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PPP的関心2024【「合意形成」の手法と姿勢について】

今年の初めにも合意形成について書きましたが、実はそれ以前(2022.1)にも書いています。

「PPP的手法による公的サービス提供等の取り組みを行う上で(従来型の公共事業を行う際にも本来的にはそうだと思いますが…)重要なステップの一つ、住民の合意形成についてです。地域住民は広く捉えれば「計画の当事者」であると考えられます。その観点から、新たな施策の実施にあたり地域住民の課題感を理解し受け止めながら事業計画に対する理解を促すことは不可欠なステップだと考えます。
そうした不可欠なステップを新しい形式(=インターネット上で市民と行政が対話して社会課題の解決につなげるためのツールを利用)で進めるを紹介する記事を読んで考えたことを書きました。」

以前の記事より

以前のnoteで題材にした記事は加古川市の例を用いた「合意形成ツール」に関するものでした。合意形成実現の手順・基準・手段のうち手段の一例としてインターネットツールを用いた取り組み例です。

PPP的な手法による行政サービスの提供では、それぞれ考え方や優先順位の異なる立場(行政と民間とか)や異なる状況や属性(年齢、家族構成、収入の違いとか)を持った人々が、地域社会におけるお互いの主張の最大公約数を探るように「公共の福祉」を実現するための「連携」が前提です。
その意味で、ツールはもちろんですがその手順や基準のあり方を含めどう合意形成を実現するかはPPP的取り組みに関わる上で重要な関心テーマです。

先日PPPスクールで行われた研究成果発表会から「合意形成」についての報告

この発表の一つに「東洋大学式デリバレイティブポリング実践結果」と言う主題の報告がありました。
この実践報告のもとになる考え方はPPPスクール・専攻長の根本先生が受けた取材記事に詳しく述べられています(*詳しくは記事リンクをご参照ください)。

ツールやアプリを組み合わせて、本質的な「合意形成」の実現を目指す

米国の合意形成手法を参考にした新たな取り組み
米国流に言えば「Deliberative polling(以下、デリバレイティブ・ポリング、討論型世論調査)」と呼ばれる手法です。市民の合意形成を促す手法の一つで、「質問⇒説明・討議⇒再質問」によって認識の変容を促す
■例えば迷惑施設配置の賛否について、説明をする前にまず一度、参加者の賛否を投票する機会を設けるのです。その後にファシリテーターから説明を行い、2回目の投票を行うと賛成の比率が高まります。これは、参加者自身の中に明確な賛否がある状態で説明を聞くと、考えのポイントがしっかりして頭に入りやすくなる効果があるため
■匿名的な投票を行うことで「ポジショニング効果」と「プライオリティ効果」を発揮します。ポジショニング効果とは、集団の中での(客観的な)自分の立ち位置を確認できること、プライオリティ効果とは、複数のテーマを投げかけたときに、参加者自身の中で優先順位が存在していると気付けるようになること

記事より

合意形成には、提供される情報の「中身」が重要

この話題において、実は先ほど記した方法論の話よりも、こちらの「姿勢」「前提」の話の方が重要です。特に、以下の引用にあるように市民の意見の中で良いものがあれば取り入れようという姿勢です。

日本では行政側から市民に提示される情報は限られた選択肢で、それ以外の選択肢がなく、「どれを選んでも行政の手の内」ということになってしまいがち
■米国では「情報提供そのものが善である」という考え方に基づいています。さらに、「公務員が正しいわけではない」という前提があります。行政自体がそう考えているので、市民の意見の中で良いものがあれば取り入れようという姿勢

記事より

さらに、合意形成の場面に提供される情報には「balanced and objective information(バランスの取れた客観的な情報)」が重要であることも指摘されています。

・「balanced information」とは不都合な情報も開示、両面の情報をバランスよく提供していくこと
・「objective information」とは客観的な情報、「できるだけ数字で示す」こと

大事なことはツールではなく姿勢と考え方

もしかすると先に示したDeliberative polling(デリバレイティブ・ポリング、討論型世論調査)は「(行政が自分の手の内にある方策等に)誘導」をすることではないか、という疑問を持つ方もいるかもしれませんがそうではありません。
重要なことは二つ目に書いたように「どちらかに偏らない」で「客観的」な情報が場に提供されることが前提となっている点です。その情報をもとにして、参加者各位に個人の立場や属性に偏った意見・考えを脱して公共の福祉を実現させ、他人の利益と自分の利益の最大公約数を相互に見出してゆくことを「促す手法」だからです。
姿勢と情報提供の前提があって、その上で合理的な手法を用いて行政と市民のどちらにも視点・施策・意見の変化を促すことになるはずです。
そこを忘れてはいけないと考えます。


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