多々良 高行│長峰製茶│晩茶研究会

長峰製茶株式会社 創業明治9年 静岡県焼津市の茶商 日本茶インストラクター1期/晩茶研…

多々良 高行│長峰製茶│晩茶研究会

長峰製茶株式会社 創業明治9年 静岡県焼津市の茶商 日本茶インストラクター1期/晩茶研究会(副会長)乳酸発酵茶「菩提酸茶」が世界緑茶コンテスト2020で特別賞受賞/土瓶好きの会会員

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袋井の後発酵茶・菩提酸茶に乳酸菌は存在するのか?あなたの知らない乳酸発酵茶のミクロな世界。

菩提酸茶(ぼだいさんちゃ)とは 菩提酸茶は晩茶研究会独自の製法で製造している後発酵茶です。 阿波晩茶と碁石茶の中間的な酸味があり、柑橘系の香りが特徴です。 圃場が静岡県袋井市豊沢(菩提地区)にあり、酸味が強いことから菩提酸茶と名付けました。現在は晩茶研究会のメンバー4名で東京農業大学・内野昌孝教授の指導を受けながら研究・製造を行っています。 菩提酸茶に乳酸菌はいるのか?菩提酸茶を飲むと多くの方が「すっぱい」と感じます。私も初めての試作品を飲んだ時、果汁のような酸っぱさに大変

    • セミナー「ノンアルコールドリンクの飲食業への進展と茶を考える」受講メモ

      とき:2024年2月24日 ところ:ふじのくに茶の都ミュージアム 講師:安藤裕(あんどうゆう) 株式会社アルト・アルコ  著書 セミナーまとめ・ノンアルコールドリンクの定義 アルコール度数が1.0%未満であり、お酒のような飲用シーンや満足感を提供することを目的としたドリンク。 ・ノンアルコールドリンクの4類型 (1)発酵製法(KOMBUCHA、ジンジャービアなど) (2)脱アルコール製法(ノンアルコールビール) (3)インフュージョン製法(オルタナティブALC、sh

      • 「番茶と晩茶」定義を考察する(4/5) 晩茶の性質

        晩茶の性質晩茶は自産自消の茶 前回の考察で晩茶を「自産自消の茶」と定義した。晩茶は茶を自ら作り、自ら飲むという営みで、人と茶は長らくそうした関係にあった。 晩茶の構成要素 晩茶を構成するものは「人」「茶」「土地」である。晩茶は人の生命活動とともにあり、人から人へ伝えられてきた。その土地固有のテロワールがあり、歴史や産物との関連が深い。畦畔茶やヤマ茶などの身近な茶が利用され、四季を通じて作られている。 人と土地は「食文化」を形成し、人と茶による小規模な「製茶」は多様な

        • 「番茶と晩茶」定義を考察する(3/5) 晩茶の定義

          番茶と晩茶 歴史から晩茶研究会の定義まで 現代までの歴史 「番茶」という言葉が文献で確認されるのは十五世紀になってからで、それまでは「晩茶」という言葉が夏過ぎの晩くに摘んだ茶という意味でつかわれた。 江戸時代になると、茶は庶民の間で一般的な飲料として定着し始めた。この時代には、春の新芽を使用する上等な茶に対して、夏過ぎの遅摘みで品質の劣る茶が「番茶」と呼ばれるようになった。農村では、屋敷の周りや畦畔に茶の木を植えたり、またヤマ茶を利用して自家用茶が作られた。こうして作られ

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        • 番茶と晩茶
          4本

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          日本茶AWARD2023後発酵茶部門考察

          日本茶AWARD2023後発酵茶部門の結果 2023年に新設された第一回後発酵茶部門の審査結果です。 意外にも、すべて静岡県で製造された茶が選ばれました。上位2点は河村傳兵衛氏が関わる茶であったのも特筆すべき点です。 発酵とは?酵素か微生物か プラチナ賞と他2点の違いは「酵素作用」か「微生物発酵」かです。酵素作用は発酵(微生物発酵)ではありません。 例えば、りんごの断面が時間経過とともに褐色に変わるのは「酵素による酸化」です。一方で、りんごに含まれる糖が酵母によって

