作ノート#3】

今回の記事では『LITTLE RINGO BOOK』がどんな絵本になるのか、その姿や形を少しお伝えしていこうと思います。

前回、前々回の記事でも書きましたがこの絵本のきっかけはミコト屋の鉄平さんとの会話。野菜や果物を題材にした絵本をつくってみようということで、誰でも知っている八百屋であれスーパーであれ果物コーナーに欠かせないりんごをモチーフに。また鉄平さんたちがミコト屋として活動するきっかけも「ひとつのりんご」からだったということで、象徴的な存在として物語を描けるのではないかと感じているところがありました。

僕が企画書とともにつくった物語は2つ。「どちらがいいかな?」とミコト屋チームに見せにいったところ、鉄平さんから2つとも1冊のなかに入れるのはどうかという提案!たしかに、1冊に1つの物語でなくてはいけないルールなんてありません。では、2つの物語をどうやって1冊の本として纏めていくか。3月のイタリア出張に行っていたときに「これだな」というアイデアに辿り着きました。ここがこの絵本の一番の特徴とも言うべき、面白くなるところかなと思います。

yackyackbooksで出会える本について

そもそもyackyackbooksが紹介している絵本は"外見"重視の本たちです。僕自身はビジュアル系とも呼んでいます。誤解して欲しくないのは、物語自体を否定しているわけではないということ。「読み聞かせ」があるように、言葉で語る良さももちろんあります。幼き頃から親しんでいる谷川俊太郎さんが紡ぐ言葉の選び方とリズムには大人になったからこそ、その奥行きと日本語の美しさに気づくところがあります。けれどyackyackbooksでやってみたかったのは、絵本の「絵」により焦点を当てること。それによって、どのように本の世界や可能性が広がっていくのかということでした。文字は少なく絵がメイン。できれば、言葉のないワードレスな絵本がいい。だって、絵本なのだから。

いまでも絵本を読みますか?

大人になると絵本を読まなくなる。絵本は子供向け。絵本の立ち位置は、一般的にそのような形で捉えられているところがありますよね。英語でもChildren's bookと呼ばれているので、もちろんその通りだと思います。以前実店舗を営んでいた時に「小さい頃絵本読んでたな〜」という声を店頭で度々耳にしました。(あまり否定はしたくないので「いまでも読んでいいんですよ」と心の声を返していました) でも、本に絵が描かれてるだけで大人が読まなくなってしまうのはなぜだろうと。

日本でも人気の展覧会には長蛇の列やチケット完売の日も出てしまうほどアート鑑賞が盛んになっています。美術館に行って絵や彫刻などのアートを鑑賞するのに、本に描かれている絵を見ないのはなぜだろうと疑問を持っていました。赤ちゃんや幼児向けにつくられた絵本、飛び出す絵本、文字数が多い絵本、"大人向け"の絵本など多少種類はありますが、絵+言葉の組み合わせて形作られるものはもっとあっていい。音楽だって、クラシックからポップミュージックまでジャンル分けできないほど音の形は年代や場所によって様々。絵本だって音楽のように。それがyackyackbooksが立ち上げから思い続けてきたことです。「大人向け」ではなく「子供でも大人でも楽しめる絵本」と。

花を飾るように、本を楽しむ

yackyackbooksのポストカード

その中でひとつの指針となってきたのが「花を飾るように、本を楽しむ」という言葉。20代前半のとき植物に関わる仕事を経験したおかげで、日々の生活の中に花や緑があるということが当たり前になりました。今では近所のお花屋さんに自宅用にと定期便で届けてもらっています。部屋に植物があるだけで、なんだか気分がいい。新しい花や木が家にやってくるだけで、気持ちが変わる。それだけですが、それ以上とも。

花ではなく絵でもいいかもしれません。お気に入りの絵を壁や棚に飾れば、自分の好きな世界が部屋の中に広がっていきます。でも、絵ってそれなりの価格がするものですし(現代アートだと数百万や数千万の作品も)いくつもの保管するとなると、倉庫が必要になってきてしまいます。

ならば絵本ならどうか。
文庫であれ単行本であれ写真集であれ、本を沢山持っている人は結構いらっしゃるんではないでしょうか。大きさもある程度決まっている。保管もそこまで難しいものではないし、価格も高いといっても数千円ほど。そこで、絵本の表紙を表に見せながら棚に飾ってみる。気分によって毎日変えてみるのもいいかもしれません。気になったら、ページを捲ってみる。そんなことを考えていたら、本としての役割以上の絵本の存在が見えた気がしたのです。

ビジュアルを素敵にしたい。
誰かの部屋に飾れるものにしたい。

yackyackbooksでつくるのだから、ここは譲れないところです。(素敵とはなんだ、と思う方もいると思いますが、とても主観的な感覚でこれはまた別の機会にお話したいと思います。

あれ?「LITTLE RINGO BOOK」のことに全く触れることができませんでした。少し前フリが長くなってしまったようです。失礼!<後編>では、具体的に企画段階でどのように進めていったのかお話していきたいと思います。

yackyackbooks
山中タイキ

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