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台湾のインテリア業界の特徴と市場環境

台湾には約3,000〜5,000人のインテリア設計師がいると言われており、資格の有無よりも実務経験が重視されることが多いです。建築師の資格と比較して、インテリア設計師の資格はそれほど重要視されていません。
多くの会社でも採用基準としてインテリア関連の資格の有無を用いないていないと思われます。

台湾では、新築・中古住宅の購入者が追加の内装工事を行うことが一般的であり、日本とは異なり、大きな住宅内装市場が存在しています。新築物件は、簡易内装の「標配屋」として販売されることが多く、購入者は引き渡し後に住宅価格の10%程度の費用をかけて好みの内装に変更します。

標配屋

また、台北市内の一部の超高級物件では、「毛胚屋」と呼ばれるスケルトン状態で販売され、購入者は引き渡し後に自分好みの内装にできるようになっています。このような市場環境のため、多くのインテリア設計師は住宅内装に関する仕事に携わっています。

ちなみに上記の「標配屋」は、引き渡し時に以下の内装工事が完了していることが一般的です。

  1. 各部屋の間仕切り壁の設置と仕上げ

    • 床:60角または80角のタイル貼り

    • 壁:塗装仕上げ

    • 天井:一般的には貼り材が使用されず、RCスラブに直接塗装が多い

  2. 水回り空間(浴室、トイレなど)の床・壁・天井の設置と仕上げ、および設備機器(シャワーブース、便器、洗面台等)の設置

    • 床・壁:タイルまたは大理石貼り

    • 天井:塗装仕上げ

  3. キッチンの床・壁・天井の設置と仕上げ、およびキッチン機器の設置

    • 床・壁:タイル貼りなどの仕上げ

    • 天井:塗装仕上げ

上記に「一般的には」と記載していますが、台湾の住宅市場では、「預售屋」と呼ばれる先行販売の物件で、「客変」というサービスが提供されることがあります。これにより、お客様は購入前に上記で説明した一般的な標配屋の仕様をカスタマイズすることができます。

「客変」サービスでは、購入者の要望に応じて内装や設備を変更し、より個別化された住宅を提供することが可能となります。これにより、購入者は自分のライフスタイルや好みに合った住宅を手に入れることができます。

今回は簡単な紹介に留めますが、次回以降の機会に「客変」サービスについてより詳しく説明していきたいと思います。

上記のように台湾のインテリア市場は、住宅の内装工事が盛んであるため、多くの設計師が住宅のインテリア設計や施工に携わっています。また、知人や親戚からの仕事紹介が多く、独立して自分の会社を設立する設計師も少なくありません。

ただし、設計業務だけでは事業を成り立たせるのが難しいため、多くの設計師は施工管理も含めた一気通貫のサービスを提供しています。一般的なインテリア設計の設計料は、2000~5000NT$/坪程度であり、有名事務所では1万NT$以上になることもあります。例えば、20坪の室内面積の場合、設計料だけでは少ない場合では4万元程度しか収入が得られません。設計には2ヶ月程度、現場の設計監理業務を含めるとトータルで半年ほどかかるため、関わる期間に対して利益が少ないとされています。

そのため、一般的な設計師は施工も一緒に請け負い、そこから得られる追加利益で事業を成り立たせています。この規模の案件では、工事価格の2~3割程度の利益が見込まれるため、設計業務だけに比べて利益額は大きくなります。坪単価6万NT$の施工費だとしても工事総額120万NT$となり25~35万元程度の追加利益を獲得できます。

今回はこの辺りで終わりにして、次回は引き続き台湾の先行販売案件における「客変」について、もう少し詳しくお話ししたいと思います。

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