イービル・インサイド(PS4版)(原題:Evil Inside)をクリアしたのと、ホラーゲームに於ける演出のケレン味について
PS4版のイービル・インサイド(原題 Evil Inside)を購入、トロコンしました。プレイ時間は1時間くらい。
今ならセールで定価1,279円が895円とお安い。私もそれがきっかけで買った次第。
さてこのゲームですが、ジャンルはホラーADV。
ポイント&クリックを中心した構成で、アクション要素はまったくなく、QTEの類もなし。
もっと忌憚なく言ってしまえば、ジャンルはP.T.クローンだ(果たしてその様なジャンルが本当に存在するかどうかは別にして)
★以下ネタバレ含みます★
まずはストーリーを超ざっくりめにご紹介しておく。
主人公はティーンエイジャー。最近になって母が井戸で亡くなり、その母に対する殺人容疑者として父が逮捕されてしまいます。
母の死の原因を探るべく、友人から怪しげなウィジャボードを借り、早速母の声を聴こうとしたころ何故かウィジャボードが爆発して四散する。
あげく気絶して目が覚めたら自宅に閉じ込められていた、という素敵なシチュエーションから始まります。
そこからは延々と2階建ての狭い屋敷の閉鎖空間で、何故か屋敷内に散らばっているウィジャボードの欠片を集めながら、延々とループすることでゲームが進行していく感じ。
閉鎖空間、ループ、ということで、まさにゲーム進行はP.T.そのもの。
## ゲーム性について
色々と残念な出来の本作だが、一番の問題はキャラクターの移動速度。こいつ匍匐してるんでしょうか、という速度でしか移動しない。出来ない。尚、ダッシュボタン押しても、あんまり変わらない。
移動可能なマップが非常に狭いために、移動速度が速いとゲームが早く終わってしまうこともあり、ただのプレイ時間のバランス取りだとは思うが、これが最悪にプレイフィールを悪くしている。
大半のギミックが壁に何か変なものが埋まってるか、ジャンプスケアしかコンテンツが無いので、その合間を遅い移動時間で過ごすのは、ちょっとした苦痛。イベントの数に対して、ストレスの方が勝ってしまう。
リアルで例えると、おばけの数が少ないお化け屋敷に入ってしまった。そんな感じ。その事に気がついた時点で、コントローラー置こうかと一瞬迷った。
## ストーリーについて
記憶を失った主人公が、心霊によって贖罪を強いられる、というのはホラーの古典的定番。
でもこの設定が生きてくるためには、ネタバレを最後まで徹底的に隠すか、道中で匂わせるのであれば、主人公の過去の心の動きが表現されていないと、ただのご都合主義のサイコ野郎を操作している気持ちにしか思えてこない。
まあ、本作では後者だったのだけれど。
そもそも、独り言ばかりでストーリーテリングとしては、情報が圧倒的に少なく(そこもP.T.リスペクトといえばそうなのかもしれないが……)、最後のオチに至っても、母が死に至った理由は明確にはならない。
ループものであれば、ジャンルはサイコホラーに片足を突っ込んだものになるかと思うのだが、肝心の主人公の病理を表現している演出がないため、
終始「なんだかよくわからないけど、たぶん俺が悪いんだろうなー」という状態だった。それってどうなん?
## 演出について
ホラー演出の殆どは理不尽に突然現れるジャンプスケアの類に頼っていて、心臓にはあまりよろしくない。
たしかに突然、大音量が出て、おばけ(母親?)に驚かされるけれど、べつにこれは恐怖ではないよなあ、という説明不足な感じの演出が続く。
まあたしかに、ループものであるが故に、
「前回は安全に通過した廊下に、今回のループではジャンプスケアが仕込まれている」
という心理的油断を突いた演出自体は効果的。
だけど、それがストーリーに関わるものをポイントクリックした、とかが発生トリガーであればまだ腑に落ちるのだが、何も無い廊下で突然大音響と画面明滅で驚かされても、それは恐怖でもなんでもなくて、ただの理不尽な衝撃。
本当に何もない廊下で驚かされたり(尤も、このゲームのプレイ時間の殆どは廊下の移動時間なのだが)、何のアイテムを探すわけでもないのに、フラグ立ての為だけに開けたワードローブの中から母さんが出てきて驚かされたりしても、そこにはストーリー的な意図はまったく感じられない。残念。
そして、このジャンプスケアに頼った恐怖演出なのだが、今年出たゲームにしてはかなーり低品質。
テクスチャーの見た目はPS1世代かという粗々しさだし、効果音も唐突な爆音と無機質ノイズを効かせてるだけという有様。もしかして母さんはデジタル霊なの?
加えて、暗いシーンが怖いのは、明るいシーンがあるからこそ。
ずっと薄暗い廊下をループさせられていて、そこから更に真っ暗にされても、特に感慨は生まれない。
しかもジャンプスケア演出が繰り返された後に暗くされても、それでキャラクターが死なないのはバレているので、アイテムを探すのに視認性が悪い、というだけであり、ただただ不便でストレスが貯まる要素ーに成り下がっていたのは、併記しておきたい。
## それはインスパイアなのかリスペクトなのか
自己の内面だけを表現したかのような閉じた場所として、屋敷を作品の舞台に据えた意義こそ感じられるものの、例えば殺人現場となった、とってつけたような井戸などは、ストーリーに対してなんらその必然性も感じられないまま、まるで貞子の演出そのままに舞台装置として消費される。
その他、洞窟などのロケーションに関しても、雰囲気以外に意図のない舞台装置化しており、登場させる意義が感じられない。
## まとめ
元々、PTの方はティザーという側面があったので、あの作りでも許された感はあるのだが、単品でこのアイデアだけで押し通す、しかも独自性の盛り込みも無しに…
しかもホラーの他作品からそのまま拝借したかの様な演出も幾つか散見できるわけで。
ホントにただのファンボーイの仕事と感じるのだ。間取りすら大差ないのは、ほんとインスパイアと言い訳した上でも、どうなんだろうか。
B級やC級作品があってこそのホラーという爛れたジャンルではあるので、いいぞ、もっとやれ。こういうのでいいんだ。などと、私的には思うが、許せない人も、たぶん多そう。
次はもう少し、楽しいタイトルをプレイしたいかな。
※ちなみにこのタイトルはクロスバイなので、PS4版を買えばPS5版もついてくる。トロフィーはPS4とPS5で別。つまり2回回せば、プラチナは2つ貰えるぞ。一周小一時間で計2時間。
PSNフレンドも緩やかに募集中なので、気楽に登録依頼を飛ばして下さい。普通にゲームのプレイ実績があるプレイヤーさんであれば、歓迎してます。
俺はねぇ、饅頭が怖いんだ!俺は本当はねぇ、情けねぇ人間なんだ。みなが好きな饅頭が恐くて、見ただけで心の臓が震えだすんだよ──── ごめんごめん、いま饅頭が喉につっけぇて苦しいんだ。本当は、俺は「一盃のサポート」が怖えぇんだ。