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原文のpercentageを「割合」と訳すとまずいのか

英語明細書で、化合物などの組成を表す際に"percentage"という言葉が使われることがありますが、これを「割合」と訳したときに、チェッカーから指摘を受けたことがあるので、今回はそれについて書いていきたいと思います。

percentageは、文字通りの意味では「百分率」となり、全体を100として、それに対する割合をパーセント(%)という単位で表したものを意味します。


英文明細書だと、

The percentage of polyethylene is 0 wt% to 20 wt% in the inner layer and 61 wt% to 100 wt% in the outer layer, based on the total weight of the polyethylene and polypropylene.

のように、組成の割合を具体的に示す場合(文章内に、「%」という単位と共に、具体的な数値が現れる場合)と、


On the other hand, when the Mw/Mn is more than 300, the percentage of a low-molecular-weight component is too high, resulting in decrease in the strength of the microporous membrane.


The Mw/Mn of the polyethylene composition can be properly controlled by the molecular weight and percentage of each component.

のように、抽象概念として用いられている場合に大別されるかと思います。


私が具体的な指摘を受けたのは、多分後者だったと思うのですが、このような文脈でpercentageを「割合」と訳すと、要は(明細書の他の箇所では、%の単位が用いられているにも拘わらず)百分率以外の方法で表す場合もあると解釈することができるから、こういう場合は「割合(%)」と訳したほうが良い、という意味での指摘だったと思います。

(このような具体的なコメントは受け取っていないので、修正された内容を見て、自分なりに言語化しただけです。もしかすると他の意図があったのかもしれません)。


このような考え方は、翻訳実務という視点で捉えると、一理あると思います。というのも、「割合」という言葉だけでは、百分率の他に比・比率や分数などで表現することもできるからです。

以下は、ChatGPTに聞いてみた質問と回答です。

「割合」には、百分率の他にどのような表記方法がありますか

プロンプト

「割合」を表現する方法には、百分率以外にもいくつかの形式があります。以下に主なものを挙げます:
分数:割合を分数で表す方法です。例えば、1/2 や 3/4 などです。分母が100であれば百分率と同じ意味になりますが、他の分母を使うことも可能です。
小数:割合を小数で表す方法です。例えば、50%は0.5、75%は0.75と表現されます。
比率:割合を「比」として表す方法で、「○対○」の形式が使われます。たとえば、3:1や4:5などです。比率は2つ以上の量の相対的な比較を示します。
倍数:ある基準と比べた増加や減少を「倍」として表す方法です。たとえば、「2倍」「0.5倍」などで、特に増減の変化を強調したいときに使われます。
千分率・万分率:特定の精度で割合を表現したいときに、千分率(‰)や万分率(‱)を使うこともあります。

回答(2024年11月7日)

特許明細書の文脈だと、小数や比・比率での表記は十分に行われ得ますし、(明細書の他の箇所には、百分率でしか表記されていないだろう、というツッコミが入る余地はありますが)その原文だけを読んだ場合に、「割合」という言葉は、実は曖昧というか複数の意味を持つ言葉になるので、明細書での割合の表記が「%」で統一されているのなら、(というよりも、原文にpercentageという言葉が使われているのなら、自ずと割合の表記は「%」になるはずです)原文のpercentageに対応する訳語としては、厳密に「百分率」、あるいは「割合(%)」を使ったほうがいいのかもしれません。


当然ながら、上記の例の前者のような、一文の中でpercentageと、具体的な数値範囲(%で表記)が用いられているのなら、訳文を読めば「割合」が「%」を意味しているのは明らかですから、単に「割合」とするだけでも特段問題はないと思うのですが、


However, in order to secure lithium ion conductivity of the porous film, the resin binder content has to be limited to a small amount, so the attention is not given to the limitation of the elongating percentage.

のような文章があった場合に、elongating percentageを「遠心率」とだけ訳すと、どのような単位で率が表されているかが分らないので、遠心率(%)」としておいたほうが、明細書の他の箇所との整合性は取れるのかもしれません。


もちろん、このような曖昧な訳語を用いたからと言って、出願権利化プロセスの中で翻訳の不備を指摘されることはないのかもしれませんが(もし、何らかの問題が発生している実例があれば勉強のため教えていただきたいです)、純粋に、"percentage"という言葉を「割合」とだけ訳すのは、原文が持っている意味を厳密には反映できていない翻訳になっているので、より厳密な表現を採用するのが、翻訳者の務めなのかな、と思います。



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