          日本茶AWARD2023後発酵茶部門考察

          茶の発酵:酵素的酸化か、微生物発酵か

          「茶の発酵」と聞くと、一般に紅茶や烏龍茶を連想する方が多いでしょう。しかし、これらの茶は酵素による酸化反応で、微生物が関与する本当の発酵とは異なります。 例えば、りんごの断面が時間経過とともに褐色に変わるのは「酵素による酸化」です。一方、りんごに含まれる糖が酵母によって分解され、アルコールと二酸化炭素が生成されるのが「発酵」です。褐変したりんごとシードルは全く異なるものです。 茶業界には以下のような考え方もあります。 微生物の生命活動は、非常に複雑で連続的なプロセスと相

          茶の発酵:酵素的酸化か、微生物発酵か

          晩茶と塩

          茶と塩味のせんべいはよく合うが、茶に塩を入れて飲む人は少ないだろう。しかし江戸時代に遡れば、茶を煎じる際に塩を入れる事は珍しくなかった。塩は煎じ茶の味をまろやかにするからだ。中川到之の研究によれば0.05%の食塩水で茶を抽出すれば、渋みが1割ほど減じる事がわかっている。 ◎O-CHA学1号 第2章 お茶と塩の科学的関係について/中川到之 江戸後期の俳人 成田蒼虬が茶と塩にまつわる句を残している。 『江戸のお茶 ー俳諧 茶の歳時記』より抜粋 茶に塩のたらぬ朝也はつしぐれ 

          「番茶と晩茶」定義を考察する(2/5) 番茶の歴史

          前回は日本茶業中央会の番茶の定義をスタート地点に、煎茶製法の番茶と伝統製法の番茶について考察した。 今回は様々な研究者の番茶の定義を年代順に並べ、全体を俯瞰する。 江戸時代以前中村羊一郎氏によれば、文献上で「番茶」という語が最初に確認されるのは十五世紀になってからで、遅く摘んだと云う意味の「晩茶」の方が登場は古いという。 江戸時代(1604年)日葡辞書 1604年にイエズス会の宣教師によって刊行された『日葡辞書』には”Bancha”の記載がある。内容から「番茶」であろ

          「番茶と晩茶」定義を考察する(2/5) 番茶の歴史

          晩茶を飲むなら土瓶

          もしあなたが土瓶を持っていなければ、民藝の土瓶をぜひ一つ買ってみてほしい。 晩茶に限らず、ほうじ茶、番茶にも、民藝土瓶をつかってみてほしい。 とても豊かな気持ちになれるはずだ。 土瓶は大容量でお茶が冷めにくい晩茶は長時間湯に浸っていても渋くなりにくい。 だから晩茶を飲むなら、土瓶に茶葉を入れ、熱湯をたっぷり注ぎ、飲みたい分だけ土瓶から飲めば良い。少なくなってきたら、湯を継ぎ足す。薄くなれば茶葉を足す。卓上サーバーのように使える。 民藝の土瓶は存在感が有り、どっしりと

          後発酵茶・菩提酸茶の歩み(2)

          後発酵茶づくりに再挑戦するきっかけとなった上勝晩茶 香りの良さに驚いたM.Tさんの上勝晩茶 M.Tさんの上勝晩茶には使い込まれた木桶の香りや、酸味を伴った甘い香りがある。長い年月が醸す要素と、伝統製法が噛み合っていると感じた。夏の発酵晩茶づくりに失敗し気落ちした頃、世界お茶まつりでこのお茶に出会って勇気づけられた。 夏の発酵晩茶 製造工程表阿波晩茶の製造工程を元に作成した工程表である。主要メンバーに製造経験者は一人もおらず、確証がないままの製造であった。 製造データ摘

