見出し画像

PPP的関心【規制緩和+民間共同による都市交通の公的サービス水準アップ】

以前の別の記事(【「公的サービス」提供の役割分担を考える】)でPPPの定義(東洋大学PPP研究センターによる)について書いたことがあります。

記事の中で「狭義の定義」について、「公共サービス提供や地域経済の再生(公共的な効果を持つ民間ビジネス支援)など、何らかの政策目的を持つ事業が実施されるにあたり、官(地方自治体, 国, 公的機関等)と 民(民間企業, NPO,市民等)が目的決定、施設建設・所有、事業運営、資金調達など何らかの役割を分担して行う際に1.リスクとリターンの設計、2.契約によるガバナンスの2つの原則が用いられていること。」としていました。
今回は、前橋市で進んでいる、公的サービス(都市交通)の水準を引き上げる動き=PPP的取り組みについて書いてみました。

バス会社の共同経営による公的サービス水準の向上

#日経COMEMO   #NIKKEI

前橋駅と県庁前の区間には6社が11路線を走らせている。各路線ごとにダイヤを最適化しているが全体でみると非効率で不便な部分が多い。例えば、同時刻に4本が発車することがある一方、30分以上の間隔が空く時間帯もある。

という部分最適ながら全体では非効率なサービス提供が行われてきた前橋市の都市交通運行が、独占禁止法特例法に基づいた認可を受けたことで、

22年4月からは平日と土日祝日の午前10時から午後4時の間、JRの運行ダイヤに合わせて基本を15分間隔のダイヤとする。1時間に4路線以上ある場合もできる限り5分単位で運行する。

と、ユーザーにとっては大幅な「サービス向上」がもたらされる計画です。

「規制緩和」がもたらした「共同経営」。

PPPによる取組は、例えば、官民が連携して何らかの事業を起こす場合だけを指すのではなく、官による規制緩和とそれを活かした民間の取組の進展が「公共サービス提供や地域経済の再生(公共的な効果を持つ民間ビジネス支援)」という目的を持った場合も含みます(「規制・誘導型」PPP)。

スクリーンショット 2021-09-30 7.20.33

今回の前橋市での公的サービス(都市交通)水準向上の計画はこの類型に当てはまると考えます。前橋市のバス事業に限らず、利用者の減少や乗務員の確保が難しくなる状況が顕在化している地域は少なくないと思います。その中で「バス会社間でダイヤ調整することは従来、独占禁止法により禁止されていた。」という経営環境は、民間企業各社ごとの経営努力だけで対処するのは難しかったことは想像に難くありません。その突破口がこの規制緩和だったということです。もっとも、今回の取り組みに至るまでにはそれなりに時間が必要だったことも記されていて、

前橋商工会議所は政府へ規制緩和を要望。19年に都内の首相官邸で開かれた未来投資会議へ同会議所の曽我孝之会頭が出席し、当時の安倍晋三首相らに対して政策の見直しを直訴。20年11月に特別法が施行された。

こうした取り組みへの対処の機動力の向上はさらに期待したいところです。

継続は力なり。行政の継続的な「環境整備」の成果の一つ

機動力に期待する一方で、実は「継続は力なり」という側面も無視できません。リンクの記事は2019年の記事ですが、前橋市も民間企業と組んで、バス路線再編のあり方の調査をはじめ、次世代移動サービス「MaaS(マース)」構築やマースと連携したシェア自転車の実現に向けた取り組みが継続して行われてきたということです。こうした動きと連動しているかは不明ですが、同じ頃、2019年8月に前橋市まちづくり公社主催の市民講座で「公民連携まちづくり。地域を変える公民連携」という演題で話をしたことがあります。

私の講演が何かに影響したかは全く不明ですが(多分何の影響もなかったと思いますw)、前橋市と民間企業の連携による環境整備するぞという方針の明示、そして環境整備策の実行が地道に継続されていたことが、この記事の題材となったバス会社共同経営といったPPP的な取り組みによる公的サービス水準の向上という成果の「素地にあった」からこそ、だと思います

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?