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KSFって結局なんなん?


本稿の概要

「KSFとは何か?」

これを一言で説明できるでしょうか?
本稿では、これを図とともに解説したいと思います。

これを読んでほしい/読むべき人

駆け出しのビジネスマン、コンサルに転職したばかりの方、MBA初学者などで、「KSF」の概念はなんとなくわかるが、まだ自信のない方。

また、KSFをビジネスの現場で使ってみたが、いまいち上手く議論ができなかった方。

このような方を対象に想定しています。

投稿の背景

ビジネス用語として使われることの多い「KSF=Key Success Factor」。
私はMBAの講義中でこの概念を初めて知りましたが、最初の率直な感想は、「なんだこれ??」です。

講義では、明らかに重要なファクターとしてKSFが説明されます。
でも、人によって抽象度が全然違うし、当たり前すぎる(例えば低コスト体制を構築する)ことをKSFという人もいます。

このモヤモヤを言語化し、解決したい。その一心でPCの前に座りました。

KSFの何が気持ち悪いのか

ここから、KSFの気持ち悪いポイントを4つあげます。
(結論だけ知りたい人は、読み飛ばしていただいて構いません)

気持ち悪さ①:そもそも定義が不明確

KSFを和訳すると、「成功のためのカギとなる要因」です。

しかし、「成功」は人によって定義が異なるものであり、一意には決まりません。「売上を拡大すること」という人もいれば、「売上は増えなくてもいいから持続的に経営できること」という人もいます。

KSFについて議論するときは、定義の確認が必ず必要になります。

気持ち悪さ②:当たり前すぎることをKSFとしがち

「KSFとは何か?」と問われたとき、しばしば「低コスト体制」「付加価値の高い商品開発」という意見が上がります。

でも、正直これは分析しなくてもわかることです。わざわざKSFとして定義するまでもありません。(。。と思っていました。)

仮にこのような意見を出すとすれば、少なくとも「なぜ他の要因ではなくその要因なのか?」を説明する必要はあるでしょう。

気持ち悪さ③:具体的すぎる打ち手をKSFとしがち

②と逆ですが、「KSFとは何か?」と問われたとき、「人員カット」など具体の施策が出ることもあります。

これはこれで、気持ち悪い。なぜならば、「人員カット」の(おそらくの)目的はコスト効率化であり、そのための打ち手は他にも考えられるからです。つまり、打ち手を決め打ちしてしまっているのが気持ち悪いのです。

気持ち悪さ④:競争優位にならないことをKSFとしがち

「KSFとは何か?」と問われたとき、「AIを実装する」という意見が上がることもあります。

これはいい打ち手に見えなくもないですが、単発の打ち手としてAI実装が自社にできるなら、他社もおそらくできるでしょう。これでは、他社に勝てる要因にはなりません。


KSFをどう定義すべきか

定義

それでは本題です。上のような問題も踏まえ、どのように定義するのが生産的でしょうか。

結論から言うと、私の考えるKSFの定義は、以下の通りです。

良質な体験/安い価格につながる打ち手のうち、抽象度・模倣困難性が高いもの

図解

以下、図とともに、定義について説明します。


①"Success"の定義について

色々な意見があるところですが、私は「特定の業界においてトップシェアを持続できること」としました。

②”Success”につながる要素について

トップシェアを持続するためには、当然顧客に選ばれる必要があります。そのための要素として、「良質なモノ/体験を提供」と、「安い価格で提供」で分類しました。

ここは、機械的な分解であり、整理だけの問題ですね。

③打ち手について

②を実現するための打ち手は複数あると考えるのが自然でしょう。そしてさらに、その打ち手は階層構造になっていると考えました。

この考え方は、楠木建氏の「ストーリーとしての競争戦略」を参考にしていますので、ご興味のある方はぜひ読んでみてください。

Alue ホームページより抜粋

この中で、「良質なモノ/体験を提供」「安い価格で提供」に大きくつながりそうな打ち手(=つまり、矢印が太いもの)が、KSFに近いと考えるべきでしょう。

④抽象度および模倣困難性について

先述した通り、模倣困難性が高いもの、かつ、抽象度・具体度がちょうどよいもので定義をしなければ、そもそもKSFを考える必要がありません。

ゆえに、図の打ち手群の中では、必然的に「真ん中あたり上部」の領域にあるものを、KSFと呼ぶべきでしょう。

⑤結局、どこがKSFなのか

KSFの定義としては、図の赤枠部分としています。

ここで、KSFの定義として、抽象度の高い一番右の打ち手の層も対象としていることに違和感を覚える人もいるかもしれません。先ほど、当たり前すぎることをKSFに定義しても意味がない、と書きましたから。

ですが、数ある要因の中で、どの指標が「良質なモノ/体験」「価格の低さ」につながるかを明らかにすれば、限られたリソースを、そこに集中投入すべきというアクションにつながります。したがって、これには意味があると考えました。

とはいえ、他の意見もあると思います。結局、ここはケースバイケースで考えるべきでしょう。


最後に

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。いかがだったでしょうか。KSFに関するモヤモヤはすっきりされたでしょうか。

最後に「ケースバイケース」などと書いてしまったので、そこに違和感を感じる方もいるかもしれません。

しかし実は、全体を通じて、1つの観点で書いています。それは「KSFをどのように定義すれば、議論が生産的に進むのか」という点です。

判断に迷ったときは、この軸を元にKSFを定義するとよいでしょう。結局は、使い勝手のよいように定義してしまえばよいのです。






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