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【小説】私という存在 #8 高校編 ③飲み会

章大は高校時代、下宿をしていた。

片道1時間、今ならぶっちゃけ通えたともいえるその距離を下宿させてもらってた。

無駄にお金があった田上家では、破格の安さである下宿代4万円にプラスして、なぜか祖母の瑞貴は私に総額10万円もの大金を渡し、それで生活せよと言ってきた。

章大の金融リテラシーは完全崩壊しており、あるものを使い切る癖はここで生まれた。

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当然、高校生が使える金額ではない。

そこで章大は

「人に好かれることの快感」

を味わうことになる。これが、このあと20年間、章大を苦しめる劇薬となる。


人を疑うことを知らず、基本的になんでも信じてしまう章大は、上川という友人という名の知り合いと三年間をともにする。

あとから聞いたが、上川とその友人の間には

章大は金持ちで基本的に無理を言えば出してくれる

といううわさが広まっていた。お人よしだ。

食事会には必ず呼ばれて、参加した後、必ず会計は章大へ

章大は、断らなかった。金で存在感を買っていた。快感だった。必要とされている感じがした。存在感があった気がした。

いじめられて、社会から省かれて・・・
みんなと住む世界が違う気持ちがしていた。
そんな僕を必要としてくれている人がいる。それだけでうれしかった。

今、37歳になった章大に、高校時代の友人は一人もいない。

ある時、焼肉してるから来ないかと誘いを受けた。もちろんすぐに向かった章大は、ある驚愕の事実を知る。

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お店についたとき。15人座れる大部屋に、2人だけ。。。テーブルには食い荒らした皿。その時いた上川は笑いながら

「好きな物食べて!あとお会計たのむわ」

そして去って言った。それでも不快にならなかったことは、今でも疑問だ。それだけ自己肯定感が低く、人のやさしさや愛に飢えていたのかもしれない。

64,800円

今でもまだ章大は、あの時の店員さんの顔まで覚えている。あざけわらうような、憐れむような目を・・・

人に必要とされたことだけが、本当に幸せだった。

それが、のちに章大を借金地獄へと追いやることになる。。

続く


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