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PPP的関心2023#12【永平寺門前振興策の記事を読んで。こころざし資金と適切な課題設定】

あっという間に3月も最終週です。2023年も1/4が過ぎようとしています。日本の暦では「新年度」という節目でもあり、きちんとターゲットを見定めて取り組んでいる事柄を深掘り、発掘を進めていかないと、そういう節目でもあります。
*写真は2022年春の大学校舎の前の「桜」。年度変わりの時季には欠かせない花ですね。

「永平寺門前の店舗整備計画遅れ 企業版ふるさと納税募る」という記事

#日経COMEMO #NIKKEI

記事によると北陸新幹線延伸による来街者・観光客の増加を見込んだ観光地のリニュアル投資が県内各地で進む中、永平寺門前界隈でも以前からすでに進んでいた景観整備・宿泊施設開業に加え伝統工芸品販売や体験工房を備えた店舗整備を進めるという計画がある。しかし資材高騰などの要因も含めて整備に必要な資金調達が遅れ、今後必要な資金の一部(基本的に永平寺などが出資する会社が調達する前提)を企業版ふるさと納税で集めることになったが現在まで調達額は見込みより低い状況になっている…という話題です。

企業版ふるさと納税の不調の背景を考えてみる

「12月までの目標金額約1億9000万円に対し、3月23日時点で集まったのは1961万円」ということだそうで、想定期間を過ぎてなお1/10強という状況は厳しいものだと言わざるを得ないと誰の目にも映ります。
なぜこうなったのか。こうした状況を生み出す背景について考えてみたいと思います(記事から知りうる範囲の情報しかないので、関係者の皆さんの中には違和感のある方もいるかもしれませんが、あくまで記事を読んだ感想的なコメントですのでその辺りはご容赦くださいね)。
十分には知らない…という前提で、私なりにまず思ったことはそもそもこの事業には第三者の志(こころざし)資金を集める「ふるさと納税」あるいは一般的なクラウドファンディングを用いるような資金調達を企てる上で必要かつ重要な「(事業への)共感」が醸成されていないかもなぁ…そんな印象を持ちました。

以前の記事でも書いた「課題設定」の重要性

PPP的取り組みにおける「課題設定」の重要性
筆者は日本版CCFの潜在的な課題として、以下のような指摘をしています。
■プロジェクト(課題解決の事業)のわかりやすさ、理解のされやすさが求められる
■地域課題と社会課題の区分け。なぜプロジェクトはそこでその時期にやるのか
■さらに言えば、なぜ自治体がやるのか。このあたりを説明する(説明できる)ことが必要
これらの指摘は、言い換えると、地域の持続可能性を高めるために「経営」視点を取り入れるべく、(解決すべき)課題の設定と(事業活動の)目的を決定する過程において、他人(行政)任せにしないことと過程のオープン化(透明性)を重視する考え方が重要だということです。これは、まちづくりビジネスを学生さん達と話をする中での私自身の課題認識とも通じるところです。
また、本の中でも著されていますが、そもそもクラウドファンディング手法はマーケティング上の販路開拓、知名度向上、そもそも事業に対する共感=ファンを創り出すという効果をどう活かすかという点で、行政による日本版CCFの活用では自治体内のマインドセットを脱却できるか、という点も地域課題解決のための(PPP的取組による)事業組成にソーシャルファイナンス手法を導入する上では重要なことだと考えました。

以前のPPP的関心・記事より抜粋


クラウドファンディングもそうだがそのような資金の集め方を称して「共感投資」と言われる場合もあります。それは資金を出資(提供)する対象事業に対して「応援したい・頑張ってほしい・元気になってほしい」あるいは「この事業を手助けすることは自分を嬉しい気持ちにさせてくれる」ような投資であることを意味しています。
「第三者の志(こころざし)資金を集める」手法をとった際、「これからの姿」が見えない段階で共感を呼ぶのは簡単ではなさそうです。一方で、仮にその姿がおぼろげであっても、共感投資を使って事業を始めようとする中心人物(組織)の志(こころざし)や理念のようなものがくっきりと見えていれば、事業に対する共感と共感の反映である資金は集まるというのが『地域経営のための「新」ファイナンス -「ふるさと納税」と「クラウドファンディング」のインパクト-』で示されていた視点だと思います。

永平寺(事業会社)の課題と永平寺門前の地域課題は同じか?

記事にある通り、永平寺が地域観光資源・集客資源として重要なものであることは間違いないでしょう。強みをより強化して成果を目論む考え方はありうることです。
ただ、すでに整備済みの宿泊事業も永平寺の事業会社、今回の店舗計画も主な事業主体も同じであれば、それを志(こころざし)資金に頼る選択はいささか我田引水的な印象を持たれるのは仕方ないかもな、そんな気もします。「「従来から門前町にある店舗とは性質が異なり、競合しない。むしろロールモデルになる店舗にしたい」と意気込む。(記事引用)」と言ったとしてもそれは事業を問いかける側の理屈と受け止められかねないし、もしかすると周辺の民間事業者にとっては競合”懸念”が払拭しきれないのではないか…そんな余計な想像を掻き立てられてしまいます。

以下はあくまでも個人的な「印象」論です。事実は知りません。
こころざし資金を集める動機や契機が新幹線延伸の機会を逃すな…といった印象が強く残る「時間がない」みたいな伝え方も難ありだと思いますし、確かに永平寺への訪問者の再興、隆盛が地域経済への波及効果の源であることは間違い無いのでしょうが、永平寺が人を呼び戻すから周辺の民間事業者はまずは黙って協力を…という気持ちが滲み出すようなのもよろしくない話だと思います。

こころざし資金を使って地域を元気にするというからには、その地域全体の問題、背景にある課題を抽出してそれを網羅するような「こころざしの集め方」をした方が良かったのではないかな…そんなことを考えさせられる話題でした。


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