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          晩茶と民藝(2)鹿児島・ハンズ茶

          民藝と晩茶の関わりとしてもう一つ、鹿児島の「ハンズ茶」がある。 ”ハンズ”は半胴と書き、主に水瓶として使われた。苗代川の日常雑器、黒もんである。 ヒビが入って使えなくなったハンズ瓶を釜炒り茶の釜代わりにする。 かまどにハンズを置いて火にかけ、茶葉を入れ先が三叉になった木の枝でかき混ぜる。ハンズ茶は陶板焼きの要領でつくられる釜炒り茶だ。 今春、鹿児島のある茶商のところで偶然にも思月園の高宇氏に会った。私は氏の著作「僕は日本茶のソムリエ(筑摩書房)」でハン

          晩茶と民藝(2)鹿児島・ハンズ茶

          晩茶と民藝(1)島根・ぼてぼて茶

          晩茶(伝統製法で作られる番茶)と民藝は地理的にも成り立ち的にも近くにありながら、改めてお互いを認識することは稀だ。 ぼてぼて茶について調べていたら、昭和7年の工藝18号に行き当たった。この号の特集は布志名焼で、ぼてぼて茶碗が接点になっている。 この茶碗は中村羊一郎氏の「番茶と庶民喫茶史」にはゴシ茶碗として紹介されているが、これは呉須茶碗が訛ったものだ。ぼてぼて茶碗は緑釉、飴釉、黄釉が多く呉須ではないのだが、これは初期に使われた伊万里の呉須茶碗の名がそのまま流用されているか

          晩茶と民藝(1)島根・ぼてぼて茶

          「番茶と晩茶」定義を考察する(1/5) 現代の番茶の定義

          番茶とは 喉の乾きを癒す日常の飲み物として長く愛され続けてきた「番茶」。 番茶の「番」には常用の、もしくは粗末なといった意味があり、特定の茶種を指さず、普段遣いの茶という意味で使われてきた歴史がある。住んでいる地域、また家庭によっても「番茶」と呼ぶ茶が異なるのはその為だ。 だから番茶とは何か、という問いに答えるのは簡単なようで意外に難しい。私が所属している晩茶研究会は「番茶」ではなく「晩茶」を使用している。番茶の定義を考察しながら、「晩茶」と「番茶」の違いについても解説

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          後発酵茶・菩提酸茶の歩み(1)

          菩提酸茶(ぼだいさんちゃ)とは 菩提酸茶は晩茶研究会独自の製法で製造している後発酵茶である。圃場が静岡県袋井市豊沢(菩提地区)にあり、酸味が強いことから菩提酸茶と名付けた。 日本の後発酵茶は4種類あると言われてきた。 ・碁石茶 ・阿波晩茶 ・石鎚黒茶 ・バタバタ茶(富山県旭町蛭谷地区の黒茶) 菩提酸茶は阿波晩茶と碁石茶の中間的な酸味があり、柑橘系の香りが特徴だ。現在は晩茶研究会のメンバー4名で東京農業大学・内野昌孝教授の指導を受けながら研究・製造を行ってる。 菩提酸茶

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          日本各地の晩茶(地方番茶)

          日本各地で作られている晩茶(地方番茶)をまとめました。 ◎阿波晩茶上勝町 阿波晩茶-クラウドファンディング(徳島県勝浦郡上勝町) 上勝町 上勝晩茶祭り(徳島県勝浦郡上勝町) 上勝町 上勝晩茶倶楽部(徳島県勝浦郡上勝町) 那賀町 いろどり晩茶生産組合(徳島県那賀町那賀郡) 那賀川町 なかがわ野菊の里(徳島県阿南市那賀川町) 阿波晩茶 テトチトパ ◎美作番茶海田町 天日干し晩茶(広島県安芸郡海田町) ◎日干晩茶吉野大淀 日干晩茶(奈良県吉野郡大淀町) 唐川町 唐

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