父さんのこども

想像力を働かす。万物の物語。ほら、ここにもあそこにも今日はなんて沢山の物語が溢れている…

父さんのこども

想像力を働かす。万物の物語。ほら、ここにもあそこにも今日はなんて沢山の物語が溢れているんだ。平和だなぁ。

最近の記事

連続小説「金=愛 〜大人〜」一話

早く大人になりたいと思っていた。 僕は今年成人式を迎えた。成人式を迎えたら大人になるのだろうか。左手にビール右手に煙草、これは大人の象徴なのだろうか。昔、お父さんが吸っていたタバコをバレないように盗んでベランダで吸ったがその時はまだ高校生の頃で、大人はよくこんなまずいもの好むなとか思ったりした。 そんな僕も今では煙草がないと口元が寂しくて仕方がない。 こんなもんは時代じゃない、臭い、お金がかかるよ、とか色々言われる。そんなこと知ってる。第一1番お金がないのは買ってる本人なのだ

    • 僕は全部知ってる

      彼女の事を問題にされたら絶対に負けない自信はある。 猫より犬派だってことも、高校の部活が辛くて影で泣いていたことも、お母さんよりお父さんの方が好きってことも、落ちてるゴミを拾ってポケットにしまうことも、倒れてる自転車を小さな体と細い腕で立たせてあげることも、生きていることが辛くて死にたいと思ってることも。 僕は全部知ってる。彼女の事なら全部知ってる。難しい経済の仕組みとか物理の化学式とかは全然わからないけれど、彼女の事なら全部知ってる。 彼女には幸せになってほしい。神様が

      • 鬼面仏神

        最近は漢検の勉強をしている。今の今まで勉強してこなった僕に勉強不足君が 「この漢字はなんて読むかわかるかい?すぐケータイで調べるんだね。おっと、この漢字は昨日も出てきたよね?もう忘れちゃったのかい?」 と、嫌味ったらしく言ってくる。 僕は何も言い返せない。だが、必ず勉強不足君を見返してやると決心した。 四字熟語を見ているとふと気になる熟語があった。 【鬼面仏神】 ※怖そうに見えて、実は非常に優しく穏やかであること、またそのような人。 僕が働いていたバイト先の社員さんがま

        • 空飛ぶ自販機

          夢の世界は自由だ。何もかもが理にかなっていない。 世界の理の外にある。僕はそう思う。 久しぶりの夢だった。 疲れていたのかもしれない。最近はバイトばかりで一日家でゆっくりなんて日がなかった。 アメリカだと思う。僕はホテルの一室で見知らぬ男と話していた。 「すまない、チケットは一つしか取れなかった。」 私と彼は一緒にこの地に降り、これから帰ろうとしていた。何をしていたのかわからないが僕たちには航空券を一枚しか取ることしかできない僅かなお金しか持ち合わせていなかったのだろう。

        連続小説「金=愛 〜大人〜」一話

          行けない所

          きしきしと音が鳴る場所だったのは覚えてる。それと上履きのことをズッパと言ってたことも。初めての彼女ができたのもその場所だった。僕の初めてがたくさん詰まった場所だったし、僕の初めてをたくさん置いてきた場所だ。 「それでは皆さん各自自己紹介をしましょう。」 先生が言った。 ここで自分という存在を皆にアピールする。放課後の下校では皆が僕の自己紹介の話をする。 「あの子なんだっけ、面白い自己紹介してた子!」 「面白かったよね!私友達になりたいもん!」 と、こんな感じになるといいなとお

          命は思いだ。

          犬を飼いたいと思った。 お店の中に入ると命の音がドクンドクンと僕の頭に響いてくる。ああ、命って買えるものなのか。そう思った。僕は犬のことはさっぱりなので、お店に行ってみてそこで僕の目に留まった犬を買おうと思った。だがいざお店に足を踏み入れると、やつらは潤った目で僕を見てくる。やめろ、そんな目で僕を見るな。お前にはもっといい主人ができるよ、僕よりお金をもってて、ドッグフードも最高級のもので、夜景が綺麗な高層マンションの最上階の主人がな。なにが嬉しいのかわからないがその犬のシッポ

          命は思いだ。