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PPP的関心【歩ける街がもたらす。健康と活性化】

昨年の秋に「ウォーカビリティ(歩きやすさ)が地域経済を活性化する」という記事を書きました。
街に暮らす人々、街を使う人々が歩きやすい道路空間の規模や配置の最適化は、沿道での商業を活性化させ、ひいてはエリアの価値は上がるという良い連鎖が起こることが考えられる、という内容でした。

今回は道路がもたらす別の価値、「健康」について触れている記事、そして記事を読んで考えたことを記録しておきたいと思います。

暮らしているだけで認知症になりにくい街

記事の冒頭、”  歩道の多い地域に居住する高齢者は認知症リスクが半減  ”というタイトルがまず目を引きました。

歩道が多い都市部に住む高齢者は、認知症の発生が少ないことがわかった。76,053名の高齢者を対象に2010年から約3年間追跡し、歩道面積が少ない地域に住む人と、多い地域に住む人を比べたところ認知症発症リスクは45%低かった。この結果は都市部に住む人、または車を使わない人でのみ見られた。歩道が多く、ウォーカブル(歩きやすい)な地域に暮らしているだけで、認知症になりにくい可能性が示された(Tani Y, et al., 2021)。

新・公民連携最前線線 PPPまちづくり データから見る「健康になれる街」2022.3.3記事より

健康増進のためのインフラといえば?

健康増進のためのインフラ、といって私が思い浮かべるのは都市公園です。

かなり古い(第三次計画 / 平成16年度~平成20年度)情報ですが、”  公園・緑化技術五箇年計画は、真に豊かでゆとりある国民生活を実現するために、公園・緑化分野で取り組むべき技術研究開発項目を明らかにし、官・民・学が連携、協力して計画的、重点的に研究開発に取り組むため、国土交通省が策定している計画  "の一つ(暮らし・安全分野NO8. 健康維持・増進・回復に資する公園施設の整備・運営技術)にも「健康、健康維持」の文字が明記されています。

公園は「目的地」であり、そこに移動・到着・使われることで初めて健康の増進に貢献する(もちろんそれ自体はこれからも必要なことだと思います)わけですが、今回の記事の話題は、公園に到達するまでの「道路」も「歩くスペース」として「人間のために使う」ことで健康増進に貢献するという話です。

人間のための街路

この本が題材にしている「人間のための街路」には、そもそも路面に歩行者が歩きやす配慮がなされ、人の歩行が優先され、公園にもある樹木や草花、周辺の空間(建物や設備など)と調和・一体化された風景がありカフェなど染み出したアメニティが備わることが「そこを歩く人間」にとって必要だとされています。
しかし現代の街路では経済的な効率性向上、都市部での渋滞など外部不経済解消のために人間よりもクルマを優先した結果、そこを歩こうとする人間にとっては「歩きにくい場所」「歩きたくない場所」になっている…、そんな現実に目を向けさせられます。

公園のような道路は可能か

道路の健康増進への貢献の可能性を一層高めることを考えるとき、単純だがつまりは街路を「公園」に見立てれば良いのではという連想をしてしまう。
ウォーカブルな街=「歩きたくなる」街であることは、歩ける場所=街路にいること自体が心地よく、街路をそぞろ歩きしたくなるような「環境」が備わることが必要だと思います。言い換えれば「公園のような街路」を与えることができれば良いのではないか、と思うのです。

身体活動を促すガイドライン

記事『暮らしているだけで認知症になりにくい街』のなかで、”  日本の都市における身体活動の促進・阻害要因を踏まえ、身体活動を促すまちづくりを普及するためのデザインガイド  "というものが紹介されています。

ガイドラインには「身体活動を促すまちづくりの考え方を、34のキーワードを通じて図や写真とともに紹介」されています。キーワードには
■歩⾏者志向のデザイン (Design)
■⼟地利⽤等の多様性 (Diversity)
■目的地へのアクセス性 (Destination accessibility)
■安全性等の魅力創出 (Desirability)
■プレイス・メイキング (Placemaking)
■ソフト面での促進活動 (Promotion)
が並びます。

工学的なアプローチに、上記の「公園のような道路」という考え方が加わることで、土地利用の多様性・魅力創出・プレイスメイキングといったあたりの達成はさらに加速するのではないかと考えます。